新型コロナウイルスの感染拡大にともない、個室を導入する店舗が増えています。しかし、個室の種類の違いや、導入するメリットやデメリットなど、疑問に感じる部分もあるでしょう。そこでこの記事では、半個室について解説していきますので、ぜひご覧ください。
個室の種類
おおきく分類すると、半個室と完全個室の2つに分類できます。導入を考える前に、それぞれの特徴を理解しておくと便利です。
半個室
仕切りがあるものの、完全に独立していない空間のことです。壁の上部が抜けていたり、ドアがなかったりするなどの特徴があります。一例を挙げると、テーブルをカーテンや衝立(ついたて)、すだれやロールスクリーンなどで仕切っている部屋が該当します。また、2面もしくは3面が壁で仕切られている空間も当てはまります。
完全個室
他の空間から独立しており、壁や建具(たてぐ)などで施工されています。半個室に比べて、周りの声が聞こえにくく、プライバシーが保たれている空間です。具体的には、四方が壁に囲まれており、ドアがある空間が該当します。壁の中に隠されている、ユニークな個室を導入している店舗も存在しています。
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導入の5つのメリット
半個室を導入するメリットは、次の5つです。
- 様々な客層の来店を見込める
- 客単価を上げられる
- 完全個室より工事費用が安い
- 来店状況に合わせて仕切りを変更できる
- 感染症対策になる
周囲の声が聞こえにくい完全個室の方が魅力的に感じるかもしれませんが、工事費用が高くなってしまいます。
①様々な客層の来店を見込める
半個室の導入で、様々な客層の来店を見込めます。周囲が気にならないプライベート空間を提供できるため、安心感を得たり恥ずかしさを解消できたりするからです。例えば、赤ちゃんを連れて居酒屋に行くとき、赤ちゃんの泣き声で周りに迷惑をかけてしまう可能性があるため、来店をためらってしまうママもいます。とくに静かな環境だと周囲が気になってしまうので、来店しにくいと感じてしまうものです。また、美容室でカラーリング時に、ラップやタオルを巻いているところを、周囲に見られたくないと感じる人もいるでしょう。
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②客単価を上げられる
リラックスした状態で過ごせるため、滞在時間が長くなり、客単価を上げられます。それから、お客様に満足してもらえるサービスも、あわせて提供することがポイントです。一例を挙げると、美容室でお客様にリラックスしてもらえる空間にするだけではなく、頭皮を綺麗にするヘッドスパのようなサービスを行うと喜ばれます。プロに施術してもらうことで、自分に自信を持てるようになる人もいるでしょう。
ほかにも、飲食店で半個室限定のコース料理やメニューを提供するのも、客単価を上げるひとつの方法です。
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③完全個室よりも工事費用が安い
壁や建具などを施工する完全個室よりも、工事費用が安く済みます。半個室は、カーテンや衝立などの簡易的な仕切りを施工するだけで済むからです。例えば、完全個室は壁や建具などを施工するため、10〜100万円くらいの工事費用がかかります。しかし、半個室は1〜10万円くらいの金額で設置可能です。
④来店状況に合わせて仕切りを変更できる
来店状況に合わせて仕切りを変更できるのも、半個室のメリットです。店舗の作りにもよるものの、衝立やカーテンなどの仕切りを一時的に撤去すれば、パーティ会場にできます。また、大衆居酒屋やカフェなどを半個室にすることで、席稼働率の向上も可能です。例えば、4名掛けのテーブル席が2席ある場合、完全個室では4名様ずつしか入店できません。しかし、半個室のテーブル席では、仕切りを撤去すれば、8名様での入店が可能です。移動可能な2名掛けのテーブルを用意しておけば、10名様でも着席できます。このように半個室では、席稼働率の改善も見込めるのです。
⑤感染症対策になる
半個室は、ほかのお客様との接触を防げるため、感染症対策になります。とくに飲食店では、時短営業や緊急事態宣言などにより、今まで通りの営業を行えなかった店舗も多かったと思います。お客様に安心して利用してもらうためにも、これからの時代では、感染症対策を行う必要があるでしょう。
エアロゾル感染については、国では30分ごとに5分程度の換気が推奨されていますが、多くの飲食店では国の基準以下の換気で、充分な換気を行えているという専門家の調査結果がでています。しかし、完全個室のような換気しにくい空間では、30分ごとに5分以上の換気、または空気清浄機の利用など、徹底した対策が必要です。
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半個室を導入する3つのデメリット
半個室を導入するデメリットは、次の3つです。
- 通常よりもスペースが必要
- 回転率が下がる
- 通常よりも工事費用がかかる
それぞれのデメリットについて、詳しく解説していきます。
①通常よりもスペースが必要
カーテンや衝立など仕切りを施工するため、テーブル席を設置するよりもスペースが必要です。例えば、小上がりに衝立を設置するケースでは、テーブルの間に衝立を置くスペースが必要になります。ですから、同じ数の座席を確保したいときは、テーブル席を設置するよりも広い物件が必要になり、家賃が高くなるのがデメリットです。家賃を抑えたい方は、半個室の数や座席を減らすなど、対策を行いましょう。
②回転率が下がる
リラックスして過ごせると、回転率が下がる傾向にあります。ですから、客単価を低く設定し、回転率を上げて売上をあげるスタイルの店舗は導入に向いていません。客単価をアップし、利益を見込めるような工夫が必要です。例えば、美容室で溜めたお湯に頭全体に浸す頭浸浴(とうしんよく)のメニューを追加し、至福のリラックスタイムを提供するのもいいでしょう。日常では味わえないようなメニューを取り入れることで、客単価アップに繋げられます。
③通常よりも工事費用がかかる
カーテンや衝立などの仕切りを設置するため、通常のテーブル席を導入するよりも費用がかかります。先ほども解説したように、半個室(仕切り)は1〜10万円くらいで施工できますが、テーブルを設置するだけならこの費用がかかりません。また、半個室を壁で仕切る場合には、より費用がかかります。
半個室のニーズがある5つの業種
半個室のニーズがある店舗は、次の5つの業種です。
商品やサービスの価格、ターゲットなどの条件を考慮して、半個室の導入を判断しましょう。
①居酒屋
大衆居酒屋は、基本的にオープンスペースですが、半個室の導入で幅広い客層のお客様の来店を見込めます。一例を挙げると、次のようなお客様や場面で利用するきっかけになるでしょう。
- 記念日のデート
- 誕生会
- 小さな子供を連れているママ会
- 会食や接待
完全個室を求めている場合もありますが、完全個室を施工する費用や感染症対策など、店舗の都合で半個室の導入の方がメリットが多い場合があります。
②カフェ
最近では、個室のあるカフェが人気を集めています。特に、次のようなお客様や場面で利用されています。
- 小さな子供を連れたママ会
- デート
- 女子会
- テレワーク
とくにテレワークを推奨しているカフェでは、Wi-Fiやコンセントなどが完備されているため、ビジネスマンからのニーズがあります。会議室や通話スペース、プリンターが設置されている店舗は、ビジネスシーンでより活用されるでしょう。
③美容室
タカラベルモント「ロイヤルカスタマー調査」N=256によると、半個室の美容室を求めているお客様は、全体の58.2%の割合で存在しています。特別感があり、プライベートを保てる空間にすることで、お客様がリラックスしてサービスを受けられるからです。また、カウンセリング時に、お客様が髪型の悩みや要望を話しやすいのもメリットです。一例を挙げると、複数の座席がある髪質改善サロンに半個室を導入することで、周囲が気にならないプライベート空間を作れます。また、小さな子供がいる主婦もベビーカーで来店しやすくなるため、客層を広げられます。
④ネイルサロン
半個室のネイルサロンなら、プライバシーが保護されており、リラックスして施術を受けられます。周りのお客様に施術内容を知られたくない方、非日常を味わいたい方などにおすすめです。例を挙げると、店内をブラウンや黒を基調としたモダンな空間にすることで、大人の女性に好まれる空間になります。心地よく座れるソファーを用意したりオルゴールのBGMを流したりするなど、お客様がリラックスできる空間作りを行うのがおすすめです。
⑤歯科医院
歯科医院を半個室にすることで、お客様のプライバシーを確保できます。お客様のなかには、隣の方に顔や施術しているところなどを見られたくない方もいるので、プライバシーを確保することはメリットです。また、完全個室と比べてお客様の様子を伺いやすく、スタッフへの指示も通りやすいため、働きやすい空間にできます。ほかにも、全てを仕切られていない半個室では、空調を全ての部屋に用意する必要がないところもメリットです。完全個室では全ての部屋に空調を設置しないと快適に過ごせないことがありますが、半個室では空調が効きやすいため、電気代や設備などのコストを抑えることに繋がります。
半個室を導入する際の3つの注意点
半個室の導入では、次の3つのポイントに注意しましょう。
- 店内の雰囲気に合わせた素材を使用する
- スタッフが働きやすい動線設計にする
- 関係法令を遵守する
それぞれの注意点について、詳しく解説していきます。
①店内の雰囲気に合わせた素材を使用する
店内の雰囲気やコンセプトに合わせた、素材を使用するのがおすすめです。例えば、和室に仕切りを施工するときは、すだれやのれんなどを設置すると雰囲気を合わせられます。また、カフェでは店舗の雰囲気によるものの、ファブリック(布製品)やレースカーテンなどを使用するのがおすすめです。ほかにも清潔感を重視する歯科医院では、白を基調にした内装や汚れにくい素材のものを使用することで、清潔感のある空間にできます。
②スタッフが働きやすい動線設計にする
お客様の居心地の良さだけではなく、スタッフが働きやすい動線設計も重要です。料理の提供時間の短縮や少ない従業員で営業を行えるなど、店舗運営にメリットをもたらすからです。一例を挙げると、居酒屋では仕切りの横幅を人が通れるくらい空けておくと、料理を提供しやすくなります。また、半個室の近くに、一時的に料理を置ける棚を設置すると、料理提供がスムーズになります。
③関係法令を遵守する
深夜に酒類を提供する居酒屋は、所轄の警察署に「深夜酒類提供飲食店の届出」をしなければいけません。「深夜酒類提供飲食店の届出」では、次のような要件が定められています。
- 客室が2つ以上ある場合、客室の床面積をそれぞれ9.5㎡以上確保しなくてはいけない
- 客室の内部に「見通しを妨げる設備」を設けないこと
- 客室の出入口に施錠の設備を設けないこと
半個室とは?メリット・デメリットと注意点【おすすめ業態】まとめ
この記事では、個室の種類の違いや導入のメリット・デメリットなどについて解説しました。半個室を導入することで、幅広い客層の来店を見込めたり感染症対策になったりするなど、売上や来客するお客様の増加などの効果があります。一方で、建物の広さが必要だったり回転率が下がったりするなどのデメリットもあります。ですから、メリット・デメリットを把握し、費用対効果を見込めるか見極めることが重要です。半個室の導入でお困りのことがありましたら、お気軽にお問い合わせください。