建設資材や人件費の高騰、輸送費やその他多くの物価が上昇しています。工事を依頼すると高額なお金がかかるので、自分で内装工事をする人も増えてきました。今まではベニヤ板で間柱を作って設置した壁に塗装したり、クロスを張っていた人が、次に手を出すのはLGSかもしれません。そんなLGSについて施工のプロが分かりやすく解説していきます。
LGSとは何か?
簡単に言うと、壁や天井を作る金属でできた下地のことです。Light Gauge Steel(ライト・ゲージ・スティール)と言い、日本語では軽量鉄骨下地を指します。壁や天井の骨組みを作るときに使用されます。材質は溶融亜鉛めっき鋼板やステンレスを使用しています。形や長さはJIS規格で決められており、全国どこでも同じ品質の材料を仕入れることが可能です。
軽天工事と軽鉄工時の違いとは?
天井のことを軽天工事、壁のことを軽鉄工事と言ったりしますが、明確な違いはありません。どちらでも基本的な作業内容は同じです。
LGSは壁や天井の下地
LGSは壁や天井を作るために必要な下地です。骨組みを作り石膏ボードやベニヤ板を張ることで平面の壁や天井が出来上がります。下地は木材を使用することもありますが、加工できる職人さんの減少と高齢化が進んでいるのでLGSを使用することが多くなっています。
LGSの規格
LGSは規格が決まっています。JIS(ジス)規格品といい、JIS(ジス)とは日本産業規格(JIS=Japanese Industrial Standardsの略)のことです。詳しくは「日本規格協会グループ」のページをご参照ください。
LGSの部材名称
壁の場合
壁を作る場合は部材が少なく格子状になっています。
ランナー
スタッドを建て込むために地面と天井に這わせるように設置します。設置する際は釘やビスを使用するのが一般的です。設置箇所がコンクリートの場合は専用の打ち込みガンがあります。手で釘やビスを打ち込むよりも早く施工することが出来ます。
スタッド
スタッドの形はコの字タイプと□のタイプがあり、石膏ボードやベニヤ板を貼り付けられるように建て込んでいきます。スタッドの固定方法は上下のランナーにビス止め。通常のビスに比べて小さく短いビスを使用します。スタッド同士の間隔は300mm〜450mm。LGSの上に張る材料や石膏ボードの枚数に左右されます。石膏ボードを2枚貼る場合はスタッドの感覚は450mm、1枚張る場合は300mm間隔になります。
≫ 内装工事で使用されるスタッドとは?種類や施工の流れを解説
振れ止め
振れ止めはスタッドが横に揺れないようにするための補強材です。天井の高さが高くなればなるほど振れ止めの本数は増えていきます。振れ止めは1200mmの間隔で設置します。
スペーサー
スタッド自体の補強材。□のタイプならスタッド自体が潰れる心配はありませんが、コの字タイプは少し衝撃が加わっただけで潰れてしまう可能性があるので、補強のためにスペーサーを設置します。
天井の場合
吊りボルト
天井から吊るす全ねじボルト。ボルト同士の間隔は通常900mm。ボルトの末端にハンガーを設置できるようにします。このとき気をつけるのは地面に対して垂直になっていることです。ボルトが斜めに設置されていると仕上げがキレイに行かないので。
ナット
吊りボルトに取り付け高さ調整をしたりハンガーを固定するために使用します。
ハンガー
吊りボルトの末端に取り付けて、野縁受けを固定できるようにする金物のことです。
野縁受け
ハンガーに固定しシングル野縁、ダブル野縁を固定するための部材です。形がCの形をしていることから「Cチャン」と言われたりします。ちょっと可愛い名称ですね。野縁受け同士の間隔は900mmとされています。
野縁受けジョイント
長さが足りないときに野縁受け同士をジョイントして長い距離を施工するための部材です。野縁受け自体の長さが4〜5mほどありますが、廊下や大広間などは一辺の長さが10m以上あることもよくあります。
シングルクリップ、ダブルクリップ
野縁受けとシングル野縁、ダブル野縁を固定するために必要な金物です。手で曲げられるくらい柔らかいタイプと、ボルトで締め付ける硬い緊結性能が高いクリップがあります。前者は内装で使用されることが多く、後者は外部の天井に使用されることが多いです。
シングル野縁、ダブル野縁
野縁受けとクリップを使用して固定する長尺の部材。断面がMの形をしているので「Mバー」と呼ばれます。野縁同士の間隔は255mm〜300mmですが、耐震性や耐風圧によってピッチが変動します。外部からの影響が少ないところはピッチが広く、外部の影響を多く受けそうなところほどピッチが短くなります。天井の施工をするときは、基本的にシングル野縁とダブル野縁の両方を使用します。基本はシングルを使用し、天井ボード同士のジョイント部分にはダブル野縁を使用します。
シングル野縁ジョイント、ダブル野縁ジョイント
長さが足りないときに野縁同士をジョイント(接続)して長い距離を施工するための部材です。野縁自体の長さは4〜5mほどありますが、廊下や大広間などは一辺の長さが10m以上あることもよくあります。
LGSのサイズや材質
サイズや材質は壁や天井の大きさや広さによって変わっていきます。住宅のように狭い範囲なら小さい部材で足ります。病院や役所や大型商業施設のように大きな壁や天井が必要なところでは部材も大きく長くなってきます。また環境によって材質が変わることがあります。通常は溶融亜鉛めっき鋼板という金属を使用しますが、錆びやすい箇所つまり湿気の多い箇所や海と近い建物の場合はステンレスを使用することがあります。サイズや材質については、建築用鋼材下地材 JIS A 6517 (壁・天井)を参照すると分かりやすいです。
LGS工事のメリット、デメリット
LGS工事のメリット
工事が早い
LGSは加工がとても容易なので工事の時間が短いです。材料が軽くて扱いやすいこと、少ない部材で広い壁や天井の下地を作ることができるからです。
木材に比べ品質が安定している
LGSは金属の加工品であり湿気や温度で大きく変形することがありません。木材の場合湿気を多く含んでいた場合、乾燥するとねじれや収縮が起き施工後も同じような動きをすることがあります。その点、施工前後ともに品質が変化しにくいのがLGSです。
男女関係なく加工しやすい
LGS自体がとても軽量なので女性でも持ち運びが容易で加工、組み立ても可能です。
仕様変更がしやすい
解体しやすく後片付けが楽で用途を変更することも可能です。仕様変更するなら壁を解体しきれいに掃除したあと、新しくLGSで下地を組み石膏ボードやベニヤ板を貼りクロスや塗装、タイルなど自分好みに仕上げていくことが可能です。しかし、場所によっては建築や消防法にかかることがあるので事前に調査する必要があります。近くに工務店や建築事務所があれば相談してみるといいですよ。
LGS工事のデメリット
メリットが多いように感じるLGSですが、もちろんデメリットも存在します。
工事中の火気に注意
LGSの加工をする際、必ず火花がでる作業をしなければなりません。火花が他に飛び散らないように養生しましょう。飲食店の工事等の場合は近くにガスボンベや引火性のものが近くにある場合は加工場所を遠ざけるか、引火物を遠ざける必要があります。最新の注意を払う必要があります。
場所や部材によってサビが発生する可能性あり
LGSは溶融亜鉛めっきと言ってサビに強い加工がされていますが、海の近くや極端に湿気が多いところでは錆が発生します。その他にも加工した切り口の防錆塗装を怠っていたり、違う金属同士が触れ合うことで起きる「電蝕」によってLGSの一部分だけが激しく錆びて弱くなることがあります。対策としてステンレスのLGSを使うことがあります。加工後防錆塗装をする必要がありません。細かい部品やビスをすべてステンレスにすることで「電蝕」を起こすリスクもなくなります。その代わり金額が2倍以上に上がる事がありますので、しっかり調べておきましょう。
材質によって金額の変動が大きい
前述したように通常のLGSとステンレス製のLGSでは金額が2倍ほど違うことがあります。中間くらいの品質の「ザム」や「スーパーダイマ」があります。通常のLGSよりは高額になりますがステンレスほどではありません。
LGSとは?軽天工事・軽鉄工事について施工のプロが解説【まとめ】
LGSがどういうものかお分かりいただけたでしょうか。LGSは住宅、公共施設、店舗など幅広く活躍しています。北は北海道から南は沖縄まで使う場所も選ぶことなく使用できます。JIS規格品なので品質は常に安定しています。LGSの需要はこれからどんどん増えていくでしょう。最近は古い住宅をリフォームしたり仕様変更するリノベーションも増えていますし、自分で施工する人もいる状況です。LGSについて詳しくなれば、専門業者に頼らずに、材料費のみで理想の壁や天井を作ることもできます。