ダイバーシティとは?意味やメリット、事例までまとめて解説

少子高齢化や働き方改革が進む中、「ダイバーシティ」という言葉を耳にする機会が増えました。しかし、言葉は知っていても意味や必要性、企業活動との関係まで正しく理解できていない方は多いのではないでしょうか。本記事では、ダイバーシティの基本から経営メリット、課題、具体的な取り組み事例までを体系的に解説していきます。

 

ダイバーシティとは?【用語解説】

ダイバーシティとは?【用語解説】

まずはダイバーシティの言葉の定義や並列されやすい言葉との違いを知り、ダイバーシティの理解を深めていきましょう。

 

ダイバーシティの種類

ダイバーシティ(Diversity)とは「多様性」という意味を持ち、性別・年齢・国籍・価値観など、さまざまな属性の人々が共存している状態を指します。ダイバーシティの属性には「表層的」「深層的」の2つがあります。

 

<ダイバーシティの属性の種類>

項目 表層的ダイバーシティ 深層的ダイバーシティ
意味 ■外見から判断しやすい属性
■自分の意思で変えられない・変えにくい属性
■外部から判断しにくく、個人の内面に関わる属性
具体例 年齢/性別/容姿/国籍/人種/民族/障がいの有無 宗教/価値観/職務経験/スキルや能力/趣味趣向/ライフスタイル/ワークスタイル/コミュニケーション傾向
組織への影響例 ■採用
■制度設計
■イノベーション
■円滑な業務推進

 

外見だけでは判断できない深層的ダイバーシティは、把握が難しい属性です。しかし、表面的な理解だけではダイバーシティ推進はできません。個人の価値観や思いも汲み取り、深いところの違いも認め合い活かすことが、企業のパフォーマンス向上には大切です。

 

インクルージョンとの違い

インクルージョン(Inclusion)は「包括」「包摂」を意味し、互いの違いを尊重し合い、各自の能力を最大限に発揮できる状態を指します。

 

これらの言葉とダイバーシティとの違いを説明するために、よく用いられるのが、ダイバーシティ・コンサルタントのヴェルナ・マイヤーズ(Vernā Myers)氏の言葉。

 

ダイバーシティが「多様な人々をパーティーに招待すること」なら、インクルージョンは「招待された人々が自由に踊り、楽しめるようにすること」のようなイメージです。

 

その人の個性を活かせなければ、多種多様な人材を集めても効果は半減してしまいます。なので、多種多様な人材を集めるだけでなく、個性を活かせる状態まで目指す「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」の考え方が経営視点では大切にされています。

 

エクイティとの違い

エクイティ(Equity)とは「公平性」のことで、個々の状況や背景に応じて適切なサポートや環境整備を行って、公平な機会を保証すること。また、ダイバーシティ(Diversity)とエクイティ(Equity)、インクルージョン(Inclusion)の頭文字をとって「DE&I」という概念もあります。

 

まず、先ほどのダンスパーティーに例えると、ダイバーシティが「多様な人々をパーティーに招待すること」なら、エクイティは「出発地点がどこでも、どこからでもダンスに参加できる交通手段を確保すること」のようなイメージです。

 

つまり、DE&Iは「多様な個性を尊重し、誰もが公平な機会を得て、能力を発揮できるようにする」といった考え方です。DE&Iを目指すことで、従業員同士の競争力向上によるイノベーションの創出やモチベーションアップなど、企業成長に良い効果が期待できます。

 

SDGsとの関係

SDGsとダイバーシティには深い関わりがあります。まず、人類が地球で暮らし続けるために、さまざまな課題に対して2030年までに達成すべき目標を国連が定めており、その目標をSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)と呼んでいます。

 

SDGs▼

SDGs

出典:日本ユニセフ協会

 

SDGsのなかに「ダイバーシティ」という言葉はないものの「5.ジェンダー平等を実現しよう」「8.働きがいも経済成長も」「10.人や国の不平等をなくそう」などはダイバーシティに関わる目標です。

 

また、SDGsは「誰ひとり取り残さない」をキーワードに挙げており、その点からも、企業にとって多様な人材が互いに認め合い、活躍できる環境作りは欠かせないと言えるでしょう。

 

» SDGsとは?企業も取り組む手軽に始められる方法と4つの事例

 

ダイバーシティが重視されている背景

ダイバーシティが重視されている背景

次に、日本でダイバーシティが注目されている主な背景を4つ順番に解説していきます。

 

背景1:生産年齢人口の減少

 

まず、日本人の15歳~64歳の人口、いわゆる「生産年齢人口」が年々減少していることが挙げられます。総務省の統計によると、グラフの紫色部分の生産年齢人口が1995年をピークに減少しています。

 

生産年齢人口の推移▼

生産年齢人口の推移

出典:総務省

 

現在でも「人手不足」という言葉を耳にしますが、今後の推計によると、さらなる生産年齢人口の減少が予測されています。こうした状況を踏まえると、従来の採用ターゲットだけに依存せず、多様な人材が活躍できる環境づくりが重要です。

 

背景2:市場のグローバル化

市場のグローバル化も、ダイバーシティが求められる背景の一つです。企業活動のグローバル化が進み、海外市場や外国人顧客を意識した事業展開が当たり前になりつつあります。

 

また、日本の外国人労働者数は年々安定して増加しており、厚生労働省の直近公表分(2024年)では過去最多を記録したと報告されています。

 

外国人労働者数の推移▼

外国人労働者数の推移

出典:厚生労働省

 

異なる文化や価値観を理解できない組織では、海外取引や多国籍チームでの業務が円滑に進みません。一方、多様なバックグラウンドを持つ従業員がいる企業では、幅広いニーズを踏まえた柔軟な対応がしやすくなります。

 

市場がグローバル化しており、国内の外国人労働者も増えている昨今では、市場の中で競争力を維持するためにも、多様性を前提とした組織づくりが重要です。

 

背景3:働き方に対する考え方の変化

ワークスタイルに対する価値観の多様化も、ダイバーシティ推進を後押ししています。終身雇用や長時間労働、男性が働き女性が家庭を守るといった考え方は、すでに主流ではありません。

 

共働き世帯の増加も相まって、仕事と生活の両立を前提とした働き方が一般化し、従業員一人ひとりのワークライフバランスを尊重する姿勢が求められています。

 

共働き等世帯数の推移▼

共働き等世帯数の推移

出典:内閣府

 

著者が勤めていた企業では、新型コロナウイルスの影響で在宅勤務が定着した後、感染状況の落ち着きに合わせて、徐々に出社を重視する方向へ空気が変わっていきました。

 

しかし、在宅勤務を好む従業員も多く、結果として若い世代を中心に退職を選ぶ人が出てきました。この経験から、働き方に対する価値観は世代やライフステージによって大きく異なると実感しています。

 

つまり、多様な働き方を受け入れる姿勢を持つだけでなく、従業員の実情を踏まえ、柔軟かつ迅速に制度へ反映していくことが、これからの企業には欠かせません。

 

» ワークライフバランスとは?メリットデメリットや具体的な取り組みを解説

 

背景4:消費ニーズの多様化

消費ニーズの多様化も、ダイバーシティが重視される背景の一つです。価値観やライフスタイルが多様化した現在、性別や年齢といった単純な属性だけでは、消費者の本質的なニーズを捉えきれなくなっています。

 

大量生産・大量消費を前提とした画一的な商品やサービスでは、選ばれにくくなっている業界も増えています。(参照:消費者庁「消費者意識基本調査」

 

実際、家族構成や働き方、文化的背景の違いにより、求められる商品やサービスの在り方は細分化しています。こうした変化に対応するためには、ダイバーシティ経営を推進し、多角的な視点を事業に取り入れることが、これからの企業競争力を高める鍵と言えます。

 

ダイバーシティ経営を進めるメリット3選

ダイバーシティ経営を進めるメリット3選

続いて、ダイバーシティ経営によって期待される代表的なメリットを見ていきましょう。

 

メリット1:多様な人材の獲得

ダイバーシティ経営を進めるメリットの一つが、多様な人材を確保しやすくなる点です。少子高齢化や人手不足が進む中、従来と同じ採用条件や働き方だけでは、必要な人材を確保することが難しくなっています。

 

そのため、柔軟な働き方や多様な価値観を受け入れる姿勢を示し、これまで採用対象になりにくかった層にも企業の魅力が伝わる工夫をしなければなりません。

 

<柔軟な働き方や多様な価値観を受け入れるための制度や考え方の例>

制度や考え方の例 概要
意見箱の設置 ■異なる価値観を拾い上げられるように、声を上げやすい環境を作る
副業・兼業の容認 ■本業に支障が出ない範囲で、個人の挑戦やキャリア形成を認める
フレックスタイム制の導入 ■始業・終業時間を固定せず、従業員の生活リズムに合わせて調整できるようにする
成果の出し方を一つに決めない ■長時間働く人だけを評価するのではなく、効率や工夫も評価軸に含める
短時間勤務・時差勤務の継続利用 ■育児・介護期間が終わっても、状況に応じて柔軟に使える設計にする
在宅勤務・ハイブリッド勤務の選択制 ■全面在宅か出社かを一律に決めず、業務内容や本人の希望に応じて選べるようにする
ライフイベントをキャリアの断絶と捉えない ■育児・介護・病気などを「離脱」ではなく「一時的な変化」と考える

 

異なる事情を持つ人材が、それぞれ働きやすくなるような制度や風土を作っていきましょう。従業員の声に耳を傾け続け、制度などを充実させていくことで「人材の間口の広がり」「慢性的な人手不足の緩和」「将来を見据えた人材確保」などにつながりやすくなります。

 

メリット2:ブランド力の向上

ダイバーシティ経営に取り組む姿勢は、企業イメージやブランド力の向上にも寄与します。個人の多様性を認め、働きやすい環境づくりに取り組んでいる企業は、社会的な評価を得やすくなるからです。

 

近年では、働きやすさや企業姿勢を重視して転職先を選ぶ人も増えています。そのため、ダイバーシティへの取り組みは、採用活動においてもプラスに働く可能性があります。また、取引先や顧客から見ても、社会課題に向き合う企業として信頼を得やすくなるでしょう。

 

こうした評価の積み重ねが、中長期的には企業ブランドの向上につながり、競争力を支える要素の一つとなります。

 

» オフィスブランディングとは?成功の鍵と進め方4ステップ

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メリット3:イノベーション創出の活性化

ダイバーシティ経営を進めることで、組織内に多様な視点が生まれ、新たな発想やイノベーションにつながりやすくなります。異なる経験や専門性を持つ人材が関わることで、物事を一方向からだけでなく、複数の角度から捉えやすくなるためです。

 

著者が以前勤めていた企業でも、正社員に限らず、他社から一定期間関わる専門人材と協働する機会がありました。特定分野に深い知見を持つ外部の視点が加わることで、商品理解が深まり、顧客の状況に即した提案ができる場面が増えていきました。その結果、社内だけでは生まれにくかった企画や発想につながることもありました。

 

多様な立場や専門性を受け入れることは、単なる人材の寄せ集めではなく、組織の思考の幅を広げる取り組みと言えます。こうした環境づくりが、継続的な価値創出を支える土台となります。

 

ダイバーシティが抱える課題

ダイバーシティが抱える課題

ダイバーシティ経営は多くのメリットがある一方で、進め方を誤ると組織内に混乱や不満を生む可能性もあります。多様な人材が集まるからこそ生じやすい課題をあらかじめ理解し、適切に対応していくことが重要です。

 

<ダイバーシティが抱える主な課題>

課題 概要
無意識の偏見による差別やハラスメント ■性別・年齢・国籍などに対する無意識の先入観が、評価やコミュニケーションに影響を与える場合がある
価値観や考え方の違いによる摩擦 ■働き方や仕事観の違いから、意見の衝突やストレスが生じやすくなる
公平性への不満 ■配慮や制度が「特別扱い」と受け取られ、不公平感につながることがある
コミュニケーションの難しさ ■言語・文化・前提知識の違いにより、意思疎通がうまくいかない場面が生じる
チームワークの低下 ■多様な意見の調整に時間がかかり、意思決定が遅れることがある
制度と現場の乖離 ■制度は整っているものの、実際には使いにくく形骸化してしまうケースがある
管理職の負担増加 ■多様な事情への配慮や調整が、現場管理者の負担になる場合がある

 

ダイバーシティ経営には課題が伴うケースがありますが、いずれも多様な人材が関わるからこそ生じやすいものと言えます。課題があるからといって取り組みを止めるのではなく、あらかじめ想定したうえで、制度や環境、運用を少しずつ調整していきましょう。

 

ダイバーシティ経営の推進手順

ダイバーシティ経営の推進手順

ダイバーシティ経営を進めるための手順を簡単に紹介していきます。ダイバーシティ経営を中長期的かつ継続的に進めていくためには、場当たり的な施策ではなく、全社的な取り組みとして位置づけることが重要です。

 

経済産業省が示す「ダイバーシティ2.0 行動ガイドライン」では、ダイバーシティを経営戦略の一部として捉え、段階的に実行していく考え方が整理されています。

 

ダイバーシティ実践のための7つのアクション▼

ダイバーシティ実践のための7つのアクション

※企業単体におけるイメージ図

 

まず重要なのが、経営トップのコミットメントです。ダイバーシティを単なる人事施策ではなく、企業の成長戦略として位置づけ、経営層自らがその方針を示すことが大切です。そのうえで、方針を実行に移すためのガバナンス体制を整えることが土台となります(視点1)。

 

次に、管理職と従業員が主体となって現場で取り組むことも欠かせません(視点2)。制度や方針があっても、職場レベルで理解され、日々の業務に反映されなければ形だけの制度になってしまいます。管理職が率先して行動し、従業員一人ひとりが自分ごととして関われる状態をつくることが重要です。

 

さらに、ダイバーシティへの取組は社内に留まらず、社外に発信することもポイントとされています(視点3)。取引先や求職者、資本市場などのステークホルダーに向けて方針や取組内容を伝え、評価を受けることで、継続的な改善につなげていきます。

 

このように、ダイバーシティ経営は「経営が示す → 現場が動く → 社会とつながる」という流れを繰り返すことが、持続的な取組につながります。

 

ダイバーシティ推進における環境整備の事例

ダイバーシティ推進における環境整備の事例

ダイバーシティを進めるためには、オフィスの環境づくりも大切です。最後に、多様な人材に対応しやすい環境事例を紹介していきます。

 

事例1:女性の働きやすさを考慮した会議室

事例1:女性の働きやすさを考慮した会議室

機能性を維持しつつ、女性への配慮をするなら、部屋の仕切りはガラスがおすすめです。狭く、周りから遮断されている会議室は圧迫感がありますし、職場の雰囲気や人数構成によっては、閉鎖的な空間を負担に感じる従業員もいます。すりガラスを用いれば、完全に遮断しないものの、視線は十分に遮れます。

 

» ガラスパーテーションとは?価格や使い方を解説【施工事例アリ】

 

働きやすさを考えるうえで、業務に集中できる環境や、周囲の視線を適度に遮れる空間づくりは大切です。ただし、従業員の男女比や職場の雰囲気によっては、女性への配慮も欠かさず検討してください。

 

事例2:障がいのある従業員を考慮した工夫

事例2:障がいのある従業員を考慮した工夫

障がいのある従業員も働きやすい環境にするためには、移動のしやすさや分かりやすさへの配慮が欠かせません。こちらの例は、通路幅を広く確保し、パーテーションの色分けやサイン工事を通じて、目的地や動線が直感的に理解できる環境を目指しています。

 

こうした配慮は、特定の人だけでなく、すべての従業員にとって使いやすいオフィスづくりにつながります。

 

» オフィスにおける適切な通路幅とは?基準や検討ポイントを解説

 

事例3:外国人の働きやすさを考慮

事例3:外国人の働きやすさを考慮

外国人従業員が安心して働くためには、言語や文化の違いによる不安を減らす工夫が重要です。当社では、ガラスパーテーションによる見通しの良い空間づくりに加え、多言語表記やピクトグラムを用いたサイン工事にも対応可能です。

 

視覚的に分かりやすい表示を取り入れることで、言葉の壁を感じにくい職場環境を実現できます。多様な人材が集まるオフィスでは、こうした環境整備が業務やコミュニケーションを円滑にする一助になります。

 

ダイバーシティを推進して誰もが働きやすい企業にしていこう!

ダイバーシティを推進して誰もが働きやすい企業にしていこう!

ダイバーシティについて、言葉の意味や注目されている背景、メリットなど詳しく解説しました。多様性と一言にいっても、多様な人材を受け入れる姿勢だけでなく、その力を発揮できる環境を整えることが大切です。制度や方針があっても、実際の職場環境が伴わなければ、ダイバーシティは形だけのものになってしまいます。

 

施工型パーテーションによる空間の最適化や、サイン工事などを通じた分かりやすい環境作りは、一部の人のためだけでなく、結果としてすべての従業員にとって働きやすいオフィスにつながります。ダイバーシティを経営に組み込むためにも、自社の働き方や人材構成に合わせたオフィス環境づくりを検討してみてはいかがでしょうか。

 

 

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