運送業で、事業拡大の理由から営業所の新設や移転を検討しているが「どんな手続きが必要なのかわからない」と感じる事業者は多いです。この記事では運送業における、営業所の新設や移転に必要な認可申請について解説します。活動拠点に関する一大イベントを難なく乗り越えるためにも、ぜひ読み進めてください。
運送業の営業所新設や移転に必要な認可申請
運送業許可を取得している事業者が、営業所を新設または移転する際は、運輸局に『事業計画変更認可申請書』を提出し認可を取得する必要があります。準備をせずに進めると新拠点設置後に、認可の必要性が判明して『営業活動できない』といった悲惨な事態を招きかねません。そういった事態を避けるためにも、認可が必要なケースと手続きの大まかな流れを確認しておきましょう。
新設の場合
すでにある営業所とは、別で拠点を設置(新設)する場合、運輸支局へ次の認可申請が必要です。
新設場所 | 必要な認可申請 |
同一都道府県内 | ・営業所増設認可申請 ・駐車場増設認可申請 (既存の駐車場から10㎞以上離れている場合) |
他都道府県 | ・営業所増設認可申請 ・駐車場増設認可申請 |
移転の場合
すでにある営業所から、別の場所に拠点を設置して移転する場合、新たな営業所の新設認可申請に加えて既存の営業所の廃止認可申請をしなくてはいけません。その際、駐車場も一緒に移転するのであれば駐車場の新設・廃止認可申請も必要です。
移転設備 | 必要な認可申請 |
営業所のみ | 営業所廃止・新設認可申請 |
営業所及び駐車場 | 営業所廃止・新設認可申請 駐車場廃止・新設認可申請 |
運送業の営業所新設(移転)認可申請の流れ
認可申請手続きの大まかな流れは以下の通りです。
- 事業計画変更認可申請書の作成
- 所轄運輸支局へ申請書提出
- 書面審査
- 認可取得
運送業の営業所設置認可が下りたら、運輸支局にて事業用自動車(緑ナンバー・黒ナンバー)を登録するのに必要な「事業用自動車等連絡書」を発行した後、車両登録を済ませることで、新しい拠点での営業活動の開始が可能になります。
運送業の営業所新設(移転)の要件
事業拡大などによる営業所増設であっても移転であっても拠点の新設には要件を満たしていることが求められます。中部運輸局による資料で定められている営業所の要件を以下の4つに分けてみていきましょう。
- 適切な使用権原
- 関係法令の遵守
- 適切な規模
- 最低限の備品や設備
①適切な使用権原
営業所を設置するには、その土地または建物を使用する、適切な権利を有していることを証明しなくていけません。自己所有している物件なら、登記事項証明書、賃貸の場合は賃貸借契約書で証明可能です。賃貸借は契約期間が2年以上であることや、自動更新であることの記載が必要です。
②関係法令の遵守
営業所設置の際は、関係法令に抵触しないことが条件と決められています。関係法令は多岐にわたりますが、基本的には次にあげる3つが重要です。
- 農地法
- 都市計画法
- 建築基準法
法令関連は複雑で難しそうですが、とても大切な部分です。ポイントを押さえてみていきましょう。
農地法
農地法では、農地は耕作以外の用途で使用できないと定められています。建物などの建築も認められていないため農地を拠点の設置場所に選ぶことはできません。
(農地の転用の制限)
第四条 農地を農地以外のものにする者は、都道府県知事(農地又は採草放牧地の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に関する施策の実施状況を考慮して農林水産大臣が指定する市町村(以下「指定市町村」という。)の区域内にあつては、指定市町村の長。以下「都道府県知事等」という。)の許可を受けなければならない。
(引用元:農地法|e-GOV法令検索)
農地は転用許可を得ることで別の用途に使用できるようになりますが、許可が下りるまで期間として半年から1年もの時間がかかるうえ、最終的に許可が下りないこともあるため、拠点設置場所の候補から外すことをおすすめします。
都市計画法
都市計画法では主に次のように土地が区分けされており、営業所を含めた建物を建設できない地域があります。
区分 | 内容 |
市街化調整区域 | 原則として建物の建設は不可能 |
市街化区域 | 13の用途地域に区分けされており、一部を除いて基本的に建物の建設が可能 |
無指定地域 | 特に制限はなく基本的に建物の建設が可能 |
基本的には、市街化区域と無指定地域の中から営業所の設置が認められている場所を選びましょう。
建築基準法
以下の地域は基本的に営業所の設置は不可能です。
- 第1種低層住居専用地域
- 第2種低層住居専用地域
- 第1種中高層住居専用地域
- 第2種中高層住居専用地域(1500㎡以下で2階以下のものを除く)
- 田園住居地域
建築基準法では建物の設備や構造、用途などについて基準を定めています。営業所設置の際に特に気を付ける点は『用途』です。前項の市街化区域の一部用途地域では、事務所用途での建築が制限されているため注意が必要です。
③適切な規模
営業所を設置する際、広さについて明確な基準はありません。ただし休憩室の確保は必須となっており、輸送の安全確保のため睡眠が必要な場合は、仮眠室も設置しなくてはいけません。営業所と休憩室のスペースがあまりにも小さいと申請が認められないこともあるため、ある程度のスペースは確保すべきです。なお、仮眠室であれば一人当たり最低でも2.5㎡の空間が必要と考えられています。
④最低限の備品や設備
備品や設備についても明確な基準はありませんが、事務所として機能するために必要な事務用品はそろえておきましょう。代表的なオフィス用品はデスクとイス、管理用のPC、電話やFAX、書類棚などが挙げられます。
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運送業の営業所新設(移転)認可申請に必要な書類
運送業の営業所認可申請で運輸局へ提出する主な書類は以下の通りです。
- 事業計画変更認可申請書
- 事業用自動車の運行管理体制を記載した書類
- 不動産登記簿謄本又は賃貸借契約書の写し
- 都市計画法等関係法令に抵触しない旨の宣誓書
- 営業所・車庫・休憩睡眠施設の案内図、見取図、平面図
- 法令遵守の宣誓書(増設の場合)
なお、地域によって提出書類が異なることもあるため、事前に所轄の運輸局に確認しておきましょう。
認可申請にあわせて必要な手続き
新設後の拠点で運輸開始するためには認可申請の他に次の手続きが必要です。
- 運行管理者・整備管理者選任届
- 事業用自動車の連絡所発行と変更登録
運行管理者・整備管理者選任届
営業所には運行管理者と整備管理者としての人員をそれぞれ配置する必要があります。店舗増設の場合に限らず、移転で人員に変更がない場合でも、必ず届出を提出してください。
事業用自動車の連絡所発行と変更登録
運送業の認可取得後に必要となる手続きです。営業所の位置が変更になる場合は、運輸局で連絡書に経由印をもらい変更登録を済ませましょう。
営業所新設時の負担を減らすために
活動拠点の増設や移転などで、引越し作業や内装工事を依頼する際は、入念な計画作りと各業者との連携が重要になります。しかし、運送業の営業所新設に必要な認可申請には、時間と手間がかかり経営者や担当者の方の負担は決して少なくありません。そんな中で、移転や内装工事といった各業者の選定や手配は「連絡するべきところが多くて手が回らない」「業者ごとに段取りを組むのが大変」と担当者にとっては大きなストレスになる可能性もあります。
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引越し作業や現事務所の原状回復工事から新事務所のデザイン・内装工事まで一括で請け負うことでトータルでのコストを抑えつつ複数の業者に依頼する手間も省けます。また移転では、廃棄が必要な不用品が生じた際に、当社にて買取り、お引き取りすることで廃棄処理のコストカットも可能です。
【運送業の営業所】新設・移転に必要な認可申請手続きとは?【まとめ】
運送業の営業所新設や移転に必要な認可申請について解説しました。認可申請には要件と書類をそろえる必要があり、認可を取得するまでに決して少なくない時間と労力を要します。特に要件については関係法令の遵守など複雑な部分もあり、認可取得は楽ではありません。しかし、実際の営業所新設、移転時には内装工事や引越し準備など他の作業を進めながら認可申請手続きも行う必要があります。拠点の新設をスムーズに進めるためには入念な計画を練って余裕をもって準備を進めていくことが大切です。