オフィスの天井高は、空間の快適性や働きやすさにも影響を与えます。開放感があって居心地の良いオフィスでは、仕事の効率アップや社内コミュニケーションの活性化も期待できます。今回はオフィスの天井高が高いメリット・デメリットや高さを活かしたおしゃれな事例、選ぶコツについて解説します。
標準的なオフィスの天井高はどれくらい?
まず、基準や標準的な高さなどの基本的な情報を解説します。
そもそも天井高(てんじょうだか)ってなに?
フロア内の床から天井までの高さのことを言います。天高(てんだか)と呼ばれる場合もあります。天井の高さは、オフィス選びや内装デザインを検討する際の重要な要素となります。例えば、面積が同じオフィスでも、高さが異なると空間の印象はグッと変わってきます。
天井高の基準とは
基準となる数値は、建築基準法に定められています。人が住んだり仕事をしたりする部屋を『居室』といい、居室の天井高は2m10cm以上とされています。同じ部屋のなかに高さの異なる部分がある場合には、平均の高さを採用します。2m10cmは背の高い人が手を伸ばせば届いてしまう高さであり、なかには圧迫感を感じてしまう人もいるでしょう。
標準的な高さはどれくらい?
標準的な高さは2m50cm~3m程度です。建築基準法で定められている2m10㎝以上という数値は、住宅等にも適用される最低限の基準と言えます。昨今では、標準的な住宅の天井高も2m40cm程度になっています。
オフィス天井の種類
オフィスの天井には4種類あります。それぞれの特徴とメリット・デメリットをまとめた一覧を紹介します。
●在来工法天井
骨組みに石膏ボードや岩綿吸音板を張って仕上げます。仕上げ材の石膏ボードや岩綿吸音板には、細かい穴が開いているのが特徴的です。昔から多くのオフィスで採用されているため、在来工法と呼ばれています。
●ライン型システム天井
システム天井とは、下地の骨組みに照明や空調などの設備類をはめ込むタイプの天井を指します。さらにライン型とグリッド型の2つに分類され、ライン型は照明や設備が一列に整列しているのが特徴です。一定の間隔で照明が配置されるため、オフィスの照度が平均化されます。
●グリッド型システム天井
グリッド型は、骨組みが格子状に組まれていることが特徴です。照明や設備が規則的に配置され、部分的な取り外しや交換が可能です。また、照明の向きを変えられるため、レイアウトに柔軟に対応できます。
●スケルトン天井
仕上げ材を張らず、建物の躯体のコンクリートや配管類をそのまま見せたタイプをいいます。開放感があり、カフェやスタジオのようなおしゃれな雰囲気を演出できます。
オフィス天井の種類とメリット・デメリット | ||
種類 | メリット | デメリット |
在来工法天井 | ・比較的コストを抑えやすい ・仕上げ材の種類が豊富 |
・照明や設備類の移設が難しい ・パーテーションの位置が制限される |
ライン型システム天井 | ・照明や設備類の移設が容易 ・照度を平均化できる |
・防音性・耐震性が低い ・照明の向きが調整できない |
グリッド型システム天井 | ・部分的な交換や取り外しが容易 ・レイアウトに柔軟に対応可能 |
・ライン型よりコストがかかる ・吸音性が低い |
スケルトン天井 | ・開放感がある ・おしゃれ |
・空調の効率が下がる ・音が反響しやすい |
オフィスの天井高が高いメリット・デメリット
次に、オフィスの天井高が高いことでのメリット・デメリットを解説します。
メリット
●開放感が得られて広々と感じる
天井が高いと開放感が得られて広々と感じます。圧迫感や閉塞感はストレスの原因となり、生産性を低下させてしまう場合もあります。開放感のあるオフィスでは、新しいアイデアや活発なオフィスコミュニケーションが生まれやすくなるでしょう。
●おしゃれ
天井の高いオフィスは、明るくおしゃれな雰囲気になります。パネルを張らずにダクト類をむき出しにした天井や標準より高さのある空間は、オフィスっぽくない雰囲気を演出できます。ペンダントライトやルーバーなどを使ったおしゃれな内装デザインも可能です。
●空間を有効活用できる
高さがあると、縦の空間を有効活用できます。例えば、壁面収納を置いて収納力をアップさせたり、モニターを吊り下げて社内の情報共有に役立てたりできます。空間を有効活用できれば、狭小オフィスでもスッキリとした空間づくりが可能になります。
●内装デザインの自由度が高い
オフィスの内装デザインの自由度も高くなります。例えば、カフェやアウトドア風のデザインにしたり、天井に色塗装を施してアクセントにしたり、ルーバーを吊り下げたり、個性的なデザインに挑戦できます。また、壁面も広がります。ロゴサインを入れたり、ディスプレイをしたり、高い位置にモニターを取り付けたりなど、様々な活用ができます。
デメリット
●空調が効きにくい
天井が高いと空調が効きにくいというデメリットがあります。空間が広がることで冷暖房が行き届くまでに時間がかかってしまいます。温かい空気は上昇し、冷たい空気は下に溜まる性質があるため、とくに冬場は足元が暖まりにくい場合があります。また、冷暖房効率が下がると、光熱費が上がってしまうでしょう。
●音が響きやすい
音が響きやすいこともデメリットと言えます。ホールのように音や声の残響が残ってしまったり、電話の声が響き渡ってしまったりする場合があります。音に敏感な人や落ち着いて仕事をしたい人にとっては、音や声がストレスに感じてしまうことがあるかもしれません。
●コストがかかる
工事やメンテナンスに通常よりコストがかかる場合があります。例えばパーテーション工事では、高さの分パネルやガラスの面積が増えるため、材料費と施工費がアップします。内装工事においては、塗装やシート張りの施工面積が増えてコストが上がってしまうでしょう。また日常的なメンテナンスも、高さのせいで業者に依頼することが増えると、コストや手間がアップします。
オフィスの最適な天井高を選ぶコツ
続いて、自社に最適な高さを選ぶためのコツを解説します。
用途や業務に合った高さを選ぶ
スペースの用途に合った高さを選ぶと効果的です。例えば、ミーティングスペースやリフレッシュスペースでは、標準より高くすると開放感がアップして、新しいアイデアが生まれたり、会話が弾んだりしやすくなります。クリエイティブな業務にも高い方がおすすめです。しかし、アットホームで落ち着いたオフィスを実現したいなら、標準的な高さで十分だと言えます。また、コールセンターのように、頻繁に声や電話の音が聞こえているオフィスも、標準的な高さの方が音は響きにくいでしょう。
窓のサイズや数によって選ぶ
窓のサイズや数によっては、標準的な天井高でも開放感が得られる場合があります。本来は高い方がより開放感を得られます。しかし、窓が大きかったり、数が多かったりして抜け感があると、標準的な高さでも広々と感じられます。一方で窓が小さかったり、少なかったりするオフィスでは、天井を高くすることで閉塞感や圧迫感を感じにくくなります。オフィス選びでは、数値だけでなく抜け感にも注目して下さい。
OAフロアを考慮して選ぶ
OAフロアを考慮して選ぶことも大切です。OAフロアは、フリーアクセスフロアとも呼ばれる二重床のことです。パソコンや電話などのゴチャつく配線も、床下を通すことでスッキリとします。比較的新しい賃貸ビルでは、あらかじめ設置されていることが多いでしょう。
しかし、新たにOAフロアを設置したり、より高さのあるものに変えたりする場合は、内見時より天井高が低くなってしまいます。OAフロアを考慮した高さで、オフィスデザインやレイアウトを検討しましょう。
既存什器やパーテーションが再利用できる高さを選ぶ
オフィス移転の際は、既存什器やパーテーションが再利用できる高さを選ぶことでコスト削減につながります。天井はフラットとは限りません。梁やダクトスペースなどで凹凸がある場合も多いでしょう。
≫【オフィス移転】成功のポイント・スケジュールと流れを徹底解明
既存什器が設置できなかったり、パーテーションが使えなかったりすると、移転の段取りが変わり、コストもアップしてしまいます。高さだけでなく、凹凸も確認して選ぶようにして下さい。
≫ オフィスのパーテーション工事や間仕切り施工についてプロが解説
天井高を活かしたおしゃれな事例3選
最後に、天井高を活かしておしゃれにデザインされている事例3選を解説します。
スケルトン天井の事例
パネルを張らずに、コンクリート打ちっぱなしのスケルトンにしている事例です。通常は天井内に隠しているダクト類をあえて見せることで、インダストリアルでモダンな印象になります。
2つの事例ではブラックを合わせて、スタイリッシュでおしゃれに仕上げています。
照明器具をアクセントにしている事例
照明器具にこだわっておしゃれな演出をしている事例です。標準的なオフィスでは、天井パネルに蛍光灯やLEDの照明器具が取付けられています。しかし、この事例では高い天井高を活かし、ペンダントライトやダウンライトでドラマティックな演出をしています。天井を含めた空間全体をデザインし、照明器具をアクセントにしています。
天井にデザインを施している事例
ルーバーを取り付けたり、化粧梁を設けたりしてデザインを施している事例です。オフィスの天井が高いと開放感が得られる一方、落ち着かないという場合があります。
ルーバーや化粧梁を設けることで、メリハリを付けられます。平面的な天井と比べ、ワンランク上のおしゃれなオフィスデザインに仕上がっています。
オフィスの天井高を選ぶコツと高さを活かしたおしゃれな事例【まとめ】
天井高の基準は、建築基準法において最低限の数値が定められています。標準的なオフィスの天井高は、2m50cm~3m程度です。天井高が高いと開放感が得られて広々と感じられたり、おしゃれに見えたりする一方で、空調が効きにくかったり、コストがかかったりというデメリットもあります。天井高を選ぶ際は、スペースの用途や自社の業務に合うかを確認して下さい。また移転の際は、床のOAフロアの有無や、既存什器・パーテーションの高さも考慮して選ぶと良いでしょう。