働き方に柔軟性が求められる中で、昨今において注目されているのが「アジャイルオフィス」です。この記事では、アジャイルオフィスの特徴やメリット・デメリット、具体的な導入の手順などを詳しく解説します。失敗しないオフィス作りを目指すために、ぜひ参考にしてみてください。
アジャイルオフィスの概要
アジャイルオフィスは、昨今注目されているワークスタイルの一種です。しかし、具体的にどういった業務形態なのか漠然としている方も多いのではないでしょうか。ここでは、概要や注目される背景、類似するワークスタイルとの比較について解説します。
アジャイルオフィスとは
アジャイルオフィスは、従業員の人数や業務内容の変化などに応じて、レイアウトを柔軟に変えられるオフィス形態です。執務スペースだけでなく、休憩スペースやミーティングスペースなども状況に応じて変更ができます。
アジャイルオフィスが注目される背景
近年、新型コロナウイルスの影響や働き方改革などにより、働き方の見直しが行われている中で多様化が求められていることから、アジャイルオフィスが注目されています。従来型のオフィスでは対応が難しい課題に対し、柔軟に環境を変えられる点が評価されており、採用する企業が増えています。
類似ワークスタイルとの比較
| 働く場所 | 移動する対象 | |
| アジャイルオフィス | オフィス内 | 什器 |
| フリーアドレス | オフィス内 | 従業員 |
| ABW | 場所を問わない | 従業員 |
フリーアドレスは、従業員自身がオフィス内で自由に働く場所を決めることができます。一方で、アジャイルオフィスは、什器を移動させることにより柔軟にレイアウトを変更します。また、ABWはオフィス内にとどまらず、自由に場所・時間を選んで働くスタイルです。
アジャイルオフィスのメリット
アジャイルオフィスには、業務効率の向上やコミュニケーションの活性化など多くの利点があります。以下では、代表的なメリットを詳しく解説します。
【メリット1】働き方に合ったレイアウトに柔軟に対応
アジャイルオフィスでは、業務やチーム体制に応じて空間を柔軟に作り変えることができます。固定席では難しかったレイアウト調整も簡単に行うことができ、状況に応じて働きやすい環境を構築することができます。
【メリット2】レイアウト変更によるリフォームが不要
従来型のオフィスにおいてレイアウト変更を行う場合は、その都度工事が必要でしたが、アジャイルオフィスでは什器移動のみで簡単にレイアウトを変更できます。
≫ 什器とは？オフィスに必要な什器の種類やメーカーについて紹介
そのため、業務内容の変更や、組織の変化、従業員の増減にも即座に対応可能で、時間・費用を削減しながら柔軟なオフィス運用が実現できます。
【メリット3】部署を超えたコミュニケーションの活性化
アジャイルオフィスは、1つの空間の中で什器レイアウトのみでオフィス空間を構築します。壁や固定席がなくなるため、部署を超えて顔を合わせる機会が増加し、コミュニケーションの活性化に繋がります。そのため、社内に横のつながりをつくりたい企業に最適なレイアウト設計です。
アジャイルオフィスのデメリット
メリットの多いアジャイルオフィスですが、導入にはいくつかのデメリットも存在します。事前に把握しておくことで、導入後の失敗を未然に防ぐことができるでしょう。
【デメリット1】導入に費用がかかる
アジャイルオフィスの導入には、什器購入だけでなく配線工事や既存の間仕切り解体など初期費用が発生します。特に什器の総入れ替えはコストがかかるため、費用を抑える場合は段階的に導入したり、既存設備を活かすなどの工夫が必要となります。
≫ 什器とは？オフィスに必要な什器の種類やメーカーについて紹介
【デメリット2】オフィススペースが必要
柔軟なレイアウト変更を可能にするには、一定の床面積が必要です。狭いオフィスでは可動什器の設置や移動が困難になり、かえって業務効率を下げてしまいます。導入前にスペースの余裕を確認し、必要なゾーニングを確保することが重要です。
≫ オフィスレイアウトにおけるゾーニングとは？考え方や事例を紹介
【デメリット3】計画が難しい
アジャイルオフィスは自由度が高いといったメリットがある反面、将来を見越した計画が必要です。年単位での事業計画を基に、状況に応じたレイアウトが作れるような空間設計が不可欠となります。導入前に様々なパターンのゾーニング計画を行い、最適なレイアウトを検討しましょう。
アジャイルオフィスの注意点
アジャイルオフィスを導入する際、トラブルや失敗などを避けるための注意点を把握しておくことが大切です。以下では、失敗しないための6つのポイントを解説します。
【注意点1】目的を明確化
導入の意図が不明確だと、オフィスの運用や什器選定に一貫性がなくなる他、そもそもアジャイルオフィスの導入自体が企業に適していない可能性もあります。たとえば「コミュニケーションの促進」「従業員数の増減に対応」「新事業の推進」など、導入理由を明確化することで、全体設計や運用方針の指針になるでしょう。
【注意点2】適切なレイアウト設計
アジャイルオフィスは、用途ごとのゾーニングを明確化し、適切なレイアウト設計を行うことが重要です。あいまいな設計では利用者が混乱し、業務効率の悪化につながる原因にもなります。利用目的ごとに動線や配置を決め、直感的に使いやすい空間を構築しましょう。
【注意点3】什器の選定
アジャイルオフィスでは可動性や柔軟性のある什器選定が必須です。たとえばキャスター付きのデスクや折りたたみ式の椅子など、頻繁なレイアウト変更に適した什器を選ぶことが重要です。デザインだけでなく、運用シーンや使い勝手などを考慮して選定しましょう。
【注意点4】既存設備を考慮
既存の空調や照明、LAN配線など既存設備を考慮した設計も必要です。今後想定されるレイアウトパターンと既存の設備配置を照らし合わせ、必要に応じて移設や増設なども検討する必要があるでしょう。
【注意点5】担当者の選定
プロジェクトを統括する担当者を選定することで、スムーズな導入・運用を行うことが可能です。導入前から予算管理や業者選定、社内調整などを一括で管理する責任者を選定しておきましょう。
【注意点6】ルールの明確化
アジャイルオフィスは、座席利用や片付け、共有スペースの使い方など、ルールが不明確だと混乱やトラブルの原因になります。事前に規約を作り、全員が迷わず使える仕組みを整えることが必要です。
アジャイルオフィスを導入する手順
アジャイルオフィスを成功させるには、正しい導入手順に沿って計画を進める必要があります。オフィスの内装工事で豊富な実績のある当社の知見をもとに、最適な導入手順を解説します。
【手順1】目的の確認
まず、導入目的を明確にすることが重要です。「生産性の向上」や「従業員の増減に応じたスムーズな対応」など、企業の課題や方針に応じて導入意図を定めましょう。導入前に目的を明確化しておくことで、全体設計やレイアウト方針など一貫性を保つことができます。
【手順2】レイアウト変更パターンを想定
新規採用やチーム再編など、将来的な組織の変化を見越して複数のレイアウトパターンを想定することが重要です。この段階で具体的なレイアウトまで決める必要はありませんが、想定されるレイアウト変更のパターンを洗い出しておきましょう。
【手順3】必要スペースの洗い出し
執務スペース・打合せスペース・休憩スペースなど必要なスペースをすべて洗い出しましょう。具体的な面積や利用人数なども明確化しておくことで、最適なレイアウトを検討することができます。レイアウト設計の土台となる工程ですので、従業員にヒアリングするなどして現実に則した検討を行いましょう。
【手順4】ゾーニング
ゾーニングでは、利用目的ごとにエリアを明確に区分けを行います。執務スペース打合せスペースだけでなく通路なども明確化しておくことで、スムーズなレイアウトを設計することが可能です。手順2で検討したレイアウト変更パターンごとに、最適なゾーニングを検討しましょう。
≫ オフィスレイアウトにおけるゾーニングとは？考え方や事例を紹介
【手順5】具体的なレイアウト検討
ゾーニングに基づいて、什器の配置や通路幅、導線などを具体的に設計します。動線が重なったり狭すぎると混雑やストレスの原因になるため、余裕のあるレイアウトを行うことが重要です。現状のオフィスなどを参考に、デスク間の距離や壁との離隔距離など細かな設計を行いましょう。
≫ オフィスレイアウトで必須の導線計画とは？動線で業務効率化を！
【手順6】設備関係の整理
空調・照明・LANなど既存設備の配置を明記し、検討したレイアウトと重ね合わせましょう。場合によってはレイアウトの変更や、設備の移設・増設工事が必要となります。快適性と機能性を両立するために、設備面からも空間を見直しましょう。
【手順7】内装のリフォーム検討
アジャイルオフィスは、什器の移動のみでレイアウト変更を行うワークスタイルですが、場合によっては導入段階でリフォーム工事が必要となります。間仕切りを解体して広いスペースを確保したり、壁や床、天井材などのデザインを変更したりと、内装の見直しが必要な場合は什器搬入前に完了させておく必要があります。
【手順8】適切な什器の選定
アジャイルオフィスで最も重要となるのが什器です。移動や収納がしやすい製品を選ぶことで、レイアウト変更が容易になります。業務内容や人数に応じて、機能性・汎用性の高い什器を選定しましょう。
働き方に合わせてアジャイルオフィスを採用しましょう
アジャイルオフィスは、組織の変化に素早く対応することができるため、今後想定される組織の変化に合った最適なオフィスを作ることができます。什器の入れ替えだけでなく、導入時に工事を行う必要もあるため、専門家の意見なども取り入れながら進めると良いでしょう。当社は、オフィスの内装工事を専門に行っているため、レイアウト検討などでお困りの方はぜひお気軽にお問い合わせください。
