外に音が漏れるほど大きな音を発している店舗では、防音工事が必要です。しかし、どの程度の防音対策を行えばいいか分からない方の方が多いのではないでしょうか?そこでこの記事では、店舗内装で行う防音工事について解説していきます。
防音工事が必要な店舗
防音工事が必要になるのは、次のような店舗です。
- カラオケ・ライブハウス
- オフィスビル
- 飲食店
業態によって、必要になる防音工事が異なります。また、騒音によるクレームが発生した場合、警察からの指導や店舗のイメージダウンに繋がることがあります。
①カラオケ・ライブハウス
歌声や楽器などの大きな音が発生するカラオケやライブハウスなどでは、防音室の導入が欠かせません。「外部に音が漏れてクレームが発生している」「防音対策が不十分で改修する必要がある」などを防ぐために、事前にしっかりとした防音対策を行いましょう。また、カラオケやライブハウスでは、音楽に豊かさや温かみを与えるような設計が必要です。
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②オフィスビル
オフィスで防音工事をすることで、静かな快適に働ける環境を作れます。「外部から余計な音が聞こえコミュニケーションがとりにくい」「個人情報や機密情報を第三者に聞かれてしまう」などのトラブル回避が可能です。
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③飲食店
飲食店では、お客様やスタッフの会話やBGMなどが騒音になる可能性があります。お客様やスタッフの声が外に漏れている場合は、防音ドアや防音窓などを施工することで、騒音を軽減できます。深夜営業をしている飲食店は、より防音対策に気を配る必要があります。
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開業前に防音工事を行っておくのがベスト
開業前に防音対策をすることで、施工費用を抑えられ、適切な工事を行えます。防音工事の内容によっては床や壁などから対策する必要があり、内装が仕上がっている開業後では、適切な防音工事を行えないケースがあるからです。そのため、開業後に一から防音対策を行う場合、床や壁などを一度解体してから工事を行うこともあります。
防音工事の種類
防音工事では、空気伝搬音と固体伝搬音を防ぐ必要があります。それぞれの音を防ぐためには、次の表のような対策を行います。
音の種類 | 音の伝わり方 | 対策 |
空気伝搬音 | 空気の振動として音が伝わる | 遮音 吸音 |
固体伝搬音 | 固体や液体に振動が伝わり、音が伝わる | 防振 制振 |
表に記載した防音対策について、解説していきます。
①音を反射させる遮音
遮音(しゃおん)とは、空気中に伝わる音を遮音材に反射させることで、外に音が漏れないようにするものです。例えば、石膏ボードを複数枚重ねて施工することで、遮音性の高い空間が作れます。基本的に硬い石膏ボードほど遮音性が高くなりますが、防ぎたい音の種類によって、様々な種類の石膏ボードを組み合わせる必要があります。というのも、同じ素材や厚さのものでは、一定の周波数の音しか遮音できないからです。
②音を吸収する吸音
音を吸収することで音の反射を防ぎ、室外に音が漏れないようにする、もしくは室内での音の反響を抑えるのが吸音(きゅうおん)です。しかし、吸音性が高すぎると、反響音が物足りなく感じてしまう場合もあります。吸音材としても用いられるのは、主にグラスウールやロックウール、ウレタンフォームなどです。これらの吸音材を、壁や天井などに施工することで吸音性を発揮します。また、ウレタンスポンジを壁や天井などの表面に貼り付けて施工することもあります。
③音の振動をできるだけ小さくする防振
振動の伝わりを防ぐことで、音を伝えないようにするのが防振(ぼうしん)です。床や天井などのあいだに、防振ゴムや防振ハンガーなどの防振材を施すことで実現できます。床を例を挙げると、防振ゴムで床の下地を支え、その上に床を仕上げます。
④音の振動そのものを減らす制振
振動そのものを減らすことで、音の発生を抑えるのが制振(せいしん)です。振動するものに制振材を直接貼り付けて、振動している物自体の振動を防ぎます。基本的に、制振も防振と同様の対策を行うことで防げます。
防音工事のメリットとデメリット
防音工事にはメリットとデメリットがありますが、店舗やオフィスなどで周囲に迷惑がかかっている場合、防音工事をする必要があります。
メリット|近隣トラブルを防げる
防音工事を行うことで、騒音による近隣トラブルを防げます。例えば、居酒屋で防音工事を行うと、お客様が話している声が外に漏れないようになります。仮に外に音が漏れてしまっている場合、営業時間の短縮や改修工事など、営業に支障がでてしまうでしょう。また、外に音が漏れなくなると、時間帯を気にせずに音を出せる(営業できる)点もメリットです。
デメリット|工事費用が高くなる
防音対策は、基本的に壁や床、天井などの音を外に漏れないようにしたい空間の全てを工事するため、工事費用が高くなります。また、使用する材料が多い点も、工事費用が高額になる要素のひとつです。例えば、防音工事では音が外に漏れないように、石膏ボードを何重にもして施工することがあります。仮に石膏ボードを7重にして施工した場合、石膏ボードだけでも通常の7倍の費用がかかってしまうことになります。
防音工事の費用相場
防音工事の費用相場は、次の表の通りです。
種類 | 費用相場 |
ユニットタイプ | 50万~ |
楽器室・カラオケ | 200万~ |
ダンススタジオ | 300万~ |
ライブハウス | 1000万~ |
上記の費用はあくまで目安で、行う防音対策や建物の広さによって費用が異なりますが、オフィスで石膏ボードやグラスウールを用いて防音工事をするときは、防音室を作るよりも低価格で施工可能です。また、組み立てて施工するユニットタイプの防音室は、低価格で施工できます。
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考えられる騒音トラブル|3つの事例を紹介
考えられる騒音トラブルの3つの事例を紹介していきます。
- 環境の変化によるもの
- 足音・物音が階下に響く
- 防音対策をしているのにダクト音の苦情が入る
上記の3つの事例について、解説していきますのでご覧ください。
①環境の変化によるもの
開業前は周辺に住宅が少なかったため防音対策を行っていなかったが、数年後に住宅が増えていき、騒音によるクレームが増える可能性があります。話し声やBGM、扉の開閉音などが外に漏れていると、騒音としてクレームの原因になるでしょう。このようなケースでは、環境の変化にあわせて、防音対策をする必要があります。例えば、壁を厚くして吸音材を施工し、防音窓や防音ドアなどを設置するなどの防音工事が必要です。
②足音・物音が階下に響いている
オフィスビルや商業ビルの上層階に入居した場合、階下に足音や物音が響いてしまうことがあります。いわゆる固体伝搬音が階下に響いていることが原因だと予想できますが、対策が難しい防音工事のひとつです。というのも、階下に音が響くのを防ぐためには、床や壁など建物自体に防音工事をするのが効果的だからです。そのため、大がかりな工事が必要で、工事費用も高額になります。まずは、オーナーに相談し、その後に対策を考えるのがいいでしょう。
③防音対策をしているのにダクト音の苦情が入る
防音対策をしているケースでも、騒音によるクレームが入る場合があります。例えば、レストランや居酒屋などに設置されているファンベルトの劣化が原因で、店外に設置しているダクト音による騒音が発生しているケースが考えられます。上記の例では、ファンベルトや軸受などの交換によって対策が可能です。
防音工事の流れ
はじめに、店舗の営業時間帯や防音工事の目的などを明確にしておきましょう。理由は、必要な対策や工期などが明確になるからです。次に、周辺店舗の騒音レベルの調査を行っていきます。必要な防音対策がわかり、対策目標値を設定できるからです。その後、使用する素材の選定や設計を行い、見積もりを提出します。見積もりに同意いただけましたら、工事を行っていきます。施工後には、騒音レベルを測定し、基準をクリアしていたら完成です。
防音工事にかかるリフォーム費用と事例を紹介【店舗の防音】まとめ
この記事では、内装工事で行う防音対策について解説しました。防音対策は、遮音や吸音、防振や制振などのさまざまな要素が絡み合う難易度の高い工事です。自宅で簡易的な防音対策を行う場合はDIYでも問題ないかもしれませんが、店舗では自分で防音対策をするのはおすすめできません。確実に防音したい店舗では、工事費用が高くなってしまうものの、専門業者に依頼するのがおすすめです。