バイオフィリアは、自然と人間の本来のつながりを重視する考え方を指す言葉です。職場での働き方改革や健康経営が推奨されている現代において、これからのオフィスに必要な要素だと言われています。導入する効果や実践方法、おしゃれで真似しやすい事例を解説します。
バイオフィリアってなに?
バイオフィリアの意味
「バイオ(生物・生命)」と「フィリア(好意・愛着)」を合わせた造語です。私たち人間が本能的に持っている次のような感情を指した言葉です。
- 自然とつながりたい
- 動物や植物と触れ合いたい
- 自然や動植物を見ると落ち着く
どうして「バイオフィリア」が必要なのか
職場は人間関係や多忙などによって悩み・ストレスが生じやすい環境だと言えます。デジタル機器に囲まれた無機質な空間も心身に良い環境とは言えないでしょう。悩みやストレスは不調を引き起こしたり、働く意欲を低下させたりする可能性があるため対策が求められています。そこで、自然への愛着を意味するバイオフィリアをデザインに落とし込むことで、心身の健康にプラスに働くことが期待されています。
オフィス緑化とは違うの?
バイオフィリアはオフィスの緑化とイコールではありません。異なる点を表にまとめました。オフィスに緑を増やすことは、バイオフィリアを行う際の選択肢の1つだと言えるでしょう。
» オフィス緑化で人工芝を導入するメリット!種類も詳しく紹介
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オフィスへの 『バイオフィリア』導入 |
オフィス緑化 |
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定義 |
オフィスに自然の要素や概念を取り入れた内装やレイアウト設計を行うこと | オフィス空間に観葉植物などのグリーンを導入し、環境を改善すること |
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目的 |
ストレスの軽減やリラックス効果、業務効率アップなど | |
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主な手法 |
観葉植物・グリーンを配置 | 観葉植物・グリーンを床に置く |
| 内装や家具に自然素材を使う | 植物を吊るす | |
| 自然光を採り入れる | 植物を棚に置く | |
| 自然の景観を活かす | グリーンウォール設置 | |
| アースカラーを取り入れる | プランターボックス設置 | |
| 自然界の音や香りを取り入れる | 床に人工芝を敷く | |
「バイオフィリア」を採用する効果4選
ストレスの緩和
バイオフィリアを内装やインテリアに用いるとストレスの緩和が見込めます。例えば疲れや不安を感じたとき、草花や空を見たり海や山に行ったりすることで気持ちが晴れた経験はありませんか。
写真を見るだけでも、実際に行ったときの感覚が呼び覚まされ、ストレスの緩和に役立っています。
リラックスできる
バイオフィリアによってリラックスしやすい空間になります。自然と接すると、脳の働きやホルモンバランスに良い影響があると言われています。職場では多くの人が忙しい毎日を過ごし、仕事のプレッシャーや緊張感から疲れやストレスを感じることも多いのではないでしょうか。
著者も在宅で記事を書いているとき、行き詰まるとメダカの水槽を眺めています。目が休まるだけでなく心も落ち着いて良い気分転換になります。
生産性を上げる
バイオフィリアは生産性や効率性の増進にも役立ちます。事務的な雰囲気になりがちなオフィスも、自然を感じるとぬくもりのある空間になります。職場内の交流が増えたり集中力が高められたりといった好循環が生まれるでしょう。
*川崎市 バイオフィリックデザイン活用に向けた実証実験
実証実験の結果、作業効率アップやストレス緩和が見られ、職員同士のコミュニケーションの増加など一定の効果が得られたことが報告されています。
従業者のウェルビーイングを高める
従業者のウェルビーイングを高めることも期待できます。ウェルビーイングの意味は、心と身体が健やかで、やりがいのある仕事や良好な人間関係によって満たされている状態を表します。
バイオフィリアの導入により従業者が仕事や人間関係にポジティブに取り組める環境が整い、職場のウェルビーイング向上につながります。
手軽な「バイオフィリア」実践ガイド
大規模なリニューアルやレイアウト変更が難しい場合でも、実践しやすい方法を解説します。
» オフィス緑化の効果やメリットとは?導入の手順や成功の秘訣も解説
グリーンを導入
オフィスに観葉植物や生花があると見ているだけで癒されます。手入れを通して従業員同士の会話が生まれたり、季節を感じられたりといったメリットもあります。
グリーンの導入にはレンタルやリースサービスも利用できるので、無理のない方法を選びましょう。また、オフィスグリーンに向いている観葉植物の一部を紹介します。丈夫で育てやすく、乾燥に強いものがおすすめです。
- ポトス
- パキラ
- サンスベリア
- カポック
- ドラセナ
自然光を活かす
日光を浴びると脳の働きが活性化したり、免疫力がアップしたりすると言われています。自然光をオフィスに取り入れることで健康的に働ける環境を整えられます。直射日光の眩しさや紫外線はカットしながら自然光を活かす方法を3つ紹介します。
・採光ブラインド
眩しい光を遮りながら、明るく柔らかい光を拡散します。ブラインドを閉めていても明るく感じられるものや、上部を採光部として羽の角度や幅を変えている製品などがあります。
・採光フィルム
窓ガラスに張ると自然光を効率よく取り入れて拡散してくれます。遮熱性能もあるため、ブラインドやカーテンを外しても暑さ対策が可能になります。台風や地震などでガラスが割れてしまった際の飛散防止にも役立ちます。
・ガラスパーテーション
自然光を個室にも届けたいならガラスパーテーションで仕切りましょう。くもりガラスや半透明フィルムを使えば、光を採り入れながらプライバシーの確保も可能です。全面ガラスのタイプやおしゃれなブロックタイプなどスタイルを選ぶことができます。
ナチュラルな家具
ナチュラルな雰囲気の家具を使うことでも手軽に導入できます。家具に使われる天然素材には、木や籐(ラタン)、麻などが挙げられます。優しい触り心地や味のある風合いが魅力的です。
例えば下記のような家具で「バイオフィリア」を手軽に取り入れてみましょう。
- 木目のデスク・収納(スチール製)
- 木目の塩ビシートを張ったパーテーション(スチール・アルミ製)
- 芝生調のマット・カーペット
- アースカラーのチェア・ソファ
*アースカラー:緑・オレンジ・青・茶色など自然界にある色
音や香り
音や香りを用いてバイオフィリアを表現する方法もあります。例えばBGMとして鳥の鳴き声や水の音を流したり、心安らぐアロマの香りを漂わせたりします。
また、香りは企業ブランディングにも利用できます。例えば、ローズやジャスミンのようなフローラル系の香りは高級感を演出してくれます。ウッディ系は安定感や信頼感を、シトラス系は爽やかで明るい印象を与えてくれます。企業やオフィスのコンセプトに合わせた香りを選ぶと良いでしょう。
「バイオフィリア」を用いたおしゃれで真似しやすい事例
最後に、おしゃれに見えてチャレンジしやすい3つの事例を解説します。
事例1:執務スペース+観葉植物
執務スペースにたくさんの観葉植物を配置した事例です。おしゃれに見える観葉植物には次の効果も期待できます。
- リラックス効果
- 疲れ目を癒す効果
- 空気清浄効果
- 室内の乾燥防止効果
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事例2:エントランス+グリーンウォール
フェイクグリーンを使い、オフィスのエントランスにグリーンウォールを設置した事例です。グリーンウォールに本物の観葉植物を使う場合もあります。みずみずしさや緑の鮮やかさが魅力である一方、水やりや枯れ葉の清掃などには手間がかかってしまいます。
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事例3:自然光+ガラスパーテーション
この事例では、オフィスに自然光をふんだんに採り入れています。ガラスパーテーションで仕切っているので奥まで日差しが届いています。ブラックフレームとガラスの組み合わせによってナチュラルでありながら洗練された印象になっています。また、ブラインドは縦型のバーチカルタイプを選ぶとモダンな雰囲気になります。
「バイオフィリア」は手軽な方法から挑戦しよう
バイオフィリアは自然と人間の本来のつながりを重視する考え方で、オフィスの内装やインテリアデザインへの採用が増えています。リラックス感や生産性の増進、ウェルビーイングの実現などが見込まれます。手軽に実践するには、木目調などのナチュラルな家具やグリーンを置いたり、BGMやアロマで五感に働きかけたりといった方法があります。まずは簡単な方法から挑戦してみてはいかがでしょうか。











