執務室は、オフィスの大部分を占める空間です。執務室を整えることは、従業員の作業効率やモチベーション、さらには会社のブランディングなどにも関わります。本記事では、執務室の役割やデザインのポイントを詳しく解説していきます。
オフィスの執務室とは
執務室とは、従業員が業務を行うためにメインで使用するワークスペースを指します。「執務スペース」や「事務室」などとも呼ばれる場合があり、一般的にオフィスの50%以上を占める広い空間です。業務を円滑に行えるように必要なデスクやチェアをはじめ、さまざまなオフィス機器などが揃えられています。
変化するオフィスの執務室に求められる役割
今までの執務室は「ただ従業員が1箇所に集まって業務ができる場所」でしたが、近年ではリモートワークなどの多様な働き方に適応できる空間作りが必要です。そのためには、以下のようなあらゆる要素を総合的に考えて、執務室のデザインを検討しなければなりません。
<執務室のデザインで検討すべき要素>
- 従業員の作業効率
- 企業のブランディング
- 従業員のモチベーション
- コミュニケーションの取りやすさ
例えば、フリーアドレス制やリフレッシュスペースを導入する企業が増えています。それは、コミュニケーション重視でオフィスをリデザインしているのが理由の一つです。デスクワークなら自宅やその他スペースでできるケースが増えたため、出社しなければできないことを考え、時代に合った価値ある執務室にしていきましょう。
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オフィスの執務室デザインで意識するポイント6つ
続いて、執務室をデザインする際に意識するポイントを6つ解説していきます。
ポイント1.適切なデスクサイズを選ぶ
まずは、適切なデスクサイズを選びましょう。作業内容や使用する機器などによって必要なスペースは異なります。デスクのサイズは以下を参考にしてみてください。
<デスクの横幅と特徴>
デスクの横幅 | イメージ | 特徴 |
~1000mm | ![]() |
・比較コンパクトなサイズ
・ノートパソコンのみでの作業に向いており、B5程度の書類なら一緒に並べられる |
1200mm~ | ![]() |
・事務机として一般的なサイズで、片袖机タイプが多い
・ノートパソコンの横にA4サイズの書類などを並べられる ・デスクトップ型のパソコンやサブディスプレイの使用に向いている |
1400mm~ | ![]() |
・一般的な事務机よりも大きめのサイズ
・ノートパソコンの他に、サブディスプレイを2つ並べられる |
1600mm~ | ![]() |
・両側に袖机がついているなど、横幅に余裕があり広々使えるサイズ
・サブディスプレイを2つ並べて作業ができ、書類スペースも十分ある ・役職者向けのデスクに採用されやすい |
ポイント2.デスクのレイアウトを決める
デスクのサイズが決まったら、レイアウトを決めてください。デスクは執務室スペースの大半を占めるため、そのレイアウトは使いやすさに関わり、空間の印象も大きく左右します。代表的なデスクのレイアウトは以下の8通り。
<主なデスクのレイアウト>
レイアウトの種類 | レイアウトのイメージ | 特徴 |
対向型 | ![]() |
・デスクを向かい合わせで配置する
・対面しているためコミュニケーションがとりやすい |
同向型 | ![]() |
・全てのデスクを同じ方向に配置する
・向かいの人と視線が合わないため作業に集中しやすい |
背面型 | ![]() |
・背中を合わせて着席するようにデスクを配置する
・2列の机と1本の通路でレイアウトができるため、スペース効率が良い |
クラスター型 | ![]() |
・デスクの向きが異なる2列を並べて配置する
・パーテーションを使用して視線を遮るためパーソナルスペースが確保しやすい |
ブーメラン型 | ![]() |
・ブーメラン型のデスクを向かい合わせに配置する
・机を広く使え、コミュニケーションが取りやすい |
ユニバーサル型 | ![]() |
・大きなデスクに椅子を配置する
・フリーアドレスで活用しやすい |
クロス型
(卍型) |
![]() |
・4人1組でデスクが交差するように配置する
・視線が合わず、互いのパソコン画面も見えない |
ブース型 | ![]() |
・パーテーションで机1つ1つを囲う
・囲われているため集中しやすい |
ポイント3.動線の確保する
使いやすい執務室にするためには、通行しやすい通路幅の確保も欠かせません。通路幅を算出するためには以下の数値を参考にしてみましょう。
<通路幅を算出するための参考数値>
- 1人が通行するために必要な幅:600mm
- すれ違うために必要な幅:1200mm
- 着座に必要な幅:400mm
これらから、スムーズに通行できる通路幅は「着座に必要な幅+すれ違うために必要な幅」で「1600mm」ほど必要なのが分かります。なお、動線は座席までに曲がる回数を少なくするなど、シンプルな経路を意識するとストレスなく移動できる執務室に仕上がるでしょう。
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ポイント4.家具の機能性を考慮する
執務室に配置する家具の機能性も考慮すべきポイントです。家具の使い勝手は従業員の作業効率に関わります。
ポイント5.配色にこだわる
従業員が働きたいと思える執務室にするために、色を意識した空間作りも大切です。色に統一感があったり、差し色を上手く使えていたりする空間をおしゃれと感じる人は多いでしょう。職場がおしゃれなことは従業員のモチベーションにつながり、会社への帰属意識にもつながります。
なお、差し色をコーポレートカラーにすると企業のブランドイメージを印象付けられるため、ブランド戦略としても取り入れていただきたいポイントです。
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ポイント6.求められているスペースを作る
働き方の変化に伴って、執務室に求められている機能が変わってきています。働き方に合わせて以下のようなスペースの導入を検討しましょう。
<執務室に求められているスペースの例>
- Web会議用ブース
- ラウンジスペース
- リフレッシュスペース
- ミーティングスペース
- 集中ブース/集中スペース
近年では、出社ならではの価値として「従業員同士がコミュニケーションを取りやすいこと」を重視する傾向にあります。ただ、コミュニケーションが活発になることが、周りの人のストレスになっては本末転倒です。目的に応じてスペースを区切るなど、対策を検討するようにしてください。
オフィスの執務室に求められるスペースの施工事例
最後に、執務室に求められているスペースの中から、パーテーションなどで仕切ったほうが良いスペースの施工事例を3つ抜粋して紹介していきます。
リフレッシュスペース
まずはリフレッシュスペースの事例です。リフレッシュスペースではオンオフを切り替えられるように、業務を行うスペースとは区切られていたほうが良いでしょう。
<リフレッシュスペースの施工事例>
こちらの事例では3段ブロックの施工型パーテーションを用い、中央に木目調のパネルを使用しています。また気兼ねなく休めるように、上段にはダイノックシートを貼り、室外からの視線を気になりにくくしています。このように3段ブロックの施工型パーテーションを活用すれば、パネルの組み合わせ次第で利便性の向上や個性の演出が期待できます。
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集中スペース
集中スペースも仕切るべき空間の一つです。音や視線などを遮り、集中できる環境を整えましょう。
<集中スペースの施工事例>
集中スペースは音と視線を遮れるように不透明なパーテーションが採用されやすいですが、こちらの事例ではあえて室内が見えるガラスパーテーションを用いています。これは、利用状況を分かりやすくするためと、ホーソン効果を期待した工夫です。
ホーソン効果とは
他者から注目が集まったときに、期待に応えようとして行動が変化した結果、よい結果につながる現象のこと。
とはいえ、利用中は壁向きに座るため、室外にいる人と視線が合うことはありません。「見られているかもしれない」という適度な緊張感が集中を促し、良い成果を期待している集中スペースの事例です。集中スペースなため、室内では私語厳禁などの一定ルールは必要でしょう。
ミーティングスペース
ミーティングスペースはオフィスに必須です。活発な議論をしている横で個人の作業に集中するのは難しいでしょう。会議の質を上げるためにも、気兼ねなく話せるスペースは欠かせません。
<ミーティングスペースの施工事例>
こちらはガラスパーテーションで区切った会議室の事例です。ガラスを使用することで、明るくオープンな会議室に仕上げました。個室に区切らないなら、壁際にテーブルを置くなどして、簡易的なミーティングスペースを作るのも良いでしょう。その場合、話し声が他の従業員の邪魔にならないようにローパーテーションを置いたり、デスクとの距離を少し離したりなどの工夫をしましょう。
≫ オフィスにミーティングスペースを設置するメリットや事例を紹介
オフィスに行きたいと思わせる執務室にしよう!
オフィスの執務室における役割やデザインのポイントを解説しました。執務室は多くの従業員が長時間過ごす場所なため、従業員の使いやすさを優先してデザインすると良いでしょう。執務室のデザインやレイアウトを変更する前に、従業員へアンケートを実施するのもおすすめです。