内装工事のデザインコンペや入札を行うメリットとデメリット

オフィスやお店を新しく出店したり、移転する際に「折角投資をするのだから、内装を素敵なデザインにしたい」と思うことも多いのではないでしょうか。加えて「安く内装工事をしてくれるところに頼みたい」と思うのも当然だと思います。そこで良く耳にする言葉が『デザインコンペ』や『入札』です。「では我が社でも、デザインコンペと入札をやろう」となった時、どこから手をつければ良いのでしょうか。今回は初めてデザインコンペの担当を任された方にもご理解頂けるよう、幾つかのポイントをまとめてみました。

 

1. 全てお任せでは進まない?デザインコンペの注意点

内装工事のコンペ

デザインコンペで決め手にしたいのは、デザインの優劣の他ありません。では、デザインの優劣を選定する基準は何でしょうか。基準はオリエンテーション時に、明確な言葉、又はイメージとして、ある程度の方向性やコンセプトが決まっていた方が望ましいです。例えるなら、数人で彫像のスケッチをするときは、彫像を事前に決定したうえでスケッチをすると、人それぞれ捉え方や着眼点が違います。数人分のスケッチが比較できるからこそ、先生が評価をすることができるのです。

 

デザインコンペを行う場合、ある程度のコンセプトや方向性、またはNGとなる内容だけは必ず事前に決めておきましょう。さらに注意したいのが、デザインフィーについてです。複数のデザイン会社に参加してもらい、1つの内装デザインに決めるわけですから、決まらなかった参加者に対しても、デザインフィーを支払うのか、それとも採用された参加者だけにデザインフィーを支払うのか、事前に告知しておく方が良いでしょう。

 

もう一つ、デザイン会社を選定する際に確認しておきたいのが、設計図書作成に関する知識です。1級、または2級建築士さんが所属する設計会社等であれば、殆ど心配はないと思います。しかし得意分野が、グラフィックなどのデザインである場合は、その後の図面作成作業が任せられるか確認が必要です。それは、次の注意点にも関わってきます。

 

2. 開発事業主や出店場所によって異なる独自ルールがある

設計説明会という言葉をご存知でしょうか。設計説明会とは出店社に向けて開発事業主が開催し、設計上のルールなどを説明する会です。例え、自分の所有する土地であっても、建築基準などの法規があるように、出店する物件によっては、安全面の決まり事や、テナントビルであれば他の出店者も含めた、デザインの調和を保たなければいけない、といった様々な独自ルールが存在します。

 

新築の物件等では、設計段階から省エネ基準を満たす計画になっているか、といった確認が必須であり、着工時に大幅な平面計画の変更をしないよう指導されます。改装物件では、建築確認申請後に平面図等の図面が必要で、基本的に図面を提出後は設計の変更を受け付けてもらえません。これは、図面を変更すると開業時期に遅れが出る為、期限が開発事業主によって決められているといった方が正しい表現になるかもしれません。このような、とりわけ大型の開発案件では、建物の建築を行う会社と別に『内装監理室』とよばれる、出店者がコンペなどで決めた設計会社や施工会社との調整を行い、開業までのスケジュール管理を行う企業や団体が存在し、事前に設計における注意点の説明がなされます。

 

この内装監理室は、建築会社やテナントビル等の開発事業主の意向をうけて、所定の契約期間だけ組織される内装関連のプロフェッショナル集団です。彼らは、依頼主の定めたルールにそって、様々な調整を行います。このスケジュール調整に対応できる設計会社であるかどうか、という事も前述のデザインコンペ時に確認しておきたい要素です。

 

3. すべては開業までのスケジュールから逆算される

さて、1.2を通じて、デザイン会社選定における注意点を理解して頂きました。そこで、改めて、開業までのスケジュールを確認し、今置かれている“立ち位置”について、把握しておきましょう。物件の内容によっても異なりますが、デザインコンペを始める時期の目安として覚えておくと、今後の行動の指標となります。

 

  • 開業270~300日前
    設計説明会終了後の基本設計期間
  • 開業210日~270日前
    基本設計に基づく、出店者工事費用の調整時期
  • 開業150~210日前
    事業主負担による工事期間、及び内装工事の実施設計決定時期
  • 開業90~150日前
    出店者費用負担による内装工事の期間
  • 開業60~90日前
    建築検査や、消防検査などの期間で、原則内装工事は終了している時期
  • 開業30~60日前
    開業準備のための商品搬入など。オープン後のオペレーション確認や研修期間

 

もちろん物件の規模の大きさや内容、内装監理室などの判断により、上のようなスケジュール通りではないことも有りうるかと思います。昨今の働き方改革により、かつてとは違い、徹夜で図面を作成するとか、突貫工事で開業に間に合わせる、といった方法は避けたい考え方です。あくまで目安として考えて、自分が頑張れば済む話ではない事だけは認識しておいてください。こういった大まかなスケジュールを認識し、現在の立ち位置を把握することでオリエンテーションを行い、デザインコンペを行う時期に相応しいのかどうか、といった判断をすることも必要でしょう。

 

4. 内装デザインコンペのオリエンテーション

内装デザインコンペのオリエンテーションでは、デザイン会社に対して依頼内容の説明をします。3.で挙げたスケジュールを例にとると、設計説明会が終わってからオリエンテーションを始める、という事で間に合うのか?との心配も有って然るべきかと思います。提出する基本設計の内容や、2.でも触れた様々な事前決定事項の締め切りが決まっていれば、早々にデザインコンペのスタートを切った方がよいという事になります。提案の手法は各社に任せるとしても、レイアウトがしっかりと分かる平面図とパースは必須条件になるでしょう。これらは後々デザイン選定後には、基本設計として生かすことが出来ます。

 

パースでは伝わりづらい質感などを表現するため、内装仕上材料(マテリアルボード)を作成してもらうと、よりコンペで比較が判断しやすいでしょう。更に、内容に基づく概算内装工事費用の提出も判断基準とする場合、プレゼン内容が現実から乖離しないように、設定予算を告知しておくと良いでしょう。

 

5. 内装デザインの選定のおける注意点

各社のプレゼンが終了し、オリエンテーションで説明した条件を満たしているか、十分に審査を行いましょう。2019年意匠法が改訂され、2020年4月から建築や内装の意匠登録が認められ、建築物や内装デザインの意匠が保護される対象となりました。この事を踏まえると、“良い所取り”をするなどの事後調整は行うことはできません。なお、オリエンテーションやこれまでの経験から、無難な提案にまとまり、デザインの優劣や金額面で、差が生じないというケースも考えれれます。それでも選定理由を伝え、コンペ参加者が全員納得できるよう、きちんとした理由を伝えましょう。その理由が「熱意」でも、それは明確な判断基準として認められるでしょう。

 

6. 内装工事施工業者を決める入札開始のタイミング

コンペにてデザイン会社を選定したのちは、内装監理室へ設計に関する選任届を提出し、速やかに基本設計の作図作業にかかる必要が有ります。基本設計図の作成者はデザインコンペで決定します。基本設計図では、平面図、展開図、天井伏図などスケールが分かる図面と、パースやマテリアルボードなどの意匠が分かる資料。さらに必要であれば、空調・換気・給排水設備等の図面も準備します。基本設計で、出店者側の“作りたい内装”を図面化することで、関係者全員との共通認識を構築します。

 

内装監理室による基本設計のチェックバックを受けて、実施設計図を作成します。実施設計図とは実際に施工する内容を確定させた図面のことです。このころには、正確な内装工事費用が出るはずなので、実施設計作成の前後がベストな内装工事施工業者を決める入札開始の時期です。

 

7. 工事区分や負担金についての知識

入札を行う前に把握しておきたいことの一つに、出店費用がありますが、出店費用=内装工事代ではないという事です。既にデザインコンペでフィーを支払っているのであれば、デザイン費さらに設計図書を作成する費用に加えて、出店者負担の工事でも、指定された工事業者による工事(B工事)や、内装負担金、現場協力金などの名目費用が掛かる場合が有ります。これらの金額を入札後の内装工事費用(C工事)と合わせて、予算を組んでおく必要が有ります。B工事は、防災設備関連など、その建築物において総合的に管理される設備内容が多く、設計段階でこの費用を調整することも重要です。

 

» A工事 B工事 C工事の内容とは?工事区分を詳しく解説!

 

8. 内装工事金額を入札で決める際の注意点

入札では内装工事施工業者を決定します。本来競争入札とは、設計と施工が完全に別で、公平に金額を提示することであり競争です。入札を行う際に、5.で決定したデザイン(設計)会社が、内装工事の施工も行う、設計施工の企業である場合、その企業が工事を落札するケースが多い、という話はよく耳にします。設計者は、入札金額が適切な内容かどうか判断を委託されることが有り、全体の価格が把握できるため、最低価格以下で提示する事が可能だから、という場合もあるでしょう。ですが、入札を実施する以上は、癒着のような事が無いよう、公正な入札を行う点からも、設計と施工は別にして入札を行うことが望まれます。

 

9. 内装工事後の出来栄えが想像と違う、という事にならないように!

デザイン会社の中には、素晴らしいパースを仕上げて評価を勝ち取り、更に落札後は、予算内に抑えるため、意匠的な修正や仕様を落とすといった、変更を加える術に長けた企業も有ります。もちろん、正当な方法で理解を取り付け、施工内容として承認するに値すれば、何の問題も有りません。しかし、予算を削ったシワ寄せが、たとえば照度に影響し暗くなったり、折角の看板がチープになって、印象を損ねたりというケースもあります。デザインやマテリアルを重視することも大事ですが、全体的な調和を損なわないよう、予算も含めてしっかりとコントロールすることが大事です。その為には、デザインや設計を任せる際に、しっかりと要点を伝えながらも、コスト削減につながる提案を評価する選定眼を持つことが重要です。

 

内装工事のデザインコンペや入札を行うメリットとデメリット

今回は、大型の商業ビルのテナント施設に関する開発案件について例を挙げ、施工する職人さんたちも含め多くの人々が携わる事案について説明を行いました。このケースにおいて『デザインコンペ』を行うメリットは、良いデザインを選定できるという事になりますが、デメリットは、出店者側の準備期間や担当者に、ある程度の専門知識が必要という点が挙げられます。つまり、マンネリ化したデザインを刷新するには、コンペを行うと良いが、その分、細やかな意思疎通が出来る人間関係を最初から構築する必要が有る、といえます。

 

また、内装工事施工業者を選ぶ『入札』を行うメリットは、工事費用を安く抑える事が出来るという事になりますが、デメリットは、100%の満足できるクオリティでは無いことの覚悟が必要という点が挙げられます。当然のことですが、十分に経験を積んでいる担当者、若しくは、オリエンテーションから選定、発注等の対応を複数人数で実施することが可能で、しっかりと進捗管理が出来るようであれば、コンペも入札も上手く出来るかもしれません。いくつもの案件を一人で抱えていて、それでも理想的なデザインとコストを求めたいのであれば時間を要するコンペや入札を行わず、信頼できるパートナーに全てを相談しながら委託するという方法が良いのでは無いかと思います。

 

 

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