エコカラットとは?効果や施工方法、後悔しない選び方を解説

エコカラットは空気をキレイにするために役立つ内装壁用のタイルです。湿度をコントロールしたり、有害物質を軽減してくれたり、機能性に優れています。住宅のリビングやキッチンの壁に使われるほか、オフィスや店舗、公共施設などでも活用されています。導入を考えている方向けに、期待できる効果や施工方法、後悔しない選び方について詳しく解説します。

 

エコカラットの基礎知識

エコカラットの基礎知識

まずは知っておきたい基礎知識から解説します。

 

エコカラットとは

内装の壁に使う機能性タイルの商品名です。主な特徴は下記になります。

 

  • (株)LIXILが開発
  • 素材は多孔質セラミックス
  • 環境にも人にも優しい建材
  • 様々な機能をもつ
  • お手入れがラク
  • 上質で多様なデザイン

 

エコカラットの構造

エコカラットの表面層にはナノサイズの多数の孔(あな)があります。湿気は通しても水や汚れは通さないという特殊な構造をしています。粒子の細かい湿気やニオイなどは通して吸着させ、粒子の大きい水や汚れなどは通さない仕組みになっています。

 

エコカラットはいつからあるの?

初代は1999年に発売されて調湿建材の先駆けとなりました。エコカラットは国との共同研究がきっかけで誕生したそうです。当時問題視されていた、住宅の気密化に伴うシックハウス症候群や、結露が招くカビやダニの発生などを改善するために作られました。その後も機能やデザインを進化させ続け、近年「エコカラットプラス」にモデルチェンジされています。

 

エコカラットの効果6選

壁にエコカラットを使うと得られる6つの効果を紹介します。

 

湿度を整える

エコカラットは自然と湿度を調整し、室内の空気を心地よい湿度に保つ効果が期待できます。表面層にあるたくさんの小さな穴から空気中の余分な湿気を吸収し、乾燥すると蒸発させます。吸放湿量については、珪藻土と比べて5〜6倍もあるそうです。壁に張る際は、床面の1/4以上の面積に施工すると効果的です。

 

*LIXIL各壁材の吸放湿量

 

カビやダニを抑制

エコカラットの湿度コントロール機能により、高温多湿の環境で繁殖しやすいカビやダニの発生が抑えられます。また、結露による窓の曇りや水滴を防ぐ効果も見込めるでしょう。

 

脱臭効果

エコカラットにはニオイを軽減させる効果も見込めます。表面層にある小さな穴から、気になるトイレや生ゴミ、ペット、タバコなどのニオイの原因となる成分を吸着して軽減してくれます。

 

有害物質を低減

エコカラットは、空気中に浮遊しているウイルスやホルムアルデヒドなどの有害な物質を吸着して減らす効果が見込めます。花粉や黄砂が気になる季節にも役立ち、安心して過ごせる空間づくりを助けてくれます。

 

お手入れしやすい

エコカラットは水拭きが可能なので日常のお手入れがラクにできます。ホコリや手垢などの軽い汚れは水拭きで落とすことができ、汚れが気になる場合には一般家庭用洗剤を使うと効果的です。また、部分的な汚れにはメラミンフォームの使用をおすすめします。

 

おしゃれになる

エコカラットの導入により上品さや華やかさが加わり、空間がグッとおしゃれな雰囲気になります。とくに大判タイプには高級感をアップさせる効果が見込めます。

 

後悔しないエコカラットの選び方

エコカラットは機能的なだけでなく、デザインや色柄が充実していることも魅力です。選んでから後悔しないために考慮すべきポイントを解説します。

 

施工方法

エコカラットには施工のやり方が異なる「エコカラットプラス」と「エコカラットセルフ」の2パターンがあります。

 

「エコカラットプラス」

エコカットプラス

カットや接着などの施工を必要とする内装壁用のタイルです。一般的には内装業者などに依頼して取付けてもらいます。ゼロエネルギーで調湿機能や消臭機能を持つだけでなく、バラエティーに富んだデザインや色も魅力になっています。しかし、向かない場所もあります。

 

著者の友人はキッチンにエコカラットの採用を考えていたところ、コンロ周りには向いていないと言われたそうです。その他、お風呂場や屋外にも施工できないので注意して下さい。

 

「エコカラットセルフ」

エコカラットセルフ

自分で取り付けることが可能なエコカラットのDIYキットです。石膏ボードや合板などの一般的な下地であれば簡単に取付けできます。マグネットタイプなので特別な技術や接着剤がいりません。取り外しも簡単に行えるため、インテリアや季節に合わせて手軽にデザインを変更できます。

 

著者のように建売住宅の方やマンション住まいの方も、絵画を飾るような感覚で導入できます。おしゃれなデザインが揃っており、著者はとくに観葉植物として人気のモンステラをモノトーンカラーで描いたデザインが気に入っています。

 

写真出典元:(株)LIXIL

 

施工手順

それぞれの施工手順を一覧にまとめました。

 

施工手順  *作業の前に、周囲が汚れないように必ず養生を行う
エコカラットプラス エコカラットセルフ
1 下地の確認 下地となる壁面に凹凸がないかチェック。気になる箇所はパテなどで補修する。もし壁紙を張っていたら剥がしてから施工するのが基本。 1 位置決め エコカラットセルフを取付けたい位置にマスキングテープで壁に印を付ける。
2 墨だし

(すみだし)

施工に必要な線やしるしを付ける。エコカラットを図面通りに施工するための重要な工程。 2 ベースシートを

設置

タッカーを使ってベースシートを壁に設置。タッカーはホチキスのような針を打ち込んで固定する道具で、ホームセンターなどで購入可能。
3 割付

(わりつけ)

タイルをどのように配置するか決める 3 エコカラットを

取り付ける

マグネットの付いたエコカラットを水平にベースシートに取付け。張り直しも簡単に行える。
4 タイルの加工 割付に基づいてタイルの加工を行う。一般的には、両端のタイルを切ってサイズを調整。切断した面はサンドペーパーなどで研磨する。
5 接着剤の塗布 下地に専用の接着剤を塗布。クシ目コテという道具を使い、接着剤に水平の線を付ける。接着剤を塗る面積は1回あたり1.5㎡以下が目安。
6 エコカラットの

張り付け

張り終えたら、汚れがないか仕上がりを確認。手垢程度は消しゴムなどで除去し、接着剤が付いていたら水拭きか、家庭用洗剤を使用

 

サイズ

「エコカラットプラス」と「エコカラットセルフ」のタイルにはそれぞれ異なったサイズ展開があります。

 

「エコカラットプラス」

サイズが豊富に揃い、例えば次のタイプなどがあります。

 

特大サイズ:約90㎝×約30㎝(例:マジェスティックスレート)
大サイズ :約60㎝×約30㎝(例:グランクォーツなど)
中サイズ :約30㎝×約30㎝(例:シルクリーネなど)
小サイズ :約15㎝×約15㎝(例:ストーンⅡなど)

 

デザインによっては、同じサイズを一面に張る場合と異形状のタイルを張り合わせる場合があります。また、多数の小さなモザイクタイルが張ってあるように見えるデザインなどもあります。

 

「エコカラットセルフ」

サイズは2タイプのみになります。

 

A:約60cm×約1m20㎝の縦長の長方形(タイル8枚)
B:約90㎝×約90㎝の正方形(タイル9枚)

 

デザインがもたらす印象

エコカラットはデザインや色柄によってインテリアの印象が大きく変わります。デザインがもたらす印象と製品例を解説します。

 

スレート調

エコカラット スレート調

ヨーロッパで古くから屋根材として使われてきたスレートをイメージし、高級感のあるクラシカルな雰囲気を醸し出します。

 

<製品例>
  • マジェスティックスレート
  • リブスレート

 

レンガ調

エコカラット レンガ調

シンプルながらも陰影を楽しめるデザインです。ナチュラルで温かみのある空間を演出します。

 

<製品例>
  • ヴィスト NX
  • グラナス ハルト
  • ランド〈土もの調〉

 

和風

日本古来の焼き物や縦格子などをモチーフにし、和モダンインテリアを格上げしてくれます。

 

<製品例>
  • 和細工
  • 陶連子(とうれんじ)
  • たけひご

 

天然石風

エコカラット 天然石風

天然石の美しい模様を再現したデザインで、くつろぎの空間をつくり出します。

 

<製品例>
  • ストーングレース
  • グランクォーツ 
  • ラフクォーツ

 

パターン張り

複数の形状の組み合わせにより、シンプル過ぎないワンランク上の雰囲気をつくり出します。

 

<製品例>
  • ディープバサルト
  • レイヤーミックス
  • サンティエ

 

エコカラットを導入する際の4つの注意点

エコカラットを導入する際の4つの注意点

続いて、エコカラットを取り入れる際に注意すべき点を4つ解説します。

 

落としにくい汚れがある

エコカラットに付いた汚れやシミのなかには、落としにくい汚れもあります。例えばコーヒーやケチャップ、油汚れ、タバコのヤニなどは、時間が経つと落ちにくくなります。汚れは放置せず、こまめなお手入れが大切です。

 

また、口紅や髪染め液、クレヨンやペンでの落書きも除去できない場合があるので、付着しないように注意しましょう。お手入れ方法を一覧にまとめたので参考にして下さい。

 

エコカラットプラスのお手入れ方法
汚れの種類 お手入れ方法 使用可能な道具 使ってはいけない物
一般的な汚れ 手垢

歯磨き粉

コーヒー

ケチャップ

醤油

ソース

タバコのヤニ

水拭き キレイな雑巾

メラミンスポンジ

汚れた雑巾

砂消しゴム

キッチン用の硬いスポンジ

金だわし

シンナー

酸性系洗剤

クレンザー

部分的な汚れ

(清掃性アップ)

一般家庭用洗剤
落としにくい汚れ 口紅

マニュキュア

毛染め液

墨汁

ペン

クレヨン

インク

上記では除去できない可能性があるため付着しないように注意する

 

割れる可能性がある

エコカラットは素材の特性上、割れる可能性があります。素材のセラミックスは陶磁器のように無機化合物を焼き固めたものです。セラミックスのメリットには下記が挙げられます。

 

  • 摩耗しにくい
  • 腐食しにくい
  • 耐熱性がある
  • 加工しやすい

 

一方、デメリットにはもろさや割れやすさがあります。小さなキズは、専用のコーキング材や市販のタッチペンなどを用いて目立たないように補修して下さい。目立つキズや欠けについては、施工業者に張替えを依頼しましょう。

 

ピン等を刺せない

エコカラットはセラミックス製のタイルなので、簡単にピン等を刺すことはできません。例えばクロス仕上げの壁なら、カレンダーや時計をピンで留めることができます。ピンを外しても跡はそれほど目立たず、補修も可能です。

 

しかし、エコカラットの場合はフックやビスなどで穴を開けてしまうと、元には戻りません。専用のコーキング材で補修は出来るものの、完全には戻らないので注意しましょう。

 

コンセントカバーの色を配慮

エコカラットを設置した壁にコンセント等を付ける場合は、カバーの色に気を配りましょう。例えばシックな天然石風の壁に、一般的な白い樹脂製のコンセントカバーを取り付けると、悪目立ちしてしまうことがあります。

 

シックなカラーの壁には黒やシルバーのカバーを選ぶのがおすすめです。コンセントカバーや巾木など、細部までこだわって選ぶことでワンランク上の空間を演出できます。

 

オフィスや公共施設でのエコカラットの導入事例

エコカラットは住宅だけでなく、オフィスや公共施設、店舗などでも活用されています。どのような使い方ができるのか事例を解説します。*写真出典元:(株)LIXIL

 

事例:エントランス

事例:エントランス

オフィスのエントランスに「ビンテージオーク」という製品を採用している事例です。木目柄がデザインされ、温かみを感じられる落ち着いた印象の空間になっています。エコカラットの湿度を調整する機能や脱臭機能により、快適で気持ちの良い空間に顧客や取引先を迎え入れることができます。

 

事例:エレベーターホール

事例:エレベーターホール

オフィスのエレベーターホールの壁に、凹凸感のある「ペトラスクエア」という製品を採用しています。シンプルながらも立体的で陰影の美しいデザインは空間を明るく優しい雰囲気にしています。

 

事例:ロビー

事例:ロビー

クリニックのロビーに「フェミーナ」を採用した事例です。有害な物質を減らす効果を持つエコカラットは、クリーンで居心地の良い空間づくりにも役立ちます。ピンク色が可愛らしく華やかな印象になっています。また、ヨーロッパの地中海地域で古くから使われているスタッコに似た左官風仕上げのため、飽きのこない味わい深いデザインだと言えます。

 

事例:食堂・リフレッシュルーム

事例:食堂・リフレッシュルーム

食堂の壁面に「カームウッド」を使用している事例です。目にも優しい木目のデザインはリラックス感のある雰囲気を演出しています。エコカラットのニオイを低減させる効果や手入れのしやすさが、食堂やリフレッシュルームにぴったりです。

 

エコカラットは効果と注意点を理解して導入しよう

エコカラットは内装の壁に使う機能性タイルの商品名です。リクシルが開発し、初代は1999年に発売されました。湿度調整効果や脱臭効果、有害な物質を減らす効果などが期待できます。機能のヒミツは表面層にある無数の小さな孔にあります。

 

また、エコカラットには施工方法が異なる「エコカラットプラス」と「エコカラットセルフ」があります。それぞれ豊富なデザインや色から選ぶことができ、見た目も空気も美しくすることが期待できます。導入してから後悔しないように、注意点を理解した上で検討してみてはいかがでしょうか。

 

 

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