社員の意識統一に重要なのがインナーブランディングです。社員に組織の考え方が浸透すると、同じ目標に向かいやすくなり、自主的な行動を促せます。実は自社のブランド力を上げるための要になるのがインナーブランディング。本記事では、インナーブランディングのメリットや成功のコツなどを詳しく解説していきます。
インナーブランディングとは
ブランディング活動には大きく2種類あり、違いは以下の通りです。
<2種のブランディングの違い>
ブランディングの種類 | 対象 | 概要 |
インナーブランディング | 社内(社員) | ■自社の理念やビジョン、商品やサービスのブランドを社内に浸透させるための活動
■アウターブランディングの土台 |
アウターブランディング | 社外(取引先や顧客) | ■自社の理念やビジョン、商品やサービスのブランドを社外(市場)に浸透させるための活動 |
インナーブランディングが重要な理由
次に、インナーブランディングが重視される理由を確認しておきましょう。どの業界においても、昨今では似た機能の商品がたくさんあります。顧客に選ばれる企業になるためには、企業や商品のブランド力を強化し、競合他社と差別化していくことが大切です。
社員が同じ価値観を共有できていると、社外へのブランド浸透につながるのはもちろん、社員のモチベーションアップにもつながります。
インナーブランディングのメリット5選
続いて、自社のブランド理解が深まることで得られるメリットを5つ解説していきます。
メリット1:生産性が上がる
まず、インナーブランディングには企業の生産性アップが期待できます。社員が明確かつ統一された目的意識を持つことにより、一体感を持って仕事に従事しやすくなるからです。
自社の考え方が浸透すると、各々が目的達成に必要なことを自主的に考えやすくなりますし、連帯感のある活動がしやすくなります。それらの積み重ねの結果、企業の生産性向上にもつながります。
メリット2:エンゲージメントが高まる
自社の考え方が価値あるものと認識されれば、社員の自社へのエンゲージメントが高まり、会社をより良くしようと社員が自発的に行動しやすくなります。
社員が自社に対して抱く「思い入れ」や「愛着心」のこと。
例えば、より働きやすくするために新しい勤務スタイルやオフィスデザインの提案など、社員から前向きな提案が多い企業はエンゲージメントが高いと言えるでしょう。社員自ら提案ができるのは、自社の方向性を理解したうえで必要なことを考えている証拠。さらに、会社が提案を検討してくれると信頼しているからこそできる行動です。
メリット3:コンプライアンスリスクが軽減する
また自社の考え方が社員に浸透すると、コンプライアンスのリスクが軽減します。というのも、エンゲージメントとロイヤリティには相互関係があるからです。
社員が会社に対して抱く「忠誠心」や「帰属意識」のこと。
インナーブランディングによって社員のロイヤリティが上がると「会社を守ろう」という意識が高まり、自然と社内規定や守秘義務の遵守をするようになるのです。
メリット4:社員定着率が向上する
さらに、社員のエンゲージメントやロイヤリティの向上は、会社への定着率向上にもつながります。定着する社員が多いほど企業のブランドが社内に浸透し、社内教育の質も上がります。
つまり、社員の定着率が高いと、即戦力として活躍できる人材を短期で育てやすくなります。教育コストを下げ、企業全体の生産性を上げるためにもインナーブランディングが大切です。
メリット5:アウターブランディングの土台ができる
インナーブランディングが重視されているのは、社外に向けたブランディング活動の土台になるからです。市場へブランドを浸透させるためには、社員が理解できていなければそもそも発信ができません。
≫アウターブランディングとは?成功を叶える実施手順や実例を紹介!
インナーブランディング成功のコツ3つ
インナーブランディングを行うときに抑えて欲しいコツも解説していきます。
コツ1:中長期的な計画を立てる
まず、インナーブランディングは中長期的な計画を立てるのが大切です。ブランディングは短期間で成果が出るものではありません。とはいえ、経過を把握しておくのは大切なので、中長期計画の中に短いスパンでの目標設定も組み込みましょう。ブランドの軸は変えずに微調整を繰り返すと、社内への浸透が効率的に行えます。ブランドイメージの浸透には時間がかかるため、粘り強くPDCAを回していってください。
コツ2:浸透度を可視化する
インナーブランディングを行ううえで、浸透度を可視化するのも大切です。さまざまな施策を行っても、効果の有無を判断できないと今後の改善に役立てられません。そして、社員の現状を把握しないと適切な施策を講じるのも難しいでしょう。インナーブランディングでは「エンゲージメントサーベイ」が有名な指標です。
社員が会社や商品に対してどれくらい愛着心を持っているかを調査すること。
可視化は独自アンケートでもできるため、浸透度を測る指標を決めたら定期的に調査を行いましょう。インナーブランディングに対する評価が分れば、価値観に共感できない社員を意図せず排除してしまう事態も防ぎやすくなります。
コツ3:自社に合う手法を活用する
そして、インナーブランディングは自社に合った手法で行いましょう。手法は以下の通りたくさんあります。
<インナーブランディングに役立つ手法例>
手法例 | 概要 |
社内報 | ■定期的な発信で最新の自社情報を知れる
■自部署以外のことを知れるため、企業の方向性を理解したり、深掘りしたりするきっかけになる |
社内ポスター | ■常に目に付く場所に貼れると、内容を意識させやすい
■定期的にデザインを変えると意識を向けやすくなる |
動画や本 | ■企業の生い立ちや企業理念を書籍や動画にまとめる
■深く伝えるために有効 ■アウターブランディングにも活用できる |
クレド(心がけや行動指針) | ■クレドにブランド理念の要素を盛り込むと常に意識でき、ブランドも刷り込める
■クレドを意識づける工夫が必要 |
社内SNS・ホームページ | ■社員のみが見れるSNSやサイトを使い、自社の情報を発信する
■各自が好きなタイミングで確認できるため効率が良い |
ワークショップ | ■役職に関係なく意見交換をする
■他者の意見を聞くと認識のズレに気づけたり、魅力を発見したりできる |
表彰制度 | ■社員のモチベーションアップにつながる
■表彰されている人を見て、自分にもできるかもと期待させられる ■表彰が企業理念に沿った行動をした人であるのを認知させる |
紙かWebか、誰が発信するのかなども手法を決める要素です。例えば、社長メッセージであれば「見なくてはいけない」義務を感じる人は多いため1度は見るでしょうが、1回きりでは記憶には残りにくいでしょう。自社の理念やカラーを全社員に浸透させるには、どの手法が効果的かを考えて選んでください。複数の手法を組み合わせるのが効果的です。
インナーブランディングを意識したオフィスデザイン事例
最後にインナーブランディングを意識したオフィスデザイン事例を紹介します。
事例1:コーポレートカラー(黒)をアピールしたオフィス
まず、オフィスデザインにコーポレートカラーを取り入れるのが視覚的に分かりやすい工夫です。
こちらの例はコーポレートカラーが黒の企業さまで、壁のパーテーションや床のタイルに黒を取り入れています。オフィス全体が重い印象にならないように適度に白を挟んで明るさも保っています。壁や床はオフィスにいるときに常に視界に入りやすいため、企業のカラーを社員に印象付けるためには効果的です。
事例2:コーポレートカラー(緑)をアピールしたオフィス
こちらはコーポレートカラーが緑の企業さまの事例です。パーテーションに緑を取り入れることで、緑が目に入り、コーポレートカラーを社員に印象付けています。
≫【事例多数!】おしゃれで機能的なオフィスパーテーションの選び方
まずは「うちの会社は◯色」と印象付けられるようなオフィスデザインにしてみてはいかがでしょうか。
事例3:一体感を得られるオフィス
こちらは会議室の仕切りにガラスパーテーションを用いている事例です。ガラスにすることで室内の状況が外から分かりやすく、各々の場所で仕事をしているのが分ります。
≫オフィスをガラス張りにするメリットとプライバシー確保術5選
インナーブランディングによって同じ価値観を共有していれば「あの人が頑張っているから自分も頑張ろう」と仕事へのモチベーションアップにもなります。集中力の維持にはある程度、視線や音を遮る対策は必要です。しかし、特に中小企業なら「各々がどこで・何をしているのかが分かりやすいオフィス」は仕事の一体感を演出する要素になるでしょう。
オフィスデザインもインナーブランディングに役立てよう!
インナーブランディングのメリットや成功のコツなどを解説しました。インナーブランディングはアウターブランディングを成功させるために欠かせません。まずはブランドの社内浸透を目指しましょう。