近年、働き方の多様化に伴い、職場環境の見直しが進んでいます。その中で再注目されているのが「オフィスランドスケープ」です。本記事では、その概念から導入時の注意点、実体験に基づくアレンジ方法まで詳しく解説します。
オフィスランドスケープとは
1960年代にドイツで考案されたもので、高い壁や仕切りを用いず、低めのパーティションや家具、植栽などで緩やかにブロック分けを行った空間を指します。現在では、組織の変化に素早く対応できる柔軟性などの理由から、国内でも採用する企業が増加しています。
オフィスランドスケープの主な特徴
業務内容によって向き不向きがあるため、ここで紹介する4つの特徴を理解した上で、自社への導入を検討すると良いでしょう。
工事費用を抑えられる
高い壁や仕切りが不要なため、工事費用を大幅にカットできます。また、広い1つの空間となるため、空調設備の台数を最小限に抑えることができます。
空間を効率的に使える
固定壁によるデッドスペースが生まれにくく、フロア面積を最大限に活用できます。可動式の家具や持ち運び可能な低いパーティションを使用することで、用途に応じて柔軟に区画を変更でき、人員の増減にも素早く対応可能です。
部署を超えた交流が増える
オープンな空間になることで、異なる部署の社員同士と交流する機会が増えるといったことが特徴です。廊下や給湯室、コピー機の近くなどで何気ない会話が生まれやすくなるため、情報交換などを気軽に行うことができます。
組織の状況に合わせて柔軟に対応できる
人員の増減やチーム編成の変更が発生しても、配置を素早く調整できるといった特徴があります。オープンな空間のため、デスクや什器を動かすだけで配置換えが完了し、工事費用も発生しません。
オフィスランドスケープ導入における注意点
多くの利点がある一方で、導入の際には注意が必要な点も存在します。これらを事前に把握し、適切な対策を講じることでより快適な空間を作りましょう。対策方法については、次章の”実体験に基づくアレンジ”にて詳しく解説しております。
プライバシー確保が難しい
開放的な構造のため、個人情報や機密データを扱う業務には不向きな面があります。常に他の従業員の視線が存在するため、重要な書類を広げての作業や、機密情報を含む電話対応が困難なケースもあるでしょう。守秘的な業務が多い部署では、別途対策が必須となります。
業務に集中できない場合もある
周囲の会話や動きが気になり、作業に没頭することが難しいケースがあります。特に静かな空間でないと集中できない業務や、長時間の思考が必要な作業では、開けた環境がストレス要因となる人もいるでしょう。業務内容や個人の働き方などによって、パフォーマンスに差が出やすい点は注意が必要です。
エネルギーコストに無駄が生じる
区画がないため、使用していないエリアの空調や照明を個別に制御することが難しくなります。特に、エアコンに関しては広い空間において全体を一律に管理することが多く、局所的な調整ができずにエネルギー効率が悪化する可能性があるでしょう。環境負荷や諸経費の観点からも、設備計画の工夫が求められます。
著者の実体験に基づくアレンジ
筆者は、オフィスランドスケープを取り入れた職場にて勤務経験があります。その経験を踏まえて、注意点を補うための実体験に基づくアレンジ方法をご紹介します。
ブースの設置
一人で没入して作業できる個室型ブースを配置することで、集中力が必要な業務に対応できます。また、電話やWeb会議など声を発する業務の際に使用することで、他の従業員に対する配慮にもつながります。
» Web会議や集中時にオフィスにあると役立つ個別ブースとは
筆者の職場では、電話用ブースしかありませんでしたが、Web会議用や作業用のブースを設置することで、快適性や生産性の向上に寄与するでしょう。防音性能のあるタイプを選ぶことで、周囲への音漏れも防げます。
照明・空調の細分化
筆者の職場ではフロア全体で空調を一括管理していたため、19時以降は電源が切れる仕様となっていました。従業員が操作する権限がなかったため、19時を超える残業や休日出勤の場合は空調が付けられずに業務がしづらいと感じていました。
温度や冷暖房の切り替えのみ一括で管理できる仕様にすることで、エネルギーコスト削減の効果も期待できます。
ローパーテーションの活用
筆者の職場では、ローパーテーションを積極的に活用しており、着席するとある程度のプライバシー空間を確保できるような設計になっていました。
- デスクの前(対向式)
- デスクゾーンと通路の間
- 打合せスペース
といった場所に設置されており、他の従業員を気にすることなく快適に業務を行うことができました。工事が必要な固定式と工事不要な移動式があるため、状況に応じて使い分けることで利便性が高まります。
会議室や応接室は個室化
オープンな空間の中でも、完全に閉じた個室スペースを一定数確保していました。会議室や応接室などを個室化することで、機密性の高い打ち合わせや重要な商談に対応できます。全てを開放的にするのではなく、用途に応じて使い分けることが実用性を高めることにつながります。
» おしゃれな会議室のレイアウト5選と作る際のポイントを解説
オフィスランドスケープを導入する際のシミュレーション
計画的に進めることで、導入後のトラブルや利便性の低下を防ぐことができます。ここでは、オフィス内装工事を専門とする当社が考える最適な手順をシュミレーションしましたので参考にしてみてください。
手順1:ゾーニング計画
フロア全体をどのようなエリアに分けるか大枠を決める作業を行います。
- 執務
- 会議
- 休憩
- 打合せ
- ブース
- 昼食
など、機能ごとに大まかな配置を検討しましょう。オフィスの図面などをコピーしてその上に落とし込むことで現実的なプランを計画することができます。スペースに余裕が無い場合は、不要な間仕切りを解体して広く使うなどの工夫も行うと良いでしょう。
手順2:各エリアの詳細なレイアウト
| 内容 | 基準寸法 |
| 通路幅(1人) | 600mm以上 |
| 通路幅(2人) | 1200mm以上 |
| 着席時の机と椅子の距離 | 450mm以上 |
| デスクサイズ | 1200mm×700mm程度 |
手順3:全体の配置調整
各エリアを統合して全体としてのバランスを確認します。部署間のエリア比率や位置関係、共用スペースなどへの動線も考慮しましょう。また、コピー機や収納棚、観葉植物など、細かな什器やオブジェなども漏れなく配置することで失敗を防ぐことができます。
» 什器とは?オフィスに必要な什器の種類やメーカーについて紹介
手順4:什器や設備の検討
必要な什器や設備の種類・数量をリストアップします。予算に応じて優先順位をつけ、段階的な導入も検討しましょう。検討後は再度配置図に落とし込み、必要台数を設置できるかどうかの確認も必要です。
手順5:照明やコンセントの配置検討
什器の配置に合わせた照明配置やコンセントを確保できるようにしましょう。コンセントに関しては、デスク周りだけでなく、PCを使う可能性のある打合せスペースなどにも配置が必要です。従業員へのヒアリングを行い、実態を把握した上で検討すると良いでしょう。
手順6:デザイン検討
天井、壁、床の内装材を選定し、企業イメージに合った空間デザインを検討します。デザインに関しても、従業員の意見を取り入れると良いでしょう。
» オフィスの内装工事とは?費用相場や施工事例を工事会社が解説!
手順7:工事スケジュール確認
施工期間と各工程のタイミングを確定します。業務への影響を最小化できるスケジュールを組みましょう。また、什器を工事業者から仕入れるのではなく自社で購入する場合は、納期の確認を行う必要があります。
手順8:工事中の業務体制を検討
施工期間中の業務体制を検討する必要があります。大規模な工事を行う場合は、通常業務が行えない可能性もあるため、一時的な移転やリモートワークの活用なども検討しましょう。
手順9:工事前の準備
書類や備品の移動、従業員への周知など、着工前に必要な作業を完了させます。また、社外関係者への事前周知も忘れずに行いましょう。工事前の準備は、従業員の協力が必要な作業のため、事前に役割分担などを決めておくことでスムーズに行うことができます。
手順10:工事着手~完成
計画に基づいて工事を行います。社内で工事業者とやりとりを行う担当者を決め、進捗を定期的に確認し、問題があれば速やかに対応しましょう。
手順11:什器の搬入
工事完了後は、什器や設備を搬入し、計画通りに配置します。実際の使い勝手を確認しながら、微調整を行いましょう。
計画的にオフィスランドスケープを導入しましょう
本記事では、オフィスランドスケープの概念から導入時の注意点、実体験に基づくアレンジ方法まで解説しました。オフィスランドスケープは、柔軟性に優れたレイアウト手法ですが、プライバシー空間の確保が難しいなどのデメリットも存在します。
当社では、オフィス内装工事を専門に行っており、パーテーション工事をはじめ、クロスや床の張り替えなどすべての工事に対応しています。現地調査やお見積りは無料で行いますので、ぜひお気軽にご相談ください。








