石膏ボードやコンパネなどの壁を張り付けるときにビスを使用しますが、ビスを使用するにあたって、ビスピッチというものが存在しているのをご存じでしょうか?実はビスピッチが適当だと、施工後に不具合が生じる可能性があるのです。そこでこの記事では、内装工事で守らなければいけないビスピッチについて解説します。ビスの長さに関しても決まりがあるので、併せて解説していきます。
ビスピッチとは?不具合に繋がることもある
ビスピッチとは、ビスとビスの間の距離のことです。石膏ボードやコンパネなどを張り、壁を設置するときにビスを打つ必要がありますが、ビスピッチが適当だと不具合が起きる可能性があります。例えば、石膏ボードにひびが入ったり、壁が浮いてしまいクロスが破れたりするなどの可能性があります。ほかにも、地震や風などの力に耐える力が弱くなってしまうかもしれません。
ビスピッチの仕様が記載されているマニュアルがある
ビスピッチは、次のような仕様書によって定められています。
- 公共建築工事共通仕様書
- 木造住宅工事仕様書
- 石膏ボード施工マニュアル
ほかにも、耐火や遮音構造など、仕様書によって変わります。現場によっても異なるので、気になる方は業者に確認するのが確実です。
①公共建築工事共通仕様書
国土交通省監修の公共建築工事標準仕様書では、次のようにビスピッチが決められています。
下地 | 施工箇所 | 下地に接する部分の留付け間隔(㎜) | 備考 | |
周辺部 | 中間部 | |||
軽量鉄骨下地、木下地 | 天井 | 150程度 | 200程度 | 小ねじ等の場合 |
壁 | 200程度 | 300程度 |
引用:公共建築工事標準仕様書
公共建築工事標準仕様書は、官庁施設などの工事の仕様を記載している新築工事で使用されるマニュアルです。自事体運営の体育館やホール、学校などが該当します。ちなみに、改修工事では、公共建築改修工事標準仕様書を使用します。
②木造住宅工事仕様書
独立行政法人住宅金融支援機構監修の木造住宅工事仕様では、次のようにビスピッチが定められています。
壁(界壁以外)の留め金具の種類と長さ・留付け間隔
留め金具の種類と長さ | 留付け間隔 | |||||||
GNFくぎ | ステープル | 木ネジ | タッピングねじ | 外周部 | 中間部 | |||
壁(界壁以外) | 1枚張り | GNF40以上 | 40㎜以上 | 28㎜以上 | 150㎜以内 | |||
2枚張り | 1枚目 | GNF40以上 | 40㎜以上 | 28㎜以上 | 150㎜以内 | |||
2枚目 | GNF50以上 | 50㎜以上 | 40㎜以上 | 200㎜以内 |
天井(界床以外)の留め金具の種類と長さ・留付け間隔
留め金具の種類と長さ | 留付け間隔 | |||||||
GNFくぎ | ステープル | 木ネジ | タッピングねじ | 外周部 | 中間部 | |||
床(界床以外) | 1枚張り | GNF40以上 | 40㎜以上 | 28㎜以上 | 150㎜以内 | 200㎜以内 | ||
2枚張り | 1枚目 | GNF40以上 | 40㎜以上 | 28㎜以上 | 300㎜以内 | |||
2枚目 | GNF50以上 | 50㎜以上 | 40㎜以上 | 150㎜以内 | 200㎜以内 |
参考:ボード工事のビスピッチに決まりはある?仕様書や重要度について
上記の表のようにビスピッチが定めらている木造住宅工事仕様書では、契約図書や申請図書、施工する際のマニュアルとして用いられています。
③石膏ボード施工マニュアル
一般社団法人 石膏ボード工業会監修のマニュアルは、次の表の通りです。
工法 | 留付具 | 留付間隔(㎜) | ||
周辺部 | 一般部 | |||
在来軸組工法 | 一般壁 | 釘、ねじ | 200以下 | 300以下 |
耐力壁(告示仕様) | 釘 | 150以下 | 150以下 | |
省令準耐火仕様 | 釘、ねじ | 1枚目:150以下 | 1枚目:150以下 | |
2枚目:200以下 | 2枚目:200以下 | |||
枠組壁工法 | 釘、ねじ | 100以下 | 200以下 | |
鋼製下地 | ねじ | 200以下 | 300以下 |
参考:石膏ボード施工マニュアル
ほかにも、ボードの周りは、端から10㎜くらい内側にビスを留めなければいけません。
ビスピッチマーカーを利用して正確なピッチを
ビスピッチを守るために、現場でも工夫を凝らしています。一例として紹介したいのが、ビスピッチマーカーです。ビスピッチマーカーとは、マーカーに専用の液を流し、ボードの側面に沿ってスライドさせることで、ビスの間隔を簡単にマーキングできるものです。
ビスの長さも決められている
ビスピッチだけではなく、ビスの長さも決められています。一例として、吉野石膏株式会社が発行している、1枚張りと2枚張りのときのビスの長さを紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
①1枚張り
1枚張りのときのビスピッチは、次の表の通りです。
厚さ | ネジの長さ |
9.5㎜ | 20㎜以上 |
12.5㎜ | 22㎜以上 |
15㎜ | 25㎜以上 |
21㎜ | 32㎜以上 |
参考:一般的な壁工法
1枚張りでは、2枚張りに比べボードの厚みが薄いため、ビスも2枚張り時よりも短いものを使用します。
②2枚張り
2枚張りのときのビスピッチは、次の表の通りです。
厚さ | ネジの長さ |
9.5+9.5㎜ | 28㎜以上 |
9.5+12.5㎜ | 32㎜以上 |
9.5+15㎜ | 38㎜以上 |
12.5+12.5㎜ | 38㎜以上 |
12.5+15㎜ | 38㎜以上 |
15+15㎜ | 41㎜以上 |
15+21㎜ | 51㎜以上 |
21+21㎜ | 57㎜以上 |
参考:一般的な壁工法
この表では、上張り(2枚目)を固定するときの、ビスの長さを記載してます。
内装工事で行うボード張りのビスピッチには決まりがある【仕様書】
この記事では、内装工事で守らなければいけないビスピッチについて解説しました。ビスピッチは、ハウスメーカーや仕様書によって異なります。ビスの長さにも決まりがあり、決まり通りに施工されていなければ不具合に繋がる可能性があります。ビスピッチマーカーのように、ビスピッチを正確に記してくれる道具もありますので、施工業者が使用してくれていると安心感を覚えるでしょう。正確なビスピッチで工事が行われているかは施工後ではわかりにくいので、気になる方は施工中に現場に足を運んだり、仕様書やマニュアルを見せてもらったりするなど、工夫と労力をかける必要があります。