オフィスブランディングは、オフィス空間を使って企業イメージや文化を内外に伝えるために行われます。従業員のモチベーションアップや競合他社との差別化にも有効だと言われています。しかし、耳慣れない言葉でよく分からないという方も多いのではないでしょうか。言葉の意味をはじめ、具体的な進め方や成功の鍵についても詳しく解説します。
オフィスブランディングってなに?
最初に意味や役割などについて解説します。
オフィスブランディングとは何か
自社のビジョンやブランドイメージをオフィス空間を使って表現し、強めていくことを言います。従業員や顧客、取引先などに一貫性のあるイメージを持ってもらうための取り組みです。ただ内装やインテリアを新しくすることではありません。
オフィスブランディングの役割
外部に向けたブランド戦略になるだけでなく、社内や従業員といった内側に向けても重要な役割を果たします。近年、オフィスへの出社が当たり前ではなくなりました。在宅勤務やリモートワークなど、働き方や働く場のバリエーションが増えています。
今や、オフィスは単に業務が行えれば良いだけでなく、出社したくなるような価値や仕掛けが求められています。また優秀な人材を集めるためにも、『会社の顔』としてオフィスブランディングの重要性が高まっています。
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オフィスブランディングのメリット
続いてオフィスブランディングの主なメリットを4つ解説します。
イメージアップ
オフィスブランディングを行うと企業のイメージアップやブランド力の向上が期待できます。空間を使って自社の理念や価値観などを分かりやすく表現することで、従業員だけでなく顧客や取引先、投資家などにも一貫したイメージを効果的に伝えられます。企業の信頼感やイメージが向上してビジネスチャンスも生まれやすくなります。
一体感を高められる
オフィスブランディングは、社内の一体感を高めやすくします。近年、働き方が多様化して、在宅やリモートでも働けるようになりました。通勤時間や労力が軽減できる一方で、企業への帰属意識や一体感が薄れてしまうというデメリットも生じています。
採用力の強化
オフィスブランディングに取り組むことで、採用競争力が高まることが期待できます。昨今、業界を問わず人手不足が問題になっています。なかでも能力の高い人材を取得して定着させることは、企業の存続と成長に必要不可欠だと言えます。
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就職活動の学生や求職者が実際にオフィスを訪問した際、企業理念や文化を肌で感じられると信頼感や安心感を得やすくなります。他社との差別化を図ることができ、採用力が強まります。
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『従業員エンゲージメント』の向上
オフィスブランディングへの取り組みは、従業員エンゲージメントアップにもつながります。従業員エンゲージメントは、従業員が自社のビジョンに共感して貢献したり、帰属意識や愛着を持ったりすることを意味します。近年、企業価値向上に欠かせないものとして注目されています。
例えばNTTグループでは、2021年にそれまで行っていた『従業員満足度調査』を『従業員エンゲージメント調査』に刷新しました。オフィスブランディングによって企業が目指す方向性を体現できれば、従業員と双方向の理解や信頼を築きやすくなります。
オフィスブランディング成功の鍵はなにか
次に成功につなげるための要点を3つ解説します。
その1:コンセプトを明確に
オフィスブランディングを単なるリニューアルやレイアウト変更に終わらせないためには、コンセプトを明らかにして、共有しておく必要があります。理念や使命、目指す未来などに沿ったコンセプトを決め、オフィス空間を使って体現します。
例えば、創造性を重視するなら自由な発想を刺激するデザインを取り入れたり、サステナブルな社会を目指すなら、環境負荷の少ない内装建材や設備を取り入れるなどの方法があります。
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その2:デザイン性と快適性を両立させる
オフィスブランディングを成功させるためには、デザイン性と快適性の両立が大切になります。まずデザイン性では、下記に一貫性が求められます。
- 内装デザイン
- サイン・ロゴ
- カラー
- 家具
また、デザイン性や高級感があったとしても、真っ白い内装や高すぎる天井は落ち着かない感じがします。従業員の快適性とデザイン性はどちらも大切にすることが成功の鍵となります。
その3:専門家・専門業者の活用
オフィスブランディングへの取り組みは、専門家や専門業者を活用すると成功の近道になります。自社メンバーだけで取り組む場合、それぞれの業務を抱えているため、中途半端になってしまうことがあります。
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オフィスデザイン会社やコンサルタント会社などは専門知識やノウハウを持っているため、一貫性のある的確な企画や提案をもらえることが期待できます。もちろん、従業員を巻き込んで進めることが大切になるため、専門家を交えたプロジェクトとして進めることが望ましいでしょう。
オフィスブランディングの進め方4ステップ
オフィスブランディングはどのように進めれば良いのか、4段階に分けて解説します。
ステップ1:現状分析と目的の明確化
まずは現状オフィスの問題点や課題を見つけ出し、その上でブランディングを行う目的を明確にします。問題点や従業員のニーズを知る方法には下記が挙げられます。
- 従業員アンケート
- インタビュー
- 座談会の開催
- 競合他社のオフィスやブランド戦略の調査
従業員の率直な意見によって自社の強みや弱みも分かります。また目的については、例えば『企業のイメージアップ』や『コミュニケーションの活性化』など分かりやすく定め、社内で共有しましょう。
ステップ2:コンセプト策定
コンセプトは企業のビジョンやイメージなどに沿ったものを策定しましょう。コンセプトの事例をいくつか紹介しますので参考にして下さい。
事例1:コミュニケーション・コラボレーション
従業員同士の交流や連携を図るために、オープンなコミュニケーションスペースやオフィスカフェなどを設けます。
事例2:イノベーションやクリエイティビティ
カラフルなデザインや自由なレイアウトを取り入れて創造性を刺激します。また、イノベーションを生み出すために個人ワークとグループワーク、それぞれに適したスペースを設けるなどの工夫が必要です。
事例3:エコ・サステナビリティ
省エネ設備の導入や自然素材の採用などにより、環境に配慮した持続可能なオフィスのイメージを打ち出します。環境問題や社会的責任を重視する企業に向いています。
事例4:スマートオフィス(テクノロジー)
最新のテクノロジーを導入し、効率的で快適なオフィス環境を整えます。入退室管理をはじめ、会議室や座席の予約、照明、空調などもデジタル管理し、無駄を省きます。
事例5:健康経営・ウェルビーイング
従業員の健康を促進し、心身共に良い状態で働ける環境を目指します。オフィスに自然光を取り入れたり、グリーンを配置したりするほか、リフレッシュエリアやジムを設けるなどの方法があります。
ステップ3:空間デザインの企画・設計
目的やコンセプトの策定に続いて空間デザインを行います。設計デザイン会社をはじめ、内装業者やパーテーション業者、オフィス家具メーカーなどにも依頼できます。筆者がオフィス家具メーカーに勤務していた時にも、社内にはデザイン専門の部署があって空間デザインを行っていました。また、下記を効果的に取り入れるとイメージが視覚的に伝わりやすくなります。
- ロゴやロゴマーク
- コーポレートカラー
- ブランドを象徴する写真やイラスト
とくにコーポレートカラーの利用はブランドの認知度を高めることに有効です。著者はよくコーポレートカラーをミーティングチェアに採用することを提案していました。会議室やエントランスは、従業員だけでなく取引先や顧客も利用するため、ブランドイメージを伝える場に向いています。
ステップ4:導入・施工
最後はオフィスブランディングに基づいて施工します。実施前には複数社から見積りを取得し、予算に合うプランや業者を選定することが大切です。レイアウトを大きく変える場合は、消防法や建築基準法による制限について確認が必要になります。
また、内装工事以外にも下記のような工事や作業が発生します。予算オーバーにならないために、あらかじめそれぞれの見積りを取得し、全体予算を管理しておきましょう。
<内装工事以外に発生する工事や作業> | ||
種類 | 内容 | 主な依頼先 |
電源・照明工事 | デスク周りや個室への移設・新設工事 | 電気業者 |
電話・LAN配線工事 | デスク周りや個室への移設・新設工事 | 電気通信業者 |
消防設備工事 | 感知器、非常用スピーカーなどの移設・増設 | 防災設備業者 |
空調設備工事 | 空調本体や吹き出し口の移設・増設 | 空調工事業者 |
パーテーション工事 | 既存パーテーションの移設や新規の設置 | パーテーション専門業者
オフィス什器販売業者 |
オフィス什器の移設 | ローパーテーション、キャビネットなどは要施工 | オフィス什器販売業者
引越し業者 |
荷物移動作業 | レイアウト変更に伴う書類や荷物の移動作業 | 引越し業者 |
廃棄 | 不要な家具や書類の廃棄 | 不用品回収業者
産業廃棄物業者など |
オフィスブランディングで効果的にイメージアップを図ろう
空間を使って自社のイメージやブランドを表現し、強化させることをオフィスブランディングと言います。従業員が多様な働き方をしていても、一体感を持てたり従業員エンゲージメントがアップしたりすることが期待できます。
コンセプトを明確にした上で、デザイン性だけでなく、機能性や快適性などを両立させることが成功につながります。また、オフィス空間に加えて企業のWebサイトやSNS、会社案内、名刺などにおいても一貫性のあるブランドイメージを構築していくことが大切です。