オフィス内装での様々な工事において「養生」は必要不可欠な工程といえます。なぜなら、しっかりおこなったかによって工事後の仕上がりに大きな差ができてしまうケースや、トラブルを引き起こす原因になるからです。しかし、オフィスリニューアルを検討されている方の中には、養生について詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。そこで当記事では、役割とタイミングを中心に養生について解説していきます。
内装工事で養生の役割とは?
内装工事をおこなう場合の養生は「汚さない」「傷つけない」「目隠し」が主な役割です。それぞれについて順番にご紹介します。
養生で現場を汚さない
養生には、現場を汚れから守るという役割があります。工事の作業では、木材などの材料を加工した破片や粉が多く発生し、床や既存什器の上に散乱することも。こうした汚れから現場を守るために、工事の前に養生をして対策しなければなりません。また、ブルーシートなどを広げて作業することで、作業の後に溜まったごみはブルーシートごと丸めて処分できるためとても便利です。
養生は物を傷から守る
移動中の物を傷つけないことも大きな役目の1つです。オフィスのリニューアルではたくさんの什器を移動させることも。物を移動させる場合には、慎重に運んでいても壁にぶつけてしまったなどトラブルがついて回ります。壁に物をぶつけてしまうと、「壁の塗装がはがれて傷つく」「運んでいた物が凹んでしまう」といった想定外の補修費がかかることも。トラブルを回避するためには「運ぶ物の角に段ボールをあてがっておく」などの対策が必要です。
養生は工事中の目隠しとしても利用できる
共用部から現場が見えてしまう場合には、養生を目隠しとして利用できます。扉の取り付けがされていないときにはブルーシートをかぶせることで作業現場を隠すことができます。ボードなどの粉が出る場合やシンナー等の臭気作業をおこなうとき、共用部へ粉やにおいの漏れを抑えることができます。
養生が必要な作業とは?
内装工事には様々な工程があり、リスクも作業によって変わります。養生の方法は作業のリスクを考えて検討する必要があるのです。今回は4つの作業について紹介していきます。
重量物の搬入には青ベニヤ
タイルカーペットや塗料など重いものを台車に乗せて搬入する場合、床への配慮はなくてはなりません。搬入導線に耐久性に優れた「青ベニヤ」を敷くと良いでしょう。重量のある台車を搬入したり、仮置きすると床にタイヤの跡が残ってしまう可能性があるためです。石でできている床はひび割れてしまうケースもあり、特に気を付けなければなりません。
≫ 床工事の種類・費用相場や内装工事依頼前に確認すべき3点!
大きな物の搬入にはプラベニヤと青ベニヤ
サイズが大きい物を搬入する場合は廊下などの壁に傷をつけてしまう可能性があります。搬入する導線の壁は「プラベニヤ」を貼るのがおすすめです。テープで壁に簡単に貼ることができます。しかし、使用するテープの粘着力によっては壁の塗装をはがしてしまうケースも。壁が塗装仕上げの場合は粘着力の弱いマスキングテープを使うなど注意が必要です。また、サイズが大きく重量があるもので搬入に台車を使う場合は導線に「青ベニヤ」を敷くなど対策を取りましょう。
粉が出る作業にはビニールシート
ボードやパテなどで発生する粉は現場を汚してしまいます。クリーニング作業ではタイルカーペットの目や、タイル貼りの壁の目地などの隙間に入り込んだ粉を取り除ききれないことも。作業の前に床や壁などを養生する必要があります。おすすめの養生材はビニールシートなど材質がビニールで隙間がないものです。ブルーシートは目があるため隙間から粉が漏れ出てしまうことがあります。ただし、ビニールシートは強度がなく破れやすいです。床は人の行き来ですれて穴が開きやすいので、ビニールシートの上から強度のあるブルーシートを敷くのがベスト。作業が終わったら、発生した粉はビニールシートごと丸めて捨てましょう。
汚れる可能性のある作業
壁や床に付着した塗料を落とすのは一苦労です。塗装では塗る作業の前に完璧な養生が求められます。例えば天井をローラーで塗装する場合。ローラーは回転するときの勢いでどうしても塗料を多量に散らしてしまいます。作業中に現場が汚れる場面は多く見受けられます。塗装の他にも、ダイノックシートを施工する際のプライマーやクロスの糊など、液体を使う作業は要注意です。
養生すべき場所はどこ?具体例を用いて解説
オフィス内装では、搬入場所から作業エリアまで適切に養生をおこなう必要があります。今回は例として、軽鉄・ボード工事をビルの3階でおこなうことを想定しました。基本的に養生するべき場所は「搬入・搬出導線」「エレベーター」「共用部」「作業エリア」です。
≫ 【ボード工事】内装仕上工事でのポイントや施工例を徹底解説
軽鉄・ボード工事で使われる材料の特徴は以下の通り。
- 軽鉄:長い棒状の材料で金属製。
- 石膏ボード:大きな板状で重量がある。削ると粉が出る。
その他にも工具や搬入出用の台車などを使用します。
搬入・搬出導線
導線では廊下の壁に材料や台車をぶつけて傷つけたり、ボードがこすれて粉が発生し、床を汚してしまうリスクが考えられます。プラベニヤやダンボールで壁を保護し、床はブルーシートを敷くのがおすすめ。ただし、搬入時にボードをまとめて台車で運ぶ場合、重量で床が破損する可能性もあります。重量が重いものを台車で運ぶ際は、青ベニヤなどを導線に敷いて床を保護してからおこないましょう。
エレベーター
荷揚げはエレベーターを利用することもよくあります。大きなビルでは大型の貨物エレベーターが備えられていることもありますが、小さなビルでは人荷用のサイズが小さいエレベーターしかないことも。エレベーターは狭いため、ボードのような大きなものをぶつけてしまう可能性が高いです。また軽鉄のような長物で、照明や防犯カメラなどを誤って破損させてしまうことも。エレベーターでは天井と床、壁全体をプラベニヤなどで保護する必要があります。
共用部
トイレやエレベーターホール、工事フロアの廊下など共用部はブルーシートを敷くなど養生をする必要があります。特にボード工事など粉が発生する工事の場合は、職人が粉を踏んで靴の裏が汚れているため共用部が足跡だらけになってしまうことも。同じフロアに入っている他のお客さんから廊下が汚れているというクレームにつながりかねません。
作業エリア
作業エリアでは、床にビニールシートを敷き、上からブルーシートを敷くのがベストです。床に仕上げのタイルカーペットなどが貼ってある場合は、シートの端がめくれないようにテープで固定します。既存の什器やPCなどの備品がある場合は、粉で汚してしまうのを防ぐためビニールシートを上からかぶせましょう。作業エリアに煙感知器があるときは養生をするのを忘れないよう注意が必要です。エリアが広い場合にはあらかじめ煙感知器の場所を把握しておくようにしましょう。
養生は内装工事のかなめ!役割とするべきタイミングはいつ?【まとめ】
今回はオフィス内装の養生について解説してきました。「現場を汚さない」「傷つけない」といった工事の大前提になっており、良質な仕上げには欠かせません。依頼しようと検討している業者が丁寧な養生をおこなっているかはとても重要です。作業内容で打ち合わせをする場合は養生計画を質問するのを忘れないようにしましょう。