「墨出し」は工事現場の基本なので覚えておくと色々な場面で役に立ちます。クロス張り、タイル張り、電気配線、設備機器の取り付けなど。内装工事の墨出し作業に必要な道具と作業手順について紹介していきます。また、実際に体験談や失敗談などもご紹介しているので最後まで読んでください。
墨出しとは?
墨出しは工事現場の基本
「墨出し」とは内装工事の場合、床や壁、天井に設計図の線を表す作業です。工事現場に図面通りの線を出していく作業で、基本中の基本です。この位置に家具を置く、この位置に台所が設置される、この位置に扉が出来る、この高さが床の仕上がり、ここに照明が設置される、この位置に空調が設置されるなど。墨出しされた通りに物作りが進むので基本であり重要な線になります。セルフ内装工事を考えている方は知っておくと今後役に立つでしょう。
墨出し作業の手順
墨出し箇所を確認
図面を見ながら墨出し箇所を確認していきます。先に墨出しするところはどこなのか?そこに資材が置かれていないか?他の作業の邪魔にならないか?など。それぞれの問題に対して、適切な墨出し作業を行います。
墨出し道具準備
基本的に使用するのは以下の道具です。
- 図面
- ほうき
- カッター
- スケラ
- スケール(メジャー)
- 鉛筆、建築用シャープペン2.0mm
- 墨つぼ、チョークライン
- 建築用マッキーペン
- 墨出しレーザー
- レーザー用三脚
- レーザー用クランプ
- ヘッドライト
- 差し金
墨出し前にやるべき作業
最初は床の墨出し箇所の清掃。ほうきでゴミを掃除、ほうきで掃けない付着した物はスケラやカッターを使用して除去します。墨出し箇所をキレイにしてから墨を打っていきます。理由は墨が残りやすいからです。
墨出しの手順
- 図面の寸法通りに印を出す
- 鉛筆や建築用のシャープペンで両端に小さく印をつける
- 両端の印を墨つぼやチョークラインを使用して墨を打つ
- 一人が先端を持って片方が墨つぼ本体を持つ
- 糸を持ち上げ弓のように弾くことで一瞬で線が出る
墨出し時の注意点
- 墨つぼの糸が逃げないよう指に一周させて目一杯引っ張りましょう。理由は線が二重になったり、濃くなったり薄くなったりムラが出てしまうのを防ぐためです。
- 壁の墨出しはレーザーとレーザー用三脚を使用しましょう。
- 墨出しした後は図面に蛍光ペンで線を引いておきましょう。図面を見返した時に見やすくて手戻り作業や抜け漏れの確認がしやすいからです。
- 天井付近に墨を出す場合は、レーザー用クランプ(ブラケット)を使いましょう。
墨出しの豆知識 メーター墨
メーター墨とは主に床の仕上げ面から1メートルの位置に出す墨のことです。FL+1000と表現することが多く、それを基準に床の高さや電気設備、空調や水道配管などの高さ調節などしていきます。例えば、図面にFL+500mmと表記されていれば、メーター墨から500mm下がった位置に墨を出します。FL+100mmならメーター墨から900mm下がったところに墨を出します。FL+1500mmならメーター墨から500mm上がったところに墨を出していきます。
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障害物や他業者の資材がある場合は逃げ墨を出す
障害物や他の業者さんの資材、その他事情があって目的の墨が出せない場合は「逃げ墨」を出します。逃げ墨は目的の墨が出せない場合に50cmや1m離れたところに出す墨です。逃げ墨を出す時に注意するのは、他の墨と間違えないように目的の線からいくら離れているのか明記しておくことです。また逃げ墨から寸法を出す際は目的の墨から50cmか1mか、どれだけ離れたのか計算しながら寸法を出してください。
図面と現場チェック
一通り墨出しが終わった後は図面と現場の墨がちゃんと合っているか確認しましょう。以下のチェック項目を参考に見て回ります。
- 寸法通りに墨が出ているか?
- 他の墨と重なっていないか?
- まっすぐな線になっているか?
- 薄くなっていないか?
- 滲んでいないか?
- 消されていないか?
- 前と後ろ、左右が逆になっていないか?
小さなズレが大きな違いになることもあるので気を付けてください。
片付け
使用した道具を元の場所、箱、ケースに戻します。現場では他の業者さんが似たような道具を使っていることが多いので間違えないようにしましょう。道具一つ一つに持ち主の名前を書いたり、会社のステッカーを貼っておきましょう。
墨出し作業のポイント
分かりやすく見やすい線
墨は分かりやすく見やすくてきれいな線が理想的です。理由は線を探す必要がなく作業時間が短くなるから。墨出し前にキレイに掃除をすると墨がキレイに映ります。キレイに映った墨は簡単には消えません。見る側も気持ちがいいんです。作業が早くなれば早く仕事を終えて早く帰れる。休憩時間も多くとることが出来る。お客様からも信頼を得られます。分かりやすくて見やすい線を出すことはみんなにとって良い事なのです。
間違いはすぐ修正
もし墨出しで間違った場合はすぐに修正しましょう。例えば線が二重になった場合は正しい線に小さくに○印、間違っている線に小さく☓印をしましょう。寸法の読み間違えなどで10cm以上間違えた場合は建築用のマジックペンで☓印すると分かりやすいです。間違ったまま墨出しすると仕上がりの寸法が変わったり、後々大きなトラブルになりかねません。
墨出し作業体験談
筆者は建設関係の仕事を8年ほど続けており墨出し作業はよくやっています。今までの経験、体験談や失敗談を紹介していきます。
墨出し場所に重い資材があった
墨出ししたいところに大きくて重い資材が置かれていました。ここは今日中に墨を出さないと次の工程に間に合わない場所です。しかし、この日に限って担当の職人さんがいない。どうしましょう?こんなときは逃げ墨を出しますが、資材が大きすぎて地面に逃げ墨を出すスペースすら有りません。次の手段は壁や柱に逃げ墨を出すことです。しかし、今度はボード貼りの真っ最中で逃げ墨を出すことが出来ません。
手が真っ黒になった
作業はじめたては汚れたくないので手袋をして作業してますが、作業に不都合が多くなってくるので手袋を外し、素手でやることになります。例えば、墨壺の糸が掴みにくくなるといった不都合があります。墨出しをする時に糸を引っ張って弾かないと行けないのですが、手袋をしていると糸を掴みにくくなってしまいます。糸をつかめなくて中途半端に墨が地面について地面を汚しちゃう事があります。
10cmルールで失敗
長さや距離を測る時にメジャーを使います。メジャーを使って測る時に10cmを0として測ることがあります。例えば、1m測りたかったら1m10cm、2m測りたかったら2m10cmなど。これをやる理由は「正確に測るため」です。ものづくりは1cmでもズレると大きな不具合が起きる世界なのです。実際に建設現場でも同じことをして長さや距離を測っていきますが、ずっと作業をしていると疲れてきます。疲れてくると10cmずらして測っていることをつい忘れてしまうことがあります。それに気づいたのは図面をチェックしているときでした。
墨出しの訂正作業に2時間ほどかかり先輩に報告すると「次からこまめに図面をチェックしなさい」と注意を受けました。それからは常に図面をチェックしながら作業するようにしています。
リフォーム現場の墨出しで失敗
二十歳の頃、初めてリフォーム工事をした時の話です。リフォーム工事をする際に気をつけるのは、工事箇所以外は絶対に傷つけてはいけない事です。道具を置いたり作業をしなければいけない場合は養生をします。養生とはベニヤ板やブルーシート、透明な厚手のシートなどで床や壁が傷つかないように守ることです。
ずっと考えて悩んでいても作業は進まず時間だけが過ぎていくというまずい状況になりました。一人で考えてパニックになっていると先輩からお叱りを受けました。「何やってるんだ!早く仕事しろ!分からなかったら聞きなさい!」そこから分からないことを先輩に聞いて相談しました。
【内装工事現場】墨出しとは?必要な道具と作業手順【まとめ】
墨出し作業は工事現場の基本です。現場の状況を確認し、どこを優先的に墨出しするのか確認していきましょう。墨出ししたら図面と現場をチェックして抜け漏れがないか確認。このとき図面通りの寸法になっているか慎重に確認してください。実際に自分で内装工事やDIYをしようと考えた方は、今回の記事の他にも沢山の記事を読んだと思います。準備する道具や作業手順、気をつけるべきことなど沢山の情報を手に入れていると思いますが、自分で出来るかどうか不安になる方もいると思います。自分だけで悩まずに誰かに話してみましょう。内装工事の難しい作業に関してはオフィスボールにご相談ください。