オフィス移転時におしゃれなインテリアとフリーアドレスを取り入れている企業が増えてるけど、そのフリーアドレスって『おしゃれに見えるだけで本当に効果があるのか』と疑問に思う方がいるのではないでしょうか。ここでは導入した時に仕事環境がより良くなるフリーアドレス型の座席が今の時代に適ている理由や導入の際の確認すべきポイントを解説します。
今こそフリーアドレス化が求められる理由

『出勤する人』と『テレワークをする人』と『出勤&テレワークをする人』の3つの出勤形態が混在する中で、効率的なオフィスの使い方の一つにフリーアドレスというレイアウトを取り入れる手法があります。東京都新型コロナウイルス感染症対策本部は、2021年1月に緊急事態措置期間中の都内企業に置けるテレワークの実施についてその状況を調査しました。その中で緊急事態宣言期間中に、約6割の企業が週3日以上テレワークを実施していると報告しています。つまり、一つの企業の中に出勤とテレワークをするワークスタイルが混在していることがこの調査からわかりました。
ワークスタイルの変化による日本HP本社のオフィス移転
2021年4月、日本HP社は江東区にある本社ビルを引き払うと報じられ話題となりました。2009年にこの本社ビルが完成した頃は1フロアがサッカーコートの1面ほどの広さがあり、1フロアの広さとしては日本一と話題になったほど広い本社ビルでした。しかし、新型コロナが発生し、わずか一年ほどでこの本社を手放す決断をしたのです。
日本HP社も他の企業と同じく、コロナ禍の緊急措置として、自宅からのテレワークを行う就業スタイルを取り入れました。そして、社員数約5000名という大企業である一方で、1フロアがサッカーコート1面分もある広さのオフィスに、出社する社員は1割ほどとなってしまいました。こういった状況が続く中で、日本HP社は話題となったオフィスを売却し品川のオフィスビルへ本社移転を決意しました。
日本HP社は名古屋支店が2008年度の日経ニューオフィス賞を受賞し、その時すでにフリーアドレスを導入しており、時間と場所にとらわれない、進化したワークスタイルを実現しています。新社屋への移転は2021年11月に行う予定で、新しいワークスタイルのパイオニアとして、今後の動向も楽しみな企業です。
フリーアドレスの歴史とこれから
以前は、座席を共有することで一人一人の固定席よりもスペースが省けるという観点から、フリーアドレスを導入をする企業がありました。昔は今のようにペーパーレスの環境やDXが整っていないということもあり、固定費が下がるというコストに着目してフリーアドレスを導入する傾向にありました。そういった中で、現在は近年の働き方改革に見られるような生産性の向上や、働き方の多様性を求められる時代の流れからフリーアドレスの導入が見直されるようになったのです。
オフィス移転を機にフリーアドレスを導入するため確認しておきたいポイント
持ち運べるビジネスツールを用意する
デスクトップPCよりも持ち運べるモバイル型のノートパソコンは必須です。まだ、固定席では電話機は一人一台が当たり前でしたが、その代わりにスマートフォンなどで対応しましょう。最近は会社にかかってきた電話をスマートフォンで受け取ることができるサービスもあります。社員が流動的に動けるため使用しているビジネスツールを見直すと良いでしょう。
運用ルールを決める
個人のスペースがないため自席に書類を保管することができず、バックや上着などを置く場所も限られてしまうため私物を収納するスペースが必要となります。また、出社している従業員とそうでない従業員がわかるように掲示板を作る、もしくはシステム導入をすると良いでしょう。例えば、SlackやSkypeなどのメッセージングアプリはアカウント保持者が会議中だったり、不在にしているかなど状況が一目で把握できます。このようなアプリを利用するのも一つの手段です。
SlackやSkypeは、比較的利用経験のある人が多いので導入がしやすいでしょう。フリーアドレスは自由に座ることができるため、誰がどこにいるのか把握しにくい特性もあり、呼び出したいけど席を離れているのか、それとも外出してしまったのかわかりにくい場合があるため出社状況はわかるようにしておきましょう。
フリーアドレスが適した業務と不向きな作業
集中した作業をする時のスペースを確保しましょう。コミュニケーションが活発化される効果とその反対に、集中した作業に支障をきたすケースがあります。目の前でガチャガチャと人の動く環境は、PCで集中する作業には向いていません。ブースのような簡易的にも囲まれたワークスペースを幾つか用意する、もしくは移動式の簡易パーティションを用意すると良いでしょう。
すべての固定席を廃止しない
社内には、営業のようなあまり席にいない業務がある一方で、経理業務のように常時在席している業務があります。全ての固定席を廃止するのではなく、その社員の業務内容に合わせて必要な部署は固定席にしましょう。
フリーアドレスには2つのスタイルがある
フリーアドレスには、どこでも着席可能な完全なものと、グループやチーム制という2通りのスタイルがあります。
完全フリーアドレス型
スタートアップやベンチャー企業など少人数ではあるが、一体感を持つことが重要な業務を行う企業に向いています。会社の立ち上げ時というのは、環境よりも一体感とパワフルさが重要になるでしょう。そのため、多少業務が異なる間柄でも、コミュニケーションを取り、会社の発展に向かうような環境を作ることができます。
チーム制フリーアドレス
チーム制に分けると帰属意識が高まり、生産性や意欲の向上が見込めます。ある程度の規模(30人程度)の企業となると、社内に幾つかの部署やチームができます。特に営業の部署は常に在籍しているわけではありません。合わせて数字を追わなければならないという観点から、良きライバルとしての別チームを意識でき、かつ自分のチームに帰属意識が芽生えるという点ではフリーアドレスが適した業務といえます。
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オフィス移転でフリーアドレスを導入する際に確認すべきポイント【まとめ】
少しでも自社の職場環境にこれまでと異なった座席のスタイルをイメージできるようになりましたか。近年は時代の流れが早くなってきていると言われています。働き方の多様性や、ワークスタイルの変化の波に飲み混まれないように、自社が今の時代に適した働くスタイルを提供できているか、改めて考えてみてください。