オフィスで快適に仕事をするには、防音対策が必要です。外部の音が聞こえると集中できず、また音や声がもれると問題になる可能性があります。オフィスのパーテーションの中で、防音性能が高いものはどれかご存知ですか。今回は、おすすめ3選と性能や費用の比較、導入する際の注意点も解説します。
防音対策できるパーテーションとは
防音と一口に言っても、オフィスではどんなことが必要なのでしょうか。パーテーションの種類のご紹介と、遮音性能についても解説します。
遮音と吸音について
オフィスの防音の方法として『遮音』と『吸音』があります。遮音とは、外部からの音を遮り、内部の音を外へもらさないようにすることです。吸音とは、音もれを防ぎ、音の反射を吸収して反響を防ぐことです。遮音性が高い個室では、音が反響して声が聞こえにくい場合があります。オフィスで防音対策をするには、遮音と吸音をどちらも行う必要があるといえます。
パーテーションの種類
パーテーション(壁)で防音対策をするには、床から天井までふさぐ必要があります。自立式のローパーテーションや、ハイパーテーションでも上部(ランマ)があいているタイプでは音がもれてしまいます。天井までふさげるパーテーションには4種類あり、目的や用途によって使い分けることができます。素材や性能、費用などが異なるため、それぞれの特徴と事例をご紹介します。
アルミパーテーション【特徴】
アルミパーテーションは、バリエーションが豊富で施工性もよく、4種類の中でもっとも安価です。アルミ素材の支柱(ポール)とパネルで構成され、パネルの表面は薄い鋼板やポリエステル化粧板などです。標準的なアルミパーテーションの芯材は、ハチの巣のような形状をしている、ハニカム構造のペーパーコアです。原料は紙なので火には弱く、高層ビルなど、不燃指定のある場所では利用できないことがあります。
【ランマクローズの事例】
スチールパーテーション【特徴】
スチールパーテーションには遮音性、不燃性、耐震性があり、機能性に優れています。スチール製のパネルで、支柱を挟み込んだ中空構造になっています。スチールパネルは石膏ボードで裏打ちされており、とても頑丈で断熱性があります。また、支柱が見えないため、見た目にもすっきりとしています。標準的なカラーは白・黒・ベージュなどです。塩ビシートを貼って木目やコーポレートカラーなど、好きな色や柄にカスタマイズすることもできます。
【ランマクローズの事例】
ガラスパーテーション【特徴】
ガラスパーテーションは、アルミまたはスチール製のフレームにガラスを挟み込んだタイプと、ガラス同士が連なった連装ガラスタイプがあります。もっとも安価なのはアルミタイプです。ブラックフレームとガラスを組み合わせると、クールでおしゃれな雰囲気になります。ホワイトフレームとの組み合わせでは、さわやかで明るい空間がつくれます。
【ランマクローズの事例】
LGS造作壁【特徴】
LGS造作壁とは、内装工事で作られる壁で、遮音性、断熱性に優れています。軽量鉄骨(LGS)で骨組みをして石膏ボードを貼り、壁紙(クロス)やシート、タイル、塗装など、バリエーション豊かに仕上げをしていきます。LGS造作壁は曲線や波型に建てるなど、幅広いデザイン表現が可能です。また電気配線を通すこともできます。エントランスの造作壁にLEDサインやスクリーンを取付けるなどし、ブランディングに活用している企業もあります。
【ランマクローズの事例】
※ 造作壁を施工中の様子
パーテーションの遮音性能について
次は、パーテーションの遮音性能とは何か、数値としてどれくらいあれば良いのかを詳しく解説していきます。
遮音性能とは
音や声をパーテーションで遮ると、小さくなります。遮った量を数値で表したものが遮音性能で、大きいほど高性能です。単位はdB(デシベル)で、音圧レベルを表します。たとえば、外側からの音が70dBで、内部に聞こえる音が40dBなら、パーテーションの遮音性能は30dBとなります。
オフィスで必要な遮音性はどれくらいか
通常の会話は60dB程度、ヒソヒソ話は20〜30dB程度、30dB以下はほとんど聞こえないと言われています。アルミパーテーションとガラスパーテーションの遮音性能は20〜30dB程度で、ヒソヒソ話は遮音できますが、通常の会話や少し大きな声は壁越しに聞こえてしまいます。しっかり防音対策をしたい場合には適していません。一方、スチールパーテーションは標準仕様でも30~40dB程度の遮音性があり、防音の役割を果たすことができます。さらに遮音性を高めることもでき、防音室をつくる際は、遮音仕様に変更すると良いでしょう。
防音パーテーションおすすめ3選
次に、防音対策に向いているパーテーションのおすすめ3選をご紹介します。それぞれ標準仕様から遮音仕様に変更ができます。遮音、吸音をして防音性を高める方法と、それぞれの性能と費用の比較表をご紹介します。
おすすめ3選と防音性を高める方法
①スチールパーテーション
遮音仕様に変更するには、スチールパネルの間に、ロックウールやグラスウールといった吸音材を充填する方法があります。また、通常のスチールパーテーションの厚みは6㎝程度ですが、8㎝程度まで厚くし、ロックウール等の量を増やすことでさらに防音性を高めることもできます。遮音性能は50~55dB程度になり、十分防音対策に役立つと言えます。
②LGS造作壁
防音性を高めるには、スチールパーテーション同様、壁の内部にロックウールやグラスウールを充填して吸音する方法が挙げられます。また、LGSに貼る石膏ボードを複数枚貼ることも有効です。遮音性能は45~55dB程度になります。
③ガラスパーテーション
標準のガラスパーテーションはアルミパーテーション同様、しっかりとした防音対策には向いていません。しかし、遮音仕様に変更できるものもあります。防音性を高めるには、ガラスを2枚使用したダブルガラス(ツインガラス)にする方法や、10mm程度の厚いガラスを2枚貼り合わせた『防音合わせガラス』をダブルで使用する方法などもあります。遮音仕様では40~50dB程度になり、会話はほぼ聞き取れない状態となります。
防音パーテーション3選の性能と費用比較
防音パーテーションのおすすめは、スチールパーテーション、LGS造作壁、ガラスパーテーションの3つでしたね。それぞれのパーテーションの性能と費用の比較表をご紹介します。どれを選ぶか迷う際は、ぜひ参考にしてみてください。
防音パーテーションおすすめ3選 性能と費用の比較表
種類 性能 |
スチールパーテーション | LGS造作壁 | ガラスパーテーション (スチールフレーム) |
遮音性 | 〇 | ◎ | △ (遮音仕様) |
吸音性 (吸音材充填の可否) |
〇 | 〇 | × |
不燃性 | ◎ | 〇 | ○ |
耐震性 | 〇 | △ | △ |
デザイン性 | △ | ◎ | ○ |
一般的な費用* | 40,000円程度 | 現場調査後お見積り | 70,000円程度 |
オフィスボール価格 (中古)* |
12,400円~ | 25,800円~ | |
オフィスボール価格 (新品)* |
22,500円~ | 29,500円~ |
*W900 施工費別 標準仕様価格での比較となります
防音パーテーション導入時の注意点
最後に、防音パーテーション導入時に気をつけるべき注意点について解説します。新たに天井までふさいだ個室をつくる場合、建築基準法や消防法といった法令や、賃貸オフィスでは契約内容が関わってきます。防音パーテーションで個室をつくる際はご注意ください。
賃貸オフィスでは工事区分の確認が必要
賃貸オフィスの工事では、『A工事』『B工事』『C工事』という区分に分けられている場合があります。内装やパーテーションの工事がどの区分にあたるのか、事前に確認する必要があります。
≫ A工事 B工事 C工事の内容とは?工事区分を詳しく解説!
- A工事:オーナーの費用でオーナー指定の業者が施工
- B工事:テナントの費用で、オーナー指定の業者が施工
- C工事:テナントの費用でテナントが業者を選んで施工
例えば、A工事は、床、壁、天井や基本的な設備などです。B工事は、照明や空調、防火設備の移設や増設、ビル共用部のサインなどです。内装工事やパーテーション工事はC工事になることが一般的ですが、ビルの規定や契約内容によって異なる場合もあります。また、設備工事との関連もあるため、オーナーや管理会社などに予め確認しましょう。
≫ 内装工事の流れ・ステップ・工事工程を費用も含め5分で解説
照明器具・空調の位置の確認
パーテーションを建てたい位置に照明器具や空調などがぶつかってしまう場合、まずは移設ができるか確認して下さい。移設が可能な場合は、賃貸オフィスでは前述のB工事になることが多く、工事区分や費用については管理会社などに事前に確認しましょう。まずは見積りをもらい、移設するのか、パーテーションの位置を変更するか判断しましょう。
オフィスビルでは、在来工法天井やシステム天井などがあります。在来工法天井の表面は、小さな穴があるジプトーンなどで、吸音性や断熱性に優れ、オフィスだけでなく学校や病院など多くの場所で使われています。デメリットは照明や空調の移設に手間がかかる点です。一方、システム天井は、照明や空調、スピーカーなどがモジュールに合わせてすっきりと配置され、部分的な移設が比較的簡単にできるメリットがあります。どのような天井でも、退去時には原状回復が必要になることが多いのでご注意ください。
≫ 原状回復工事とは?費用や工事範囲・工期の目安まで徹底解説
建築基準法や消防法に気をつける
建築基準法や消防法といった法令にも気をつけて施工しなければなりません。具体的には、通路幅や防災設備などについて考慮が必要です。オフィス内の通路幅は、災害時の避難通路を確保するために、建築基準法で基準が定められています。一方、消防法では、火災発生時に火や煙が広がらないよう、排煙や消火設備の設置基準を定めています。個室をつくる際には、天井にあるスプリンクラーや煙(熱)感知器、誘導灯などの移設や増設が発生することがあり、費用もかかります。また、工事着工の7日前までに消防署への届け出も必要になります。
窓際に隙間をつくらない
せっかく遮音性の高いパーテーションを使っても、隙間があると防音効果が下がってしまいます。パーテーションを建てる際、とくに注意が必要なのは窓際です。オフィスでは、窓にブラインドを付けていることが多くあります。パーテーションをブラインドの手前までにすると、窓際に隙間が出来て音がもれてしまいます。パーテーションをクランクさせて柱や壁に納めるか、ブラインドの羽を短くカットして窓の間の方立てに納めるか、どちらかを選択して隙間をつくらないようにして下さい。
工事の日時に配慮
パーテーション工事では大きな音が出るため、業務が終了している夜間や休業日などに行う必要があります。自社は騒音が出ても構わないとしても、ビルの規定があったり、同じビルに入居する他のテナントに迷惑になったりするため、時間や曜日には配慮してください。また、工事の前にオーナーや管理会社に工事申請が必要になることが多くあります。
防音・吸音パーテーションおすすめ3選!費用の比較や注意点【まとめ】
オフィスのパーテーションには様々な種類があります。その中で、今回は防音性能が高いおすすめ3選と、性能や費用の比較、導入時の注意点を解説しました。静かで快適なオフィスでは、業務に集中することや、会議で活発な議論をすることもできます。企業の機密漏洩の心配もありません。オフィスの防音対策に、遮音性や吸音性の高いパーテーションをぜひご活用ください。