職場がより働きやすい環境になるように新しいワークスタイルの導入を検討している担当者の方も多いでしょう。本記事では、施策を試験運用しながら最適化をしていく「パイロットオフィス」について、効果や成功に導く手順などを解説していきます。パイロットオフィスの特徴を知って、オフィス改革にお役立てください。
パイロットオフィスとは
パイロットオフィスとはオフィスにおいて新しい働き方や設備の導入を試験的に実施する手法を指します。パイロット(Pilot)は「試験的な」という意味をもつ言葉です。パイロットオフィスで取り組む施策の例には以下のようなものがあります。
<パイロットオフィスで取り組む施策例と概要>
施策例 | 概要 |
フリーアドレス | 固定席を持たずに好きな席で仕事ができる働き方 |
集中ブース | 周囲の視線や音を遮断し、1人で作業に没頭するためのスペース |
テレワーク | オフィスに出勤することなく、別の場所(自宅やカフェなど)で業務を行う働き方 |
ハイブリットワーク | 出社型のオフィスワークと、オフィスとは別の場所(自宅など)で 仕事をするテレワークを組み合わせた働き方 |
労働時間の時短化 | 所定労働時間を短くする取り組み |
フレックスタイム制 | 始業・終業時刻を従業員自身で決められる働き方 ※一定期間の定められた総労働時間を満たすことが条件 |
これらの施策を複数組み合わせて実施する場合もあります。パイロットオフィスでは展開したい施策などをオフィスの一部で試運転をするので、大きく展開する前に効果や課題の確認ができます。つまり、横展開を成功させやすい方法と言えるでしょう。
≫ フリーアドレスのレイアウト事例と失敗しないための注意点を解説
パイロットオフィスに期待できる5つの効果
次にパイロットオフィスに期待できる5つの効果を解説していきます。
効果1.従業員の満足度向上
パイロットオフィスは働きやすい環境を作るための取り組みであるため、従業員の満足度向上が期待できます。またパイロットオフィスの実施は、会社が仕事環境の改善に積極的なことをアピールできます。特にアンケートなどで集めた従業員の意見を取り入れれば、声が届いているのを実感させられるため、帰属意識が高まるきっかけになるでしょう。
効果2.施策の早期浸透
パイロットオフィスの導入は、施策などを早期に浸透させられる効果もあります。一度に新しい制度や施策を導入すると適応に時間がかかるものです。例えば、固定デスクを活用したワークスタイルからフリーアドレスに移行する場合、活用方法が分からず困惑する従業員もいるでしょう。オフィスの一部から導入を始めれば、それを見た従業員は具体的なイメージがつかめます。
効果3.コミュニケーションの活性化
従業員の交流が増える効果も期待できます。例えばパイロットオフィスでオープンスペースを試運転した場合、それに対する意見交換はもちろん、従業員同士の顔が見えることがコミュニケーションのきっかけになります。
効果4.リソースの最適化
パイロットオフィスを活用すると、ヒト・モノ・カネのリソースの最適化が期待できます。新しい働き方や施策をオフィスの一部で試すため、大きく展開する前に効果や課題などの具体的な情報を視覚化できます。その情報をもとにオフィスにとって最適な働き方や施策へのブラッシュアップが可能です。
効果5.無駄なコストの削減
パイロットオフィスで実証を繰り返すと、大きなコストをかけずにオフィスの適正化ができます。試運転なしで施策を全社展開すると、オフィスの規模によってはかなりのコストがかかる場合がありますし、必ずしも一度で成功するとは限りません。
パイロットオフィス導入を成功に導く5Step
ここではパイロットオフィス導入を成功に導くための手順を5ステップで紹介していきます。
Step1.目的を明確にする
まず、パイロットオフィスを導入する目的や期待する効果を決めてください。目的が不明確だと検証項目が定まらないため、結果の良し悪しが判断できません。
Step2.従業員の意見を取り入れる
次に大切なのが従業員からの意見を取り入れることです。上層部だけの独断では、良い結果は得られません。実際に働く従業員から生の声を集め、反映させましょう。
Step3.全従業員に周知する
パイロットオフィスを開始するときは全従業員に必ず周知しましょう。パイロットオフィスの成功には従業員からの理解と協力が不可欠です。
具体的な意見を多く集めるためにも、あらかじめ全従業員が目的や実施方法などの詳細を知っている状態にしておくのが大切です。
Step4.段階的に導入する
パイロットオフィスを段階的に導入していくのも成功の秘訣です。はじめは小規模で実施し、課題の改善をしながら範囲を広げればスムーズな横展開ができるでしょう。
Step5.PDCAサイクルを回す
最終的に大規模な導入を成功させたいならPDCAを回すのが重要です。
PDCAとは“Plan(計画)、Do(実行)、Check(測定・評価)、Action(対策・改善)の仮説・検証型プロセスを循環させ、マネジメントの品質を高めようという概念。”
引用:株式会社野村総合研究所
パイロットオフィスは試験導入する部署やエリアを少しずつ広げていくのが一般的なプロセスです。規模を拡大するにあたって、結果の評価や課題の改善を行わなければ成功にはつながりません。従業員からのフィードバックをもとに改善する、ときには最初に設定した目的や効果の見直しをするなどPDCAを回して、よりオフィスにマッチした改革をしていきましょう。
パイロットオフィスに取り入れるべき施策
そして、働き方改革をするにあたって取り入れるべき施策も紹介していきます。
働き方に合った設備を導入する
働き方によって適した仕事環境は異なるため、それに応じた設備の準備が欠かせません。働き方に応じて取り入れる設備の例は以下の通りです。
<取り入れる設備例>
取り入れる働き方の例 | 設備例 |
オープンスペース/集中ブース | 雑音や視線が気にならないように適度な仕切りになるパーテーションやインテリア |
気分転換用の作業スペース | スタンディングデスクやデザインの異なるインテリア |
フリーアドレス | どのような身長・体格の人でも使いやすいデスクとチェア |
このように設備やインテリアは適材適所が大切です。
デジタル化・ペーパーレス化を推進する
ICTを取り入れたデジタル化・ペーパーレス化も必要な施策です。情報をデジタル化すると、働く場所が変わっても普段通り作業が進められるなど、環境の変化に対応しやすくなります。
≫ オフィス移転はペーパーレス化に好都合!その効果と流れを解説
パイロットオフィスの取り組みに効果的なレイアウト例
最後にパイロットオフィスの取り組みに効果的なレイアウト例を紹介します。
事例1:リフレッシュスペースの導入
施工型パーテーションで区切ったリフレッシュスペースの例です。三段ブロックの中央に温かみのある木目調パネルを取り入れ、落ち着く空間にしています。上下をガラスパネルにしているため圧迫感がないのも特徴です。
事例2:エリア分け
集中スペースなどを作る場合はこの事例のように上下隙間なく仕切ると防音効果が高くなります。ガラスパーティションなら、部屋を区切りつつも開放感を保てます。
事例3:会議室の追加
こちらは施工型パーテーションを設置して、オフィスの一部に会議室を追加した事例です。オフィスをオープンスペースにすると会話がしにくくなる場合があります。積極的な交流を妨げないためにも、パーテーションで話せるスペースを作っておくのがおすすめです。
パイロットオフィスとは?成功に導く5Stepと事例を紹介【まとめ】
パイロットオフィスについて期待できる効果や導入を成功させるための手順などを解説しました。全社展開したい施策などをスモールスタートで段階的に拡大することで、早い成功につながりやすくなります。