スチールパーティションは、静かで快適な空間が作れる間仕切りです。オフィスや店舗、学校などの新設時や、移転、レイアウト変更の際などに、後付けの壁として利用されます。今回は、スチールパーティションの性能と価格を他の間仕切りと徹底比較し、おすすめの使い方事例4選も解説します。
スチールパーティションとは?構造、重量、サイズなどの基礎知識
まず、スチールパーティションとはなにか基礎知識をご紹介し、在庫状況と高性能仕様についても解説します。
スチールパーティションとは
スチール製の頑丈な間仕切りです。オフィスなどに入居後、部屋や空間を仕切るため、テナント工事として取付ける後付けの壁です。主に次のような4つの特徴があります。
①移設できる
スチールパーティションは、パネルや支柱などの部材を組み立てる施工型パーティションの1つです。施工型パーティションの特徴は、一度設置した後でも、レイアウト変更や移転の際に解体し、別の場所で再設置できることです。移設して再利用することで廃棄物を減らせ、SDGsの考え方に沿った取り組みと言えます。
②見た目すっきり高性能
スチールパーティションは、すっきりとスマートな見た目と、高い性能を持っています。支柱がパネルの内側に入る構造のため、パネル同士のつなぎ目が細い目地になり、すっきりと見えます。また、火災時に燃えにくい不燃性能や、音漏れしにくい遮音性能を備えています。
③2枚のパネルを合わせた中空構造
パネルの表面は0.5mm程度のスチール板で、裏側に石膏ボードが貼られています。組み立てる際は、床と天井にレールを取付け、支柱を立ててから、2枚のパネルを両面から取付けます。2枚のパネルによって中空構造が作られ、断熱性も高くなっています。
④重量がある
スチールパーティションの重量は、90cmのパネル1枚で約60~80㎏もあります。アルミパーティションの倍近い重さです。部材も多く、施工時間もその分かかりますが、とても頑丈で高性能です。
スチールパーティションのサイズって?
在庫タイプのパネルサイズは、横幅は90cmや1m20cm、縦は約2m10cm~2m20cmで、天井の高さは3m程度まで対応可能です。天井に近いランマ(欄間)を塞いでランマクローズにする場合は、ランマパネルを取付けるのが一般的です。
スチールパーティションの在庫に関して
スチールパーティションには、メーカーが在庫を持つ、短納期でも対応できる在庫タイプと、特注の色やサイズで作る受注生産タイプがあります。在庫タイプは、決まったモジュールで作られ、色もホワイトやベージュなど、汎用性の高いものになります。現場の寸法に合わせて部材を組み合わせたり、カットしたりして設置します。また、受注生産タイプは、天井の高さが通常より高い場合でも、4m程度までは製作可能です。
高性能仕様のスチールパーティション
スチールパーティションには、高性能仕様の製品もあります。標準タイプより、遮音性や耐震性などがアップされています。
高遮音仕様
高遮音仕様は、パネルの中空部分に、グラスウールやロックウールという防音材を充填して防音性を上げています。高遮音仕様は、約45~50db程度の遮音性を持ち、静かで快適な空間を作り出します。音漏れのしにくさはdb(デシベル)という単位で表され、数値が大きいほど防音・遮音性能が高いことを表します。標準的なスチールパーティションには、約30~35db程度の遮音性があります。
高耐震仕様
スチールパーティションには、強い地震にも耐えられる、高耐震仕様の製品もあります。地震は防げませんが、人的被害を最小限に抑えるために作られた製品です。避難経路となる通路の壁や、サーバールーム、避難場所にも使える会議室などを作るのに向いています。
また、地震を想定した振動試験や、建物が変形しても、倒れたり脱落したりしないで、滑らかに変形できる追従性を確認する試験などもあります。高耐震仕様では、これらの試験の数値が、標準仕様より数倍強くなっています。
スチールパーティションの性能や価格を徹底比較!
オフィスをレイアウトするパーティションには、スチールパーティション以外にも種類があります。似たように見えても、性能や価格が違います。スチールパーティションは、アルミパーティションやLGS造作壁と比較されることが多いため、何が違うのか徹底比較します。
アルミパーティションとLGS造作壁の特徴とは
間仕切り壁を検討する際、よく比較検討されるのが、スチールパーティション、アルミパーティション、LGS造作壁の3種類です。先にアルミパーティションとLGS造作壁の特徴を説明してから、3つを徹底比較していきます。
アルミパーティションとは
支柱がアルミ製で軽量の間仕切りです。厚みは5cm程度です。スチールパーティションより安価で、コストパフォーマンスの良さが魅力です。施工型パーティションの1つで、スチールパーティション同様、移設ができます。スチールパーティションより部材が少なく、施工時間も短く済みます。しかし、一般的なアルミパーティションの芯材は、ペーパーコアという頑丈な段ボールのような素材のため、不燃性はなく、遮音性も劣ります。しかし、メーカーによっては不燃認定された製品もあるため、防音・遮音性を求める場所以外では、使い勝手の良いおすすめの間仕切りです。
LGS造作壁とは
内装工事で建てる造作の間仕切りで、家の壁に近い雰囲気です。厚みは10~20cm程度になります。LGSという軽量鉄骨の支柱を立てて石膏ボード(プラスターボード)を取り付け、表面に仕上げをします。仕上げ材には、壁紙やタイル、木、石材、フェイクグリーンなど様々な素材が選べます。直線だけでなく曲線にも建てられ、希望のデザインイメージを表現できることが魅力です。しかし、その場に合わせて1から建てていくので、施工に時間がかかり、移設も出来ません。ただし、部分的に壊し、少しレイアウトを変える程度の改修は可能です。
防音・遮音性能の違い
間仕切りを建てる上で気になる音漏れの問題。3種類のうち、スチールパーティションとLGS造作壁は、防音・遮音性が高いです。壁の内側に使っている石膏ボードには遮音性や断熱性があります。また、中空構造になっているので、グラスウールやロックウールを入れることができ、さらに音漏れを抑えられます。
耐火性能の違い
耐火性能の高さでは、スチールパーティションがもっとも優れています。スチールや石膏ボードなどの不燃素材で構成されているためです。防音材として使われるグラスウールやロックウールも耐熱性に優れています。またLGS造作壁も、防火認定された仕上げ材を使用した場合は、耐火性能が高いです。
価格の違い
価格では、アルミパーティションがもっとも安価で経済的です。スチールパーティションとLGS造作壁を比較すると、仕上げ材料や施工面積によっても異なりますが、LGS造作壁の方が高くなる場合が多いでしょう。スチールパーティションは、決まったモジュールの部材を組み合わせるため、施工方法がシンプルです。LGS造作壁は工程が多く、施工時間がかかって価格も高くなりがちです。
対応できる天井高の違い
パーティションは、安全のためにそれぞれ対応できる天井高が決まっています。もっとも高くまで対応できるのは、アルミパーティションです。4~6mくらいの高さまで建てられる製品があり、工場や倉庫など、天井が高い場所にも設置できます。またLGS造作壁は天井高5m程度まで、スチールパーティションも4m程度までは対応が可能です。標準的なオフィスの天井高は2m50cm~3m程度なので、事務所の場合はどのパーティションでも十分対応できるでしょう。
スチールパーティションとアルミパーティション、LGS造作壁の比較一覧
ここまで3種類の間仕切りの違いを解説してきました。一覧にまとめたので、選ぶ際の参考にして下さい。
パーティション徹底比較!(スチール、アルミ、LGS造作壁) | |||
性能 | スチール パーティション | アルミ パーティション | LGS造作壁 |
防音性、遮音性 | ○ | × | ○ |
不燃性、耐火性 | ○ | △ (不燃認定製品の場合) |
△ (防火認定仕上の場合) |
耐震性 | ○ | △ | △ |
価格、経済性 | △ | ○ | △ |
対応できる天井高 | △ | ○ | △ |
移設可能 | ○ | ○ | × |
スチールパーティション、おすすめの使い方事例4選
最後に、スチールパーティションのおすすめの使い方事例4選を解説します。どんな場所に向いているのか、間仕切りを検討する際の参考にしてください。
エントランスのセキュリティ性アップに活用した事例
この事例では、エントランスのドアに入退室管理用の電子錠を取付け、オフィスのセキュリティ性をアップさせています。中空構造になっているスチールパーティションなら、電子錠の配線をパネルの中に通せるため、スマートに仕上がります。スチールパーティションはアルミパーティションより重く、部材も多いため施工に時間がかかります。その分、頑丈で、壊されにくいとも言えます。
遮音性と採光性を両立させた事例
静かで快適なオフィス空間を作るため、執務室の間仕切りにスチールパーティションを採用しています。執務空間では、音漏れは防ぎながらも、部屋が暗くなるのは避けたいところです。ランマを塞ぐには、パネルを使う方法とガラスを使う方法があります。この事例では、天井の照明のラインと垂直になる面はランマパネルにし、平行になる面はガラスにして採光を確保しています。
パネルを木目調にした事例
スチールパーティションの受注生産タイプなら、木目やコーポレートカラーなど、希望の色にすることができます。メーカーによっては、木の突板仕上げや、クロス仕上げなどにもでき、無機質になりがちなオフィス空間も華やかに仕上がります。短納期にも対応できる在庫タイプは、白やベージュ、ナチュラルなグレーなどが一般的です。
高遮音仕様にした事例
スクールで講習室の壁にスチールパーティションを使い、防音性や遮音性を上げるために、グラスウールを充填した事例です。防音材としてはグラスウールやロックウールが使われます。どちらも耐熱性があるため、使うことで断熱性や耐火性能もアップします。防音性能では、グラスウールの方がより高音域まで遮音できると言われています。しかし、耐火性能はロックウールの方が高いため、より重視したい性能によって選ぶと良いでしょう。
スチールパーティションの性能や価格を徹底比較!事例4選も解説【まとめ】
今回は、スチールパーティションと他の間仕切りと徹底比較し、おすすめの使い方事例4選も解説しました。スチールパーティションは、すっきりとしたスマートな見た目で、遮音性や不燃性、耐震性に優れた高性能な間仕切りです。価格はアルミパーティションよりは高くなり、LGS造作壁とは同等か、少し安くなるケースが多いでしょう。短納期の在庫タイプと、色やスタイルのバリエーションが豊富な受注生産タイプがあります。頑丈な素材を活かし、入退室管理用の電子錠を取付け、オフィスのセキュリティ性アップに役立てるのもおすすめです。