テレワークの普及などにより働き方が変わりつつある中で、オフィスにおける防災対策についても見直しが必要となっています。本記事では、オフィスにおける基本的な防災対策に加え、オフィス工事を専門とする当社の視点から見た安全を確保する方法についても紹介しています。
オフィス防災とは
オフィス防災とは、地震や火災、感染症といった非常事態から従業員を守り、業務の継続を可能にするための対策を指します。昨今、新型コロナウイルス流行の影響により、リモートワークの推進など働き方も大きく変わりつつあり、防災対策の見直しが必要です。また、今後起こりうる大震災などに備えた準備も必須となります。非常時の備蓄だけでなく連絡体制の強化や建物設備の見直しなど多面的な防災対策を行い、災害時に慌てず行動できる環境づくりを行いましょう。
オフィスにおける基本的な防災対策
オフィスの防災対策は、昨今の働き方に合わせて物資の備蓄にとどまらず、情報・連絡体制・設備・人の体制まで広く整備する必要があります。以下に挙げる9つの要素を参考に、企業の働き方にあわせた防災対策を行いましょう。
災害時の備蓄
オフィスでは災害発生直後、外部からの支援が届かない事態に備えて備蓄を行う必要があります。例えば、東京都の条例などでは最低でも3日分の水・食料等を従業員数に応じて確保するように定められています。賞味期限なども踏まえたローリングストック方式を導入し、定期的な消費・補充を習慣化することで、常に新しい備蓄状態を維持しましょう。
防災グッズの整備
水や食料に加えて、非常時にすぐ使える防災グッズを整備しておくことが重要です。
- 懐中電灯
- ラジオなどの情報収集ツール
- 応急処置セット
- 簡易トイレ及び衛生用品
- 防寒具
- ヘルメット
など、命を守るための道具をリスト化し、従業員数に応じて配置しましょう。また、停電時にすぐ点灯できるライトや、ヘルメット、負傷時の応急処置キットなどについては、配置場所と使い方を日常的に共有しておくことも重要です。
感染症対策
感染症の流行を想定した対策も必要です。マスク・消毒液・非接触体温計などを準備しておくことで、災害時の集団感染を防ぐことができます。事前に感染症対策用品も防災用品として備蓄し、利用方法の教育や衛生意識向上に取り組むことで、非常時のリスクを大きく下げることができるでしょう。
緊急時の連絡手段及び安否確認方法の整備
災害時の連絡体制についても整備しておく必要があります。早朝や深夜、休日に災害が発生した場合のことを想定し、チャットツールや安否確認アプリなど、複数の手段を整備しましょう。定期的な訓練を行うことで、緊急時に確実な連絡体制を整備することができます。
災害時のマニュアル作成
明確な行動指針がないと、非常時に混乱が起きる可能性があります。災害種別ごとに対応方法や避難ルート、役割分担などを整理した防災マニュアルを作成して各従業員へ配布しましょう。たとえば地震時の初動行動や、火災時の対応などを明記しておくことで混乱を最小限に抑えられます。定期的な更新や研修などによる全社員への周知により、災害時に対応できる仕組みを作ることができるでしょう。
重要データのバックアップ
PCやサーバーが損壊しても業務継続が可能なように、データのバックアップ体制が不可欠です。クラウド保存などを活用することで、災害時でもスムーズな復旧が可能となります。バックアップ体制について、再度確認を行い、更新頻度などの見直しを行いましょう。
避難訓練の実施
災害時にスムーズな対応を行うために、定期的な訓練が必要です。年に数回、地震・火災など災害別にシナリオを用意し、避難から集合・点呼・報告までを実践することが重要となります。定期的な訓練を行い、従業員の防災意識を高めておきましょう。
防災設備周りの確認
防災設備を機能させるため、設備周辺の確認も必要です。一般的に、消防用設備等を設置した建物については、定期的な点検や消防署への報告が義務付けられていますが、改めて確認を行いましょう。例えば、スプリンクラーや火災報知器の周囲に物が置かれていないか、避難ハッチやはしごの上に障害物がないかなどの確認が必要です。日常的なチェックを行い、「すぐ使える状態」を常に保つことが重要です。
災害時の担当者決定
災害発生時に誰が何をするか明確でなければ、対応が遅れます。防災担当者を決めておき、万が一のことに備えた体制を整えておきましょう。「防災グッズ整備担当」「安否確認担当」「備蓄管理担当」など、細かな役割を定めておくことで、避難時の混乱を防げるだけでなく定期的な備蓄のストック確認なども行うことができます。
災害時に安全を確保する方法
オフィスにおける防災対策は備蓄や訓練だけでなく、建物や設備の安全性にも着目する必要があります。ここでは、建築のプロである当社が、災害別に安全を確保する方法を紹介します。
地震対策
地震対策では、天井・床・什器・収納設備などを強固にし、安全性を確保します。大幅な改修が必要な対策に加え、手軽に行える補強工事についても紹介します。
耐震天井
地震時の天井材や照明の落下は重大事故につながるため、天井の耐震化が有効です。揺れに強い天井を作ることで、落下や崩壊リスクを大幅に軽減できます。耐震天井は、特殊なジョイント部材を使用したり、ブレースを設置したりなど、一般的な天井と仕様が異なります。既存の天井を耐震化する場合は、既存の天井を解体して作り直す必要があり、かなり大がかりな工事となります。そのため、リニューアルや移転時に合わせて施工することをおすすめします。
免震床システム
什器やPCが多いオフィス、サーバー室などでは、床に免震機能を持たせることで揺れによる損壊を防止できます。メーカーにより仕様が異なりますが、地震により一定以上の水平力が発生した際にコンクリートスラブ(建物本体の床)と免震床がすべることで地震エネルギーを減衰する仕組みです。既存床がOA床など二重床である場合のみ施工が可能で、耐震天井と同様に大がかりな工事となります。
収納棚等の固定
収納棚やロッカーを強固に固定することで、転倒や避難経路をふさぐなどのリスクを防ぐことができます。ホームセンターなどで購入できる突っ張りを使用する方法や、金具などで壁や天井、床に固定するといった工事を伴う方法もあります。特に通路沿いや出入口付近、デスク近くの什器は重点的に対策しておきましょう。
火災対策
オフィスで火災が発生した際、延焼による火災の拡大を抑える必要があります。基本的に建築基準法に則って施工されているため問題はありませんが、知識として知っておくと良いでしょう。
防火区画の確認
防火区画は、特殊な仕様の間仕切り壁で、火災の拡大を防いで避難時間を確保するために必要です。建築基準法により、一定の面積ごとだったり、用途が異なるエリア同士の壁に設置が必要だったりと、様々な条件が設定されています。
不燃材の使用
壁・天井・床などに不燃材を使うことで、火災発生時の延焼を防げます。防火区画と同様に建築基準法に則って適切な材料が使われているはずですが、リフォームの際に誤った材料が使用される場合も考えられます。リフォームなどの工事を行う際、内装業者と相談し、建築基準法に準拠した部材を提案してもらいましょう。
避難経路の確保
災害時には、避難経路を使用して安全な場所へ避難する必要があります。そのためにも、広い導線と、障害物のない経路の確保が重要です。
広い動線設計
項目 | 通路幅 |
1人が通行する通路幅 | 60cm~80cm |
車いすが通れる通路幅 | 90cm~ |
2人が通行する通路幅 | 120cm~160cm |
広い動線設計を行うことで、スムーズな避難を行うことができます。ゆとりのあるデスク間の距離を確保したり、廊下に物を置かずに通路幅を確保したりと、安全に避難できるようなレイアウト検討が必要です。通路幅については、1人が通行する場合は60cm、2人がすれ違う場合は120cm以上の通路幅が必要です。安全に避難を行うためには、140cm以上確保しておくと安心でしょう。
バルコニーの経路確保
高層オフィスではバルコニーが避難経路として活用される場合があります。バルコニーを通り、避難ハッチや避難はしごなどで避難する場合もあるため、バルコニーの経路確保が必要です。例えば、エアコンの室外機が床に直置きで設置されている場合は避難の妨げになるため、天井から吊り下げて通路幅を広く確保する必要があります。
避難経路上の開口拡張
動線を広く設計したとしても、避難経路上にある開口幅が狭いと迅速な避難の妨げになります。そのため、開口幅の広い引き戸への交換や、開口部の拡張によって、スムーズに避難を行うことができます。また、電子錠付きの自動ドアの場合は、パニックオープンを採用することで、緊急時に開放状態を保つことができ、迅速な避難が可能となります。
オフィスの防災対策により従業員が安心して働ける職場を作りましょう
オフィスの防災対策は備蓄など一般的な対策に加えて、オフィス内を災害から守る仕様にして安全を確保する必要があります。大がかりな工事を伴う方法から、什器の配置を変えて経路を確保するといった簡単な方法まで様々な対策を行うことができます。ぜひ、本記事で紹介した内容を参考に、従業員一人ひとりが安心して働ける職場をつくりましょう。当社は、オフィスの内装工事を専門に行っております。防災対策に関する工事を検討されている方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。