「本当にこの金額を支払わないといけないの?」「本当にこの内容の工事を行わないといけないの?」「原状回復工事はいつから始めればいいの?」このように原状回復工事にまつわる悩みには、さまざまなものがあります。たしかに頻繁に行う工事でもなく、専門知識が必要なため、悩みが増えてしまうのは仕方ないかもしれません。そんな悩みを解決するために、原状回復工事の範囲・内容・費用・工期などについて解説します。トラブルなくスムーズに進めるために、ぜひ原状回復工事の概要を掴んでみてください。
» 内装工事の流れ・ステップ・工事工程を費用も含め5分で解説
原状回復工事とは
原状回復工事とは、入居時の状態に戻すために行う工事です。ガイドラインで定められている基準でもあり、オフィス移転の際には必ず登場します。新築で入居した物件を新築の状態に戻すのは難しいため、契約書の内容を基に必要な部分の交換・撤去などを行います。例えば、オフィス・店舗では、入居者の都合で設置したLGS・パーテーションなどの間仕切り、照明や空調などの設備を撤去します。ほかにも空調のリモコン位置を変更している場合は、元通りにしなくてはいけないことがほとんどです。
原状回復工事の範囲
基本的に、次の3つの区分により工事範囲を決めていきます。
区分 | 内容 | 例 | |
①-A | 経年劣化 | 自然的な劣化・損傷 | 日差しによるクロス・畳の変色
耐用年数が経過した設備 壁や床の色あせ |
①-B | 通常消耗 | 通常の使用による損傷 | 机・タンス・冷蔵庫などを置いた床のへこみ |
② | 特別消耗 | 借主の故意・過失・通常を超える使用による損傷 | 煙草による黄ばみ
結露の放置によるカビ 雨によるフローリング・畳の劣化 飲食物をこぼしたカーペット |
参考元:原状回復をめぐるトラブルとガイドライン|国土交通省住宅局
基本的に①-A・①-Bはオーナーに工事・費用負担の義務があるとし、②に関しては借主に義務があるとされています。しかしオフィス・店舗は特約を結んでおり、通常よりも広い範囲の原状回復工事を求められることが多いです。
原状回復工事の内容
物件によって工事内容が変わりますが、以下の表の内容のものを行います。
内容 | 例 |
解体 | 間仕切りの撤去(LGS・パーテーション)・造作物の撤去・解体 |
塗装 | 天井・壁・建具の塗装 |
クロス | クロスの張り替え、パテ補修 |
床 | タイルカーペットの張り替え |
電気 | 床下などの配線(電気・電話・LAN)、OAタップの撤去、照明器具の交換 |
美装(クリーニング) | 必要な箇所のクリーニング(窓・床など) |
はじめにエレベーターや共用部分に養生をし、資材や廃棄物の運搬で傷つかないようにします。その後、内装解体や撤去を行い、元の状態に戻していきます。入居者の都合で設置したパーテーションは撤去し、元の間取りに復旧しなくてはいけません。ほかにも電気・電話・LAN配線などの撤去も必要です。OAフロアやOAタップを導入している場合は、OAフロアやOAタップの撤去も行います。もちろん持ち込んだ家具・備品の撤去も行いましょう。このように必要箇所の工事を行い、最後にクリーニングを行えば完工です。机・家具などの下は意外に汚れているので、クリーニングも欠かせません。
原状回復工事を行うタイミング
マンション・アパートのような住居は賃貸契約終了後、オフィス・店舗の場合は賃貸契約終了前に原状回復工事を終わらせなければいけないことがほとんどです。とくにオフィスでは膨大な時間と労力がかかるので、事前に契約内容に目を通しておきたいところです。また、賃貸契約期間内に完工しないと契約期間終了後も賃料を払わなければいけないケースがあります。
例えば、LGSやパーテーションなどによる間仕切りが多いと、工期が長くなり、契約終了までに完工できないかもしれません。工事のタイミングが遅いと無駄な支出が増え、オーナーとのトラブルに繋がりやすくなってしまいます。工事が遅れてしまうと借主側のデメリットが多くなるので、余裕のある工事計画をたてるのがおすすめです。
原状回復工事にかかる費用
内装の状態・増設した設備・劣化の程度によって変わりますが、目安は以下の表の通りです。
規模 | 1坪あたりの目安費用 |
100坪未満 | 2~5万円 |
100坪以上 | 5~10万円 |
具体的な費用は、相見積もりをとり確認することをおすすめします。おおまかな費用を把握でき、業者による費用の違いも理解できます。しかし原状回復ではB工事が多いため、すでに指定業者がいて、費用が高額になりがち。そのため、はじめに工事区分の確認が大切です。
指定業者がある場合でも、オーナーによっては借主側で業者の選定を認めてくれる場合があります。しかし、この時も注意が必要で、指定業者ではない場合は契約内容通りの工事を行えず、追加工事をする必要がでてくることもあります。追加工事は工期の遅れに繋がるため、信頼できコミュニケーションをしっかり取れる業者を選ぶことも重要です。借主が業者を選定するときは費用だけではなく、工事をしっかり行える業者なのか見極めることも重要なのです。また見積もりをもらったら、内容を確認して、過不足がないか確認するといいでしょう。
» 内装工事の見積もりの見方と工事費用を抑える5つのポイント
原状回復工事にかかる工期
原状回復工事にかかる工期の目安は、以下の表を参考にしてください。
規模、状態 | 期間 |
小規模で工事内容も少ない | 1週間 |
100坪未満(一般的な工数) | 2週間~1ヵ月 |
100坪以上
小規模でも設備などが多い |
1ヶ月以上 |
上記の表にある工期はあくまで目安で、現地調査を行わないと詳しいことはいえません。またオーナーとの打ち合わせもあるので、2ヶ月前にはお問合せをすると安心です。また音のでる作業や塗装のように匂いのでる作業は、他のテナントとの兼ね合いで平日や日中に工事を行えないこともあります。このような場合、夜間・休日に作業する必要があり、工期が少ないと同じタイミングで複数業者が作業しなければいけないこともあります。複数業者が同時に作業を進めると作業効率が下がり、工期が延びてしまう場合があります。
原状回復工事のポイント
原状回復工事を行う前に、指定日時に工事を行える業者がいるか確認しましょう。3月・シルバーウィーク・ゴールデンウィークなどは業者を確保しにくことがあります。また解約予告を含めたスケジュールを組むことも重要です。2~6ヶ月前に解約予約を行わなければいけないことが多いため、契約内容に目を通しておきましょう。ほかにも国土交通省が発行しているガイドラインを活用するのもおすすめです。このガイドラインにはチェックリストが含まれているので、チェックリストを元にオーナーと入居時の状態を確認し、退去時にチェックリストを活用するといいでしょう。このとき写真を活用して、入居時の状態を目に見えるようにしておくのもおすすめです。
原状回復工事にまつわるよくある質問
ここでは、原状回復工事にまつわるよくある質問に回答していきます。
①工事料金の支払いのタイミングはいつですか?
業者によって、支払いのタイミングは異なります。工事前に全額前払いをしたり、工事前に半額を支払い工事後に残りの額を支払うこともあります。そのため、事前に工事契約内容を業者へ確認しておくことが理想です。
②廃盤になっている照明器具に交換しないといけない…
廃盤になっている照明器具を入手するのは困難なため、似たような形の、新しく販売されているリニューアル品を活用します。特殊な形の照明器具の場合は、受注生産していることが多いため、注文すれば作ってもらえる可能性があります。このように同等品で対応する必要がありますが、元々の設備を保管し、退去時に元に戻すこともひとつ方法です。
③原状回復にはどのようなトラブルがあるの?
借主側は復旧する必要がないと感じていることでも、オーナー側に復旧、回復を命じられることがあります。例えば、借りていたときと同じような状態のクロス・カーペットだったとしても、証拠になるものがなく、オーナーに復旧、回復を指示されるケースもあります。オーナー側にも悪気があるわけではないと思いますが、証拠がないとトラブルに繋がってしまいます。そのため、国土交通省が配布しているガイドラインの確認・チェックリストの活用・写真の活用して、証拠を残しておくのが理想的です。
原状回復工事の流れ
1.お問合せ
当社オフィスボールでは、電話・メッセージでのお問合せに対応可能です。工事には1ヶ月以上かかることもあるので、2ヶ月前にはお問合せ頂けると幸いです。
TEL:03-5837-4430
お問い合わせ窓口:https://office-ball.com/planning_form/(24時間お問合せ可能)
2.現地調査
お客様の物件に訪問し、現地調査を行います。工事内容・工期についての打ち合わせ、物件の状態の確認を行います。賃貸契約書があれば、よりスムーズな打ち合わせを行えます。
3.見積もり
現地調査をもとにした見積もりをお渡しします。見積もり内容など不明点があれば、お気軽にご相談ください。お見積りは無料です。
4.ご契約
工事内容・工期・費用に納得いただけましたら、ご契約します。不安に感じていることは、どんな些細なことでもお気軽にお知らせください。
5.着工
経験豊富な職人がスケジュールに沿って原状回復工事を行います。
6.完工
工事が完了したら、お客様やオーナー様にご確認いただき、お引き渡しが完了します。
原状回復工事とは?費用や工事範囲・工期の目安まで徹底解説【まとめ】
原状回復工事の内容・範囲・費用・工期などについて徹底解説しました。オフィス・店舗は、賃貸住宅に比べて工事範囲が広いケースが多く、賃貸契約終了までに終わらせる必要があります。B工事であることも多いので、工事を行う前に契約書の内容をオーナーに詳しく確認しておきましょう。B工事指定でも、C工事を行えるケースもありますので、業者を自分で選定したい方は、オーナーにかけあってみてください。トラブルの少ない工事を行うためには、しっかりとした打ち合わせと準備が必要です。また、国土交通省が配布しているガイドラインの確認・チェックリストの活用・写真の活用なども有効です。