【国交省】アンケートから見えるオフィス移転と働き方の変化

新型コロナウイルスによる混乱が世界中で続いていますが、2021年となった現在も私たちはコロナ禍の中にいます。コロナ渦の中、新規事業の開拓などで新たにオフィス移転を考えている企業はどのように事業を展開していたのでしょうか?また、今後はどのような展開が予想されるのでしょうか?今回は、国土交通省が実施したアンケート結果を検証しながらオフィスを移転するメリットや変化と今後の動向についてみていきます。

 

国土交通省のアンケートから見えてくるコロナ禍中のオフィス移転事情

オフィス移転のアンケート

今回参考にしたアンケートは、国土交通省(国交省)が2020年8月~9月にかけて行った「企業向けアンケート調査結果(速報)」です。このアンケートは、東京都内に本社がある上場企業2024社を対象に行われました。アンケートでは回収した389社分の回答結果を紹介しています。コロナが拡大していた2020年、オフィスに出勤するのではなく自宅でのテレワークが広がりましたよね?2020年8月でテレワークを行っている企業は、全体の80%でした。そのうち、今後もテレワークを行っていくと回答した企業は70%となっています。

 

テレワークを推し進めているのは主に「情報通信業」、「学術研究、専門技術サービス業」、「製造業」です。どの業種も対面ではなくても業務を進められ、比較的テレワークに移行しやすいためこのような結果になったといえるでしょう。

 

企業の多くが「東京都心へのオフィス移転」を検討

国土交通省のアンケートで「移転を考えている」と回答した企業の大多数が、東京都内を移転先に検討していました。もちろん、地方への移転を検討している企業もありますが、比べるとわずかでした。理由としては、現在の取引先のオフィスが東京に集中していること、地方に比べて交通や出張時の利便性が良いといった点が挙げられると考えられます。

 

オフィスの移転は東京都心の方が確かにメリットも多いですが、地方を活性化させるために、またコロナのような有事に備えてのリスク回避として、郊外への移転が今後は進んでいくかもしれません。地方への移転の動向にも注目したいですね。

 

とはいえ、現状ではやはり東京に重きを置いている企業が多く、移転先として都心はかなり人気があります。国土交通省のアンケートではオフィスの移転か縮小を26%の企業が検討しているという結果でした。具体的には「不動産」や「賃貸業」、「卸売業」、「製造業」でその傾向が見られ、これらの業種の企業は、同時にテレワークも推し進めています。

 

「さらに移転の対象として検討している部署はどこか?」という問いへの回答では、最も多いのが「研究・開発部門」、次いで「営業」、「総務」という結果でした。ですが、部署に関しては大きな差は見られませんでした。

 

企業が考えるオフィス移転をするメリット【アンケート結果】

国土交通省が実施したアンケートの回答結果によると、各企業がオフィス移転のメリットと考えているのは「就労環境の改善」や「賃料削減・不動産売却」、「業務効率化」、「自然災害等のリスクの軽減・分散」でした。都市の方は人との接触機会が多いため、地方以上にコロナの感染リスクが高いと考えられます。以前、東日本大震災で大きな震災が起きた時、自然災害で企業が受ける損害を回避するために、東日本から西日本へオフィスを移転させるケースが多く見られました。

 

今回ご紹介しているアンケートでは東京へのオフィス移転を検討している企業が多いですが、今後は地方にビジネスチャンスを見出して郊外への移転を検討する企業が増えてくるかもしれません。

 

企業がオフィスの移転先に求める条件とは?

オフィスの移転先に求める条件を問うアンケートの回答で特に多かったのは「オフィス面積の確保」や「賃料の安さ」でした。他にも「自社や他の拠点へのアクセスの良さ」、「東京都心へのアクセスの良さ」などが多く見られました。東京は地方と比べると家賃が高いですが、利便性の良さやビジネスチャンスが多いこともあり、移転先としてはかなり人気があります。

 

一方で、関東近郊(茨城県、栃木県、群馬県、山梨県)、名古屋圏、大阪圏、地方圏などへの移転を考えている企業は少なかったようです。やはり、一都三県に本社事業所を置く要因として1番多かった「企業・取引先等の集積」とあるように、わざわざ企業や取引先から離れる地域へ移転しようとはならないようです。

 

一方で国土政策局が行った企業のヒアリングアンケートでは、オフィス移転について…、

 

  • 「移転はコストがかかるので、テレワークをもっと柔軟に取り入れたい」
  • 「コロナの影響で在宅勤務が進み、オフィスを活用することが少なくなった。そのためオフィスのスペースを見直すことはあり得る」

 

という回答がありました。

 

コロナの影響を受けて、多くの企業でテレワークが推進されているのは事実です。そのため、オフィスの人員が減り、スペースが余分に余っているケースも確実に増えているのです。

 

コロナ以前とコロナ禍中で変化したオフィス移転の理由

コロナ以前はオフィス移転の理由としては、

 

  • 「従業員が増えてオフィスが狭くなったから」
  • 「新規事業の立ち上げで今以上にスペースが必要になったから」

 

などが挙げられます。

 

もちろん、中にはコロナ禍でも上記のような事情でオフィス移転を検討している企業もあると思いますが、今後はもっとテレワーク中心となり、オフィスを縮小する目的で事務所を移転をする企業が増えるかもしれません。「オフィス縮小」という名目での移転は、賃料も抑えられ、必要経費も削減できるというメリットがありますが、逆に課題についてはこのような意見がありました。

 

オフィスを縮小することによって、社員間の交流空間の確保を課題としてあげている意見が多く、これはオフィス自体の面積が小さくなることや、執務空間を今まで以上にゆとりのあるスペースにする必要があると考えていることが原因です。なぜ、社員間の交流空間を確保したいのか?それは「業務の生産性の維持・向上」をあげている意見が多かったです。

 

アンケートから見えてくるオフィス移転と働き方の変化【まとめ】

アンケートを見てみると、新型コロナウイルスの影響で、オフィス移転に対する考え方が変わってきている企業があることが分かりました。コロナ禍中のアンケートでも「移転するなら東京都心」と回答した企業が多かったことから、東京で事業の展開を続けていく会社は今後も増加していくと考えられますが、テレワークの推進やリスク回避といった観点から東京圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)の他の都道府県へのオフィス移転、オフィスの縮小などが進んでいく可能性があります。

 

オフィスの移転は今後の事業展開に関わる大事な選択です。移転を失敗しないためにもこの状況の変化をまずはしっかり把握し、情勢を見極めていくことが大切です。

 

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