昨今では、テレワークなど場所を問わない働き方や、フレックス制など時間を自由に選べるワークスタイルが浸透してきています。場所や時間を問わない働き方をまとめて「スマートワーク」と呼びます。本記事では、スマートワークの基礎知識やメリット、導入時のポイントなどを詳しく解説していきます。
スマートワークとは?【主な導入形態】
スマートワークとは、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方のこと。ICT(情報通信技術)の活用で、勤務の場所や時間の制約が取り払われ、一人ひとりが自分のライフスタイルに合わせた働き方ができます。具体的には以下のような導入形態で運用されています。
<スマートワークの主な導入形態 >
スマートワークの導入形態例 | 概要 |
テレワーク | 自宅やサテライトオフィスなど、オフィス以外で勤務する形態 |
フルフレックス | 出社時間・退社時間を自由に決められる制度 |
ワーケーション | 旅先や自然豊かな場所で滞在しながら仕事を行うスタイル |
パラレルワーク | 副業や兼業、複数のプロジェクトなど、業務を兼務する方法 |
ICTが当たり前に活用されるようになり、さまざまな業界のワークスタイルが変わってきています。
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スマートワークが注目されている背景
次に、スマートワークに注目が集まっている背景について解説していきます。その理由は、働き方の多様化と労働力の不足が進んでいるためです。
<労働力人口・就業者数の推移>
出典:厚生労働省
いかに必要な人材を確保するかが企業にとって大切です。
人を集めるためには魅力的な企業である必要があるため、その要素の一つとして、理想のライフワークバランスの実現を可能にする「スマートワーク」が注目を集めています。
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スマートワーク導入で期待できる効果5選
続いて、スマートワークを取り入れることで期待できる効果を5つ紹介していきます。
効果1:理想のワークライフバランスの体現
従業員が仕事と私生活の両立が図りやすくなることがスマートワーク最大のメリット。国土交通省の調査によると、スマートワークの一種であるテレワークを継続している人の「約8割が満足している」と回答しています。
<生活満足度とテレワークによる変化>
出典:国土交通省
右のグラフにある個別項目では「子育てのしやすさ」や「介護のしやすさ」などの満足度も上がっており、テレワークの採用で理想のライフワークバランスが実現しやすくなっていると言えるでしょう。このように、スマートワークはライフワークバランスの実現を後押しし、従業員の満足度を高める重要な施策です。
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効果2:エンゲージメントの向上
柔軟な働き方を取り入れると従業員のエンゲージメントを高める効果もあります。エンゲージメントとは、従業員が会社の方針やビジョンに共感し、信頼や愛着を持ち、自発的に会社に貢献しようとする意欲や関係性を指します。
従業員のエンゲージメントを高く保てると、従業員の仕事へのモチベーションも高くなりやすく、各自が高いパフォーマンスを発揮しやすくなる効果も期待できます。従業員が望むワークスタイルに耳を傾けて、制度導入に役立ててください。
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効果3:定着率の改善
スマートワークの導入は、従業員の定着率改善にも役立ちます。特に、女性は出産や育児を機に退職するケースが多く、育児と仕事の両立が難しいが故に退職を選ばざるを得ないのです。
従業員の定着率や離職率の改善に、スマートワークを取り入れるなど、働き方のアップデートも進めていきましょう。
効果4:生産性の向上
スマートワークの採用は、業務効率化や生産性向上にも効果が期待できます。というのも、働きやすい環境は人によってさまざまだからです。
人によってベストな仕事環境は異なるため、それぞれが適切な場所を選べる働き方を導入して、生産性アップを目指しましょう。
効果5:企業イメージの向上
スマートワークを自社に取り入れることが、企業の採用力やブランドイメージの向上にも寄与します。「国民生活に関する世論調査(令和5年)」の「どのような仕事が理想的だと思うか」という質問に対して、一番高いのが「収入が安定している仕事」であり、次に高いのが「私生活とバランスがとれる仕事」という結果になっています。
<Q.どのような仕事が理想的だと思うか>
出典:内閣府
つまり、世論は仕事内容よりも働き方を重視している傾向にあります。スマートワーク導入は理想の働き方を実現するための手段であり、積極的に取り入れている企業の評価は上がりやすいと言えます。柔軟な働き方を取り入れて、企業のブランド力向上を目指していきましょう。
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スマートワーク導入時におさえる6つのポイント
新しい働き方の導入は、単に制度を作るだけではありません。ここではスマートワークを取り入れるときにおさえるべきポイントを紹介していきます。
ポイント1:ペーパーレス化を進める
場所を問わない働き方では、どこにいても必要な資料や情報を見たり、共有したりできる必要があります。そこで必要な対策がペーパーレス化。
また、適切なオフィススペースの算出のためにもペーパーレス化はすべき対応と言えます。スマートワーク導入に伴って、オフィスの移転やレイアウト変更を検討の方は、ぜひ当社へお問い合わせください。
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ポイント2:ICTツールの選定と整備をする
ICTツールを適切に選定し整備できると、業務効率とコミュニケーションの質が向上しやすくなります。反対に必要なICTツールが整備されていない場合、在宅勤務やフレックス勤務中に情報共有や承認など、必要な業務が滞り、会社全体の仕事が停滞しかねません。
<主なICTツールの種類と導入理由>
ツールの種類 | 導入理由 | ツールの具体例 |
情報共有ツール | 社内資料のリアルタイム共有 | ■Google Workspace
■SharePoint |
Web会議ツール | 遠隔での会議や打ち合わせの効率化 | ■Zoom
■Microsoft Teams |
電子署名ツール | 契約や承認のペーパーレス化 | ■DocuSign
■クラウドサイン |
コミュニケーションツール | チャットや社内連絡の円滑化 | ■Slack
■Chatwork |
勤怠管理システム | 出退勤管理や残業計算の自動化 | ■KING OF TIME
■ジョブカン |
会社それぞれで業務内容は異なるため、スマートワークでも円滑に仕事が進められるツールの導入をしていきましょう。
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ポイント3:情報セキュリティ対策を強化する
情報のセキュリティ対策は、スマートワーク導入において欠かせない対策の一つ。いつでもどこでも働けるのがスマートワークの利点ですが、その一方で情報漏洩リスクが潜んでいます。使用するツールなどによって適切な対策は異なりますが、以下のような対策を検討してみてはいかがでしょうか。
<情報セキュリティ対策の例>
- VPN接続や二段階認証を採用する
- 情報取り扱いルールの教育を定期的に行う
- 紛失・盗難時に端末内データを遠隔で消去可能にしておく
- 重要データを定期的にバックアップし、暗号化して保存しておく
- 業務に必要な情報のみ閲覧・編集できるようにアクセス権限を制限する
問題は起きないに越したことはありませんが、最悪を想定して、あらかじめ対策をしておくのが大切です。
ポイント4:評価制度を見直す
スマートワークを取り入れるなら、評価制度の見直しも行いましょう。スマートワークでは従業員の様子を常に見られるわけではありません。例えば「勤務時間重視」の評価では、スマートワークの成果が反映されず、不公平感やモチベーション低下につながる可能性もあります。
ポイント5:スモールスタートで段階導入する
新しい制度の運用は、小規模で試験的に始めて徐々に拡大するのがおすすめです。一度に全社導入すると、システムやルールの不備が業務に影響したり、従業員の混乱を招いたりするリスクがあります。
ポイント6:運用ルールを周知し浸透させる
そして、スマートワークの運用ルールを全社に周知し浸透させるのも重要です。新しい制度やツールを取り入れても、従業員に運用ルールが浸透していなければ効果は十分に発揮されません。会社にマッチしたルールを定めていきましょう。
<スマートワークの運用ルール例>
項目 | ルールの具体例 |
勤怠管理ルール | ■勤怠の打刻や休暇申請はクラウド勤怠システムで統一する
■打刻は毎日行う |
ICTツール運用ルール | ■契約書は権限管理されたクラウド上でのみで共有する
■Web会議中はカメラONを推奨、議事録はクラウド保存する ■業務連絡は公式チャットツールのみ使用し、個人メールやSNSは禁止とする |
情報セキュリティルール | ■社用PC・スマホを使用するときは必ずVPNをつなぐ
■端末紛失時は即時上司に報告する ■パスワードは定期的に変更し共有は禁止にする |
小規模運用から始める場合は、スモールスタートの対象部署の従業員に必要だと感じた規定の聞き取りをしながらルール作りをしましょう。ルールを定めたら、円滑なスマートワーク運用に向けてルール浸透を図ってください。
スマートワーク導入で見直すべきオフィス運用やレイアウト
最後に、スマートワークを取り入れる際に見直すべきオフィス運用やレイアウトを紹介します。
1.フリーアドレス制の適用
まずスマートワークを取り入れるなら、オフィスの座席数も最適化していきましょう。スマートワークが浸透すると全従業員が出社する日はなくなっていきます。そのため、個人専用の座席は設けず、自由に座席を選べるフリーアドレス制に移行するのがおすすめです。
スマートワーク導入では、単に勤務制度を変更するだけではなく、オフィス運用もあわせて検討してください。
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2.集中ブースの設置
スマートワークの導入にあわせてオフィスに取り入れてもらいたいのが集中ブースなどの個室です。個室は施工型パーテーションを活用すると、比較的簡単に作れます。
<施工型パーテーションの個室例>
フリーアドレスやオープンオフィスでは、会話や電話の音などで集中が途切れやすくなります。集中ブースを設置すると、集中力を保ちやすくなり、作業効率アップも期待できます。
また、テレワークなど一人で作業に慣れた従業員にとって、区切られた集中できる空間が必要と感じる人は多いでしょう。どこにいても働きやすくするために、オフィス整備も検討してみてください。
» Web会議や集中時にオフィスにあると役立つ個別ブースとは
スマートワーク導入で時代に合った働き方を叶えよう!
スマートワークの基礎知識やメリット、導入のポイントなどを解説しました。仕事内容よりも、ライフワークバランスを重視した働き方が求められている昨今では、スマートワークを取り入れない手はありません。スマートワークの採用が企業の人材不足を解決する糸口になる可能性も秘めています。