執務室のレイアウトは、従業員の生産性と工事コストの両方を大きく左右します。本記事では、執務室の定義や生産性を高めるレイアウトの検討ポイント、通路幅や消防法などの法規制、コストを抑える施工の秘訣まで、オフィス施工の専門業者が実務目線で解説します。
執務室とは?
執務室とは、従業員が日常的にデスクワークを行う主たる作業空間を指します。実務上の呼称であり、法令で定められた用語ではありません。
事務所は建物・区画の単位を指し、その内側の個々の部屋が「事務室」にあたります。どの範囲を執務室と呼ぶかを社内で統一しておくと、施工業者との認識のズレを防げます。
<執務室・事務所・事務室の言葉の定義>
| 用語 | 意味 | 使われる場面 |
|---|---|---|
| 執務室 | ■従業員が日常業務を行う主たる作業空間
■法令用語ではない実務上の呼称 |
■レイアウト計画
■オフィス構築の打ち合わせ |
| 事務所 | ■建築基準法上の建築物またはその一部で、事務作業に従事する労働者が主として使用するもの(事務所衛生基準規則第1条) | ■衛生基準
■労働基準監督署への届出 |
| 事務室 | ■事務所の中にある個々の部屋
■衛生基準の適用単位 |
■気積・照度・空気環境の基準判定 |
生産性を最大化する執務室レイアウトの検討ポイント6選
生産性を最大化するために、執務室レイアウトを検討する際におさえるべき主なポイントを6つ解説していきます。
ポイント1.執務室の役割
テレワークの定着によって、執務室に求められる機能が「全員が毎日座る場所」から「出社する意味のある場所」へ変化しているため、最初に決めるべきは「出社して執務室で行う業務は何か」という役割の定義です。
たとえば、対面での議論や育成に価値を置く企業であれば、席数を絞ってコミュニケーションエリアを厚くしたり、集中作業は在宅に寄せて執務室を会議機能中心に組み替えたりなど、会社によって執務室の役割が異なります。役割が定まれば、必要な面積も自ずと決まりやすくなるでしょう。
ポイント2.執務室内に作るスペース
役割が決まったら、執務室内に設ける機能スペースを洗い出しましょう。必要な部屋数と面積が確定しないと、仕切りの枚数もパーテーションの仕様も見積もれません。
<執務室内に設ける代表的なスペース例>
| スペース | イメージ | 主な目的 | 計画上の注意点 |
|---|---|---|---|
| 作業スペース | ![]() |
■個人のデスクワーク | ■気積・照度の基準を満たす面積を確保する |
| 集中スペース(集中ブース) | ![]() |
■高い集中を要する作業
■WEB会議 |
■音源から離し、遮音仕様を先に決める |
| 会議室 | ![]() |
■対面での打ち合わせ
■来客対応 |
■声が漏れない位置と遮音等級を設定する |
| リフレッシュルーム | ![]() |
■休憩
■飲食 |
■匂いと音の拡散を仕切りで抑える |
| コミュニケーションエリア | ![]() |
■部署をまたぐ偶発的な会話 | ■人が集まる中央に置く |
| 簡易MTGエリア | ![]() |
■数分〜十数分の短時間打ち合わせ | ■集中スペースほどではないが、周囲への音の反響を考慮する |
まずは必要と思うスペースを一覧化し、広さを踏まえて優先順位を付けて削ったり、面積を融通し合ったりして判断しましょう。1つのスペースに2つの機能を持たせられる場合もあるため、専門業者への相談もおすすめです。
≫【オフィスの防音対策事例】音漏れを防ぐ方法8選と費用の比較
ポイント3.ゾーニング
ゾーニングとは、執務室内のどこに何を配置するかを計画する工程です。執務室の使いやすさと施工コストの両方を大きく左右する、レイアウト計画の要といえます。
音の問題を遮音パネルや吸音材といった「モノ」で後から解決しようとすれば費用が発生しますが、ゾーニングの段階で音源から距離を取っておけば、物理的な距離が同じ役割を果たします。距離にコストはかかりません。
<スペースの組み合わせ別ゾーニングのおすすめポイント>
| スペースの組み合わせ | 重視する要素 | おすすめレイアウトのポイント |
| 共有スペース
× 集中スペース・会議室 |
■音
■動線 |
■コミュニケーションスペースなど人が行き交う共有スペースはフロアの中央に配置する
■静かな状況を保ちたい集中ブースや会議室は部屋の端、四方の隅に配置する ■動線が集中する中心から距離を取るほど、話し声や足音が届きにくくなる |
| 集中スペース
× 会議室 |
■音 | ■隣接させない
■同じ列に並べず、対角にあたる隅どうしに振り分ける ■隣り合わせにすると、会議室の声が集中ブースに響いて集中を阻害する |
| リフレッシュスペース
× 執務スペース・集中スペース |
■匂い
■音 |
■ドリンクスペースや昼食を取る場所にする場合は近すぎない配置とする
■匂いが出るものを扱う場合はドアや仕切りを設ける ■匂いも音もなるべく響かないようにする |
| リフレッシュスペース(単体) | ■光 | ■休憩を兼ねる場所であるため、明るく落ち着ける空間にする
■観葉植物やフェイクグリーンを取り入れ、ナチュラルな雰囲気にする |
ゾーニングは、このようにスペースの組み合わせ単位で考えると判断しやすくなります。まずは隣り合うスペースを洗い出し、図面への落とし込みは専門業者と一緒に進める方法も有効です。
≫小規模オフィスのレイアウト手引き|失敗しないためのポイント
ポイント4.動線
動線とは、執務室内を人が移動する経路を指します。ゾーニングと同時に、通行・避難・来客の3つの動線を描いてください。目的の異なる動線が交差すると、日常の使いにくさと安全上のリスクが同時に発生するためです。
たとえば、扉の開き勝手が通路や他の扉とぶつからないか、コピー機やロッカーの前に人が滞留しても通行が妨げられないか、非常口までの経路が一直線に確保されているかを図面上で確認してください。
ポイント5.家具・インテリア
家具は、仕切った後の広さと空間の役割に応じて選定が必要です。既存家具をそのまま転用するのが適切ではないケースは珍しくありません。
すべて新調すれば当然コストは膨らみますし、逆に全点を転用すれば新しい区画に合わない什器が残ります。既存資産を活かしつつ不足を補う配分が、費用対効果の面では最も合理的です。
≫オフィスエントランス・ロビーの家具選びとおしゃれな事例4選
ポイント6.コスト
執務室のレイアウトコストは「仕切りの枚数」と「素材の選び方」で大きく変わります。現場で実践しているコスト削減の具体策は次のとおりです。
<執務室のコストを抑える具体策>
| 削減の切り口 | 具体的な方法 | 期待できる効果 |
| 仕切り枚数を減らす | ■全面を天井まで塞がず、視線を切れば十分な箇所はロータイプに変える
■収納や什器を仕切り代わりに使う |
■パネル数量そのものを減らせる
■圧迫感も同時に抑えられる |
| 素材・仕様を用途で使い分ける | ■遮音が必要な会議室のみ天井までのハイパーテーションにする
■それ以外はロータイプやデスクトップパネルにする |
■高仕様のパネルを必要最小限に絞れる |
| 既存パーテーションを再利用する | ■撤去したアルミパーテーションを別区画へ転用する
■中古品を組み合わせる |
■新品調達より費用を抑えられる |
| 既存の壁・扉を活かす | ■ダイノックシートを張り替えて意匠を刷新する | ■造作をやり直すより大幅に安価
■工期も短縮できる |
特に天井内の設備に触れる工事は該当しやすく、パーテーションで会議室を新設した結果、感知器やスプリンクラーの増設費が後から発生した現場もあります。見積もりを取る前に工事区分表を入手したり、計画箇所がどの区分に該当するかを図面上で確認したりしておきましょう。
≫A工事・B工事・C工事の違いとは?オフィス移転時の工事区分を解説
≫パーテーション工事の費用を種類ごとに解説!選び方や施工事例も紹介
執務室構築時に押さえておくべき法規制
執務室のレイアウトは完全に思い通りにできるわけではありません。要素によっては各種法律などによって規制がある部分があるため、ここでは執務室レイアウトに関わる主な法律について紹介していきます。
注意点1.通路幅と避難経路の基準
通路幅は、労働安全衛生規則と建築基準法施行令の双方から下限が定められています。
<通路に関する法令>
| 法令 | 対象例 | 基準値 |
|---|---|---|
| 労働安全衛生規則 第540条 | 作業場に通ずる場所・作業場内 | 安全な通路を設け、常時有効に保持する(主要な通路には表示が必要) |
| 労働安全衛生規則 第542条 | 屋内に設ける通路 | 用途に応じた幅を確保し、通路面から高さ1.8m以内に障害物を置かない |
| 労働安全衛生規則 第543条 | 機械間または機械と他の設備との間の通路 | 幅80cm以上 |
| 建築基準法施行令 第119条 | 階数3以上または延べ面積1,000㎡超などの建築物で、居室の床面積の合計が200㎡(地階は100㎡)を超える階の廊下 | 両側に居室がある廊下は1.6m以上、その他の廊下は1.2m以上 |
参照:労働安全衛生規則/建築基準法施行令第119条
これらが下限である以上、実務では基準ぎりぎりではなく余裕を持った寸法で設計します。デスク間のメイン通路は1,200mm前後、椅子を引いて人がすれ違う副通路でも900mm前後を確保しておくと、什器を追加しても基準を割り込みません。避難経路上に複合機や書庫を置く運用は、図面段階で禁止区画として明示しておきましょう。
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注意点2.仕切りの位置と欄間の処理
パーテーションで区切る際は「天井まで塞ぐか、欄間を開けるか」で必要な消防設備が変わります。
<仕切りの位置と欄間の処理に関わる法令>
| 法令・設備 | 内容 | レイアウトへの影響 |
|---|---|---|
| 消防法施行令 第21条(自動火災報知設備) | 警戒区域は原則600㎡以下。天井まで塞いだ区画は独立した感知区域として扱われる | 個室を増やすほど感知器の増設が必要になる |
| 消防法施行規則(煙感知器の設置基準) | 煙感知器は壁・はりから0.6m以上離して設置する | 仕切りの位置によっては設置基準を満たさなくなる |
| 熱感知器の欄間開口の取扱い | 概ね45cm以上の開放欄間があれば同一感知区域として増設免除となる場合がある(基準は所轄消防本部により異なる) | 欄間を塞ぐか否かで防音性等が変わり、工事費も変わる |
| 消防法施行令 第12条(スプリンクラー設備) | スプリンクラーのヘッド周囲に散水障害となる障害物を設けてはならない | 仕切りがヘッド直下を横切る配置は不可 |
| 建築基準法施行令 第126条の2・3(排煙設備・防煙区画) | 間仕切りで排煙区画が分割されると基準を満たさなくなる場合がある | 防煙垂れ壁の位置と仕切り位置の整合が必要 |
| 消防法 第17条の14(工事整備対象設備等着工届出書) | 感知器やスプリンクラーなど消防用設備等の工事は、甲種消防設備士が着工10日前までに所轄消防署へ届け出る | 消防設備の増設を伴う計画は、届出期間を工程に組み込む必要がある |
| 各自治体の火災予防条例(防火対象物工事等計画届出書) | 間仕切りの新設など建築・修繕・模様替え・用途変更に係る工事は、着工7日前までに所轄消防署へ届け出る(期限は自治体により異なる) | 設計確定から着工まで最低2週間程度の余裕を見込む |
参照:消防法施行令/建築基準法施行令/東京消防庁
したがって、間仕切り計画は「意匠」ではなく「消防設備との整合」から入るのが安全です。欄間を開けて遮音を割り切るか、天井まで塞いで感知器を増設するかは、必要な遮音レベルと予算のトレードオフになります。判断基準は所轄消防本部の指導基準によって異なるため、着工前の事前相談が欠かせません。
≫パーテーション工事に関わる法令とは?感知器等の設置基準を解説
注意点3.気積・照度・空気環境の基準
狭い・暗い・空気がこもった空間が健康障害と作業能率の低下を招くため、執務室そのものにも、事務所衛生基準規則によって最低限の環境基準が課されています。
<気積・照度・空気環境の基準に関わる法令>
| 項目 | 基準値 | 根拠 |
|---|---|---|
| 気積(床面積 × 天井高さ) | 従業員1人あたり10㎥以上(設備の占める容積および床面から4mを超える高さの空間を除く) | 事務所衛生基準規則 第2条 |
| 照度(一般的な事務作業) | 300ルクス以上 | 事務所衛生基準規則 第10条 |
| 照度(付随的な事務作業) | 150ルクス以上 | |
| 室温
(空気調和設備使用時の努力義務) |
18℃以上28℃以下になるよう努める | 事務所衛生基準規則 第5条 |
| 相対湿度
(空気調和設備使用時の努力義務) |
40%以上70%以下になるよう努める | |
| 二酸化炭素含有率
(空気調和設備使用時) |
1,000ppm(100万分の1,000)以下 |
参照:厚生労働省「事務所衛生基準規則」
ただし、これらの数値は表だけを見ても実感しづらいものです。たとえば気積10㎥は、天井高2.5mであれば従業員1人あたり床面積4㎡が必要になる計算で、間仕切って小部屋を増やすほど余裕がなくなります。室温についても、基準の上限に張り付いた運用は得策ではありません。
自社の執務室がどこまで基準を満たしているか、どの区画に余裕がないかは、図面と現場を照らし合わせないと判断できません。施工業者はそれぞれ現場ごとの知見を持っているため、設計の段階で「この区画はどう対応すればいいか」を具体的に確認していくとよいでしょう。
執務室のレイアウト・工事に関するよくあるトラブルFAQ
実際の現場で繰り返し発生しているトラブル例を、一問一答形式で紹介します。
Q1.間仕切りを立てたら圧迫感が出てしまいました
A.什器の高さと視線の抜けが原因である場合がほとんどです。
間仕切り後の空間に、区切る前と同じ高さの収納やデスクをそのまま持ち込むと、床面積のわりに視界が塞がれて圧迫感が強くなるケースがあります。対策としては、ハイパーテーションの一部をガラスパネルに置き換えたり、収納をロータイプへ入れ替えたりして、目線より上に抜けをつくります。仕切った後の広さを前提に什器を選び直す発想が必要です。
Q2.電話線やLANケーブルが露出配線になってしまいました
A.配線経路の決定が図面段階で後回しになったためです。
パーテーション内部に配線を通すには、パネルの割付と同時に配線ルートを確定させる必要があります。壁を立ててから電話やLANの位置を決めると、内部に通す余地が残っておらず、モールで露出配線せざるを得なくなります。当社では、間仕切り図面と電気・通信の配線図を必ず重ねて確認する手順を取っています。
≫オフィス移転で必要な配線ノウハウ【電気・電話・LAN工事】
Q3.新しくつくった個室が暗く、空調も効きません
A.照明・空調のゾーニングと間仕切り位置がずれているためです。
天井の照明回路や空調の吹出口は、既存のレイアウトを前提に配置されています。その割付を無視して壁を立てると、照明スイッチが個室の外に取り残されたり、吹出口が一方の部屋に偏ったりします。間仕切り計画は、必ず天井伏図と重ねて検討してください。空調が間仕切りをまたぐ場合は、建具上部の開口やガラリで気流を調整する方法もあります。
Q4.半年後に会議室が足りなくなりました
A.現状の人数だけでレイアウトを組んだ場合に起こりやすい事例です。
パーテーションは一度立てると移設に費用がかかります。図面は「今」ではなく「2〜3年後の働き方」で描くのが原則です。増員や組織変更を見越し、可動・移設しやすい割付にしておくと、再工事の費用を抑えられます。将来の席増を想定した予備スペースを確保しておく方法も有効です。
Q5.見積もりになかった追加費用が発生しました
A.見積書の内訳が「一式」のまま曖昧になっていた可能性が高いといえます。
パーテーション工事の費用は、パネルなどの材料費だけでは完結しません。設置費・施工費に加えて、搬入費や共用部の養生費、ガラスの加工費、電気・LAN配線の付帯工事費、既存什器の移動費や廃材の処分費、夜間・休日作業の割増費などが別途発生します。天井内の設備に触れる計画であれば、B工事分の費用も上乗せされます。
そのため、見積もりを取る段階で「この費用は何に対するものか」を1項目ずつすり合わせ、あとから増える可能性のある項目を先に潰しておきましょう。「一式」表記の箇所は内訳を出してもらったり、見積もりに含まれていない作業を書き出してもらったりすると、着工後の追加費用を防げます。
最適な執務室で企業の生産性を向上させよう【まとめ】
本記事では、執務室の定義から、役割・スペース・ゾーニング・動線・家具・コストという6つの検討ポイント、通路幅や消防法などの法規制までを紹介しました。
当社はパーテーションの設置・撤去から内装工事、電気工事、オフィス移転までを自社で一貫して手がけております。間仕切りと設備を一体で図面化できるため、手戻りのない計画をご提案できます。現地調査とお見積りは無料で承っております。検討段階からお気軽にご相談ください。















